IKEBE ACOUSTIC GUITAR MANUAL(2020年12月版)

目次

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監修:アコースティックステーションリボレ秋葉原、ハートマンギターズ(渋谷)
写真(製品写真を除く)・構成:Ikebe CREATIVE

1. 各部の名称

スケール(=弦長)・・・③ナットから、⑯ブリッジサドルまでの距離。スケールが長いほど音にハリが出て、押弦する時に力が必要になります。また、基本的にはスケールが長い方がフレットの1 マス1 マスが広くなります。

弦高・・・金属のフレットの先端から弦の下端までの距離。通常6弦の12フレットと1弦の同フレットで測ります。現在はほぼ全てのメーカーが、6弦12フレットで2.5mm、1弦同フレットで2.0mmを基準にセッティングして出荷しています。

2. アコースティックギターの種類

「アコースティックギター」とは、基本的にはピックアップとアンプを使わなくても演奏できる、本体に空洞を持つギターを指しますが、最近は多種多様な楽器が発売されており、分類が多岐に渡ります。下記に一般的なアコースティックギターの種類をご説明します。

アコースティックギター/フォークギター・・・一般的な、いわゆる「アコギ」と呼ばれるもの。ブロンズ製の弦が張ってあり、本体に空洞があります。トップ板にはサウンドホールと呼ばれる穴が開いています。

エレクトリックアコースティックギター・・・上記のアコースティックギターに「ピックアップ」と呼ばれる集音装置が内蔵されたもの。シールドケーブルを使ってアンプやPAに接続し、音を大きくする事ができます。

クラシックギター/ガットギター・・・ナイロンやカーボン製の弦が張ってあり、基本的に本体に空洞があります。演奏時にピックはあまり使われず、クラシック音楽やフラメンコを演奏します。ピックアップが内蔵されると「エレガット」と呼ばれます。

パーラーギター/ミニアコースティックギター・・・通常のものより小振りなアコースティックギター。持ち運びに便利で、体や手の小さい方にも弾き易い仕様です。

フルアコースティックギター/セミアコースティックギター・・・ジャズやブルースが演奏されることが多く、アコギとは異なり、ピックアップ付きのものはスチール(鉄)弦が張られます。エレキギターの一種で、本マニュアルでは説明対象外となります。



アコースティックギターには様々な形があり、形によって音色が変わります。また、木材によっても音色が変わるので、それらの特性を知ることが、ご自分の好きなサウンドを探すヒントになります。

① ドレッドノート・・・大型のボディシェイプ。ウェスタンサイズと言われることもあります。名前の由来は超大型の戦艦から。厚みも幅も大きく低音が非常に響き、倍音が豊かです。(例:Yamaha FG シリーズ・Epiphone Hummingbird PRO・Martin D-28など)

② オーディトリアム・・・ボディが薄くて上記のドレッドノートよりもくびれが大きく、比較的抱え易いシェイプ。フォークサイズと言われることもあります。エリック・クラプトンが使用している「000(トリプルオー)」と呼ばれるシェイプや、そのロングスケールバージョンの「OM」、Taylorのグランドオーディトリアムなどが該当します。(例:YAMAHA FSシリーズ、Headway HFシリーズ、Martin 000-28、Taylor 314ceなど)

③ ラウンドショルダー・・・ドレッドノートより撫で肩で、中音域に特徴のあるサウンド。コードストロークの際のパーカッシブな音色が魅力です。(例:Epiphone EJ-45、Gibson J-45、Headway HJ-Buddyなど)

④ スーパージャンボ・・・ボディの横幅が17インチ≒43.2cmという非常に大型のモデル。その大きさの為に演奏が大変ですが、Oasisのノエル・ギャラガーやエルビス・プレスリー、THE WHO のピート・タウンゼントが使用していることで人気のモデルです。(例:Epiphone EJ-200、Gibson J-200など)

⑤ パーラー(ニューヨーカー)/ミニギター・・・持ち運びに便利な小型サイズの「パーラー(ニューヨーカー)」とそれよりさらに小さいミニギターも存在します。スケール(弦長)も短く使いやすいものが多いです。(例:Yamaha JR2、Baby Taylorシリーズ、Little Martinシリーズなど)

⑥ 上記以外・・・エレキとアコギの特性を同時に備えたようなモデルや、ウクレレギター、ギタレレと呼ばれる非常に小振りなギターとウクレレの中間の楽器もあります。

3. アコースティックギターに使用される主な木材・素材

ローズウッド・・・マメ科の植物で油分が多く、硬い木です。倍音が多く、低音から高音まで締まったサウンドになります。主にサイドバックや指板・ブリッジ材に使われます。(画像:Martin D-28 Standard)

マホガニー・・・センダン科マホガニー属の、柔らかい木材。クリアで柔らかく、暖かみのあるサウンドが特徴です。主にサイドバック材に使われますが、トップ材に使われることもあります。(画像:Martin D-18 Standard)

スプルース(トップ)・・・マツ科の柔らかく軽い木材で、弦の振動を伝えやすいので、アコースティックギターのトップ材はスプルースであることが多いです。(画像:Gibson 60s J-50 Original)

シダー(トップ)・・・日本では杉と呼ばれる事が多いですが、マツ科の木材で主にトップ材に使われます。スプルースよりもやや柔らかく暖かみがあるサウンドが特徴です。(画像:Furch Yellow Gc-CR)

エボニー(指板)・・・カキノキ科の硬い木材で、日本では黒檀と呼ばれます。主に高級なギターの指板やブリッジ材に使われます。(画像:Taylor 914ce V-Class)

ハワイアンコア(ボディ)・・・ハワイに生えているアカシア属の木で、美しい木目が出るものもあります。ウクレレの素材として有名ですが、ギターにも使われ、そのカラッとしたサウンドと豪華な見た目でファンの多い木材です。(画像:Martin D45 K2)

カーボン/グラファイト(ボディ、ネック)・・・湿度や温度の影響を受けにくいことから、四季の気候の変化が激しい日本の環境に適した人口素材で、個体差が極めて出づらく、近年注目されている素材です。(画像:ENYA EA-X4/EQ)

4. アコースティックギター(フォークギター)の主な弦の種類

フォスファーブロンズ・・・ややピンクがかった色の金属の弦。「フォスファー」とは、マッチなどに配合される「リン」を表し、フォスファーブロンズ弦とはリンを配合した合金で製造されている弦のことを言います。煌びやかなサウンドで、下記の80/20ブロンズ弦より、やや長持ちすると言われています。現在ほとんどのブランドのフォークギターの出荷時の弦がこちらのフォスファーブロンズ弦です。

80/20ブロンズ・・・黄色身の強い色の金属弦。銅(Bronze)とスズの合金の素材で、フォスファーブロンズに比べて、やや丸みと暖かみのある音色です。

コンパウンド弦・・・4、5、6 弦の巻弦の芯線を金属からシルクにすることで、押さえ易くした弦。

コーティング弦・・・様々なブランドから販売されている防錆加工をしてある弦。代表的なブランドは「Elixir」で、一般的な弦の3 倍程度は長持ちすると言われています。


① 弦のゲージ(太さ)・・・現在ほとんどのギターが出荷時に1 弦.012インチから始まる「ライトゲージ」の弦を採用しています。(Martin社のDタイプのギターなど、一部例外あり)それ以外にも.013インチから始まる「Medium」ゲージ、.011インチから始まる「Custom Light」、.010インチから始まる「Extra Light」ゲージなどがあります。細いほど押さえやすいですが、ビビりやすくなったり、音が細くなったりします。

② 素材・・・フォスファーブロンズ、80/20ブロンズ、それ以外などの素材が確認できます。

③ 型番・・・商品の名前です。

④ コーティングの有無・・・長持ちのためのコーティング処理がされている場合、「TREATED」「LONG LIFE」「EXTENDED LIFE」などの記載がされます。

5. クラシックギターの主な弦の種類

ナイロン弦・・・一般的なクラシックギターの弦で、マイルドなサウンドが特徴。ブランドによって音が大きく異なります。4~6弦はナイロンの芯線に銅線を巻いています。

フロロカーボン弦・・・釣り糸と同じ素材で、ナイロン弦よりも張りが強くチューニングが安定しやすい弦。

ガット弦・・・ヒツジなどの腸を縒って造った天然素材の弦。非常に繊細でナチュラルなサウンドですが、チューニングが安定せず切れやすいので現在ではナイロンやフロロカーボンが主流になっています。


① 種類・・・クラシックギター弦であることを表します。

② テンション(張りの強さ)・・・テンション(張りの強さ)を表します。「Hard」や「Light」などがありますが、一般的に新品時には「Normal」もしくは「Medium」テンションの弦が張られることが多いです。

③ 型番・・・商品の名前です。

④ 素材・・・素材が記載されています。

6. チューニング

チューニングとは、(通常のギターの場合は)6本の弦をそれぞれ決まった音程に調整することを言います。まずこれが正確にできていないと、音程の外れた気持ち悪い音になってしまい楽器の演奏として成り立ちません。また、一度チューニングをしたと言っても、演奏中や保管中にも微妙にチューニングが狂っていきますので、楽器を弾く前には必ずチューニングし正しい音程で演奏する習慣を身につけましょう。

レギュラーチューニング・・・最も一般的な「レギュラーチューニング」について説明します。それぞれの弦をどの音に合せるのか上記の図をご覧ください。それぞれの音程は弦をどこも押さえないで弾いた「開放弦」の音の高さです。
1弦・・・A/ミ 2弦・・・B/シ 3弦・・・G/ソ 4弦・・・D/レ 5弦・・・A/ラ 6弦・・・E/ミ

オープンG・・・ブルースやハワイアンに使われるチューニングで、全ての開放弦を同時に弾くとGメジャーのコードになることからこの名前がつけられています。
1弦・・・D/レ 2弦・・・B/シ 3弦・・・G/ソ 4弦・・・D/レ 5弦・・・G/ソ 6弦・・・D/レ

DADGAD(ダドガド チューニング)・・・Led Zeppelinの楽曲やフィンガースタイルのソロギターに多いチューニング。アイリッシュ系音楽に使用されることも多く、独特の雰囲気になります。
1弦・・・D/レ 2弦・・・A/ラ 3弦・・・G/ソ 4弦・・・D/レ 5弦・・・A/ラ 6弦・・・D/レ

上記以外にも、弦を押さえない開放でDメジャーコードになる「オープンD」や、6 弦だけ音程を全音下げる「ドロップD」など、世界には本当に様々なチューニングが存在しますので是非いろいろ試してみてください!

(レギュラーチューニングより音程を上げる場合は、弦が切れやすくなったり、ネックに負荷がかかる可能性がありますので、演奏が終わったら必ず弦を緩めましょう)

7. チューニングの方法

チューナーを使うチューニング・・・初心者やスタジオ練習中、ライブ中などにはチューナーを使う方法が早く正確にチューニングを合わせることができるのでオススメです。クリップチューナー・タイプですと他の場所で音が鳴っていてもチューニングできるので便利です。

① ヘッドの先端の中央など、表示が見やすい位置にクリップチューナーを挟み、スイッチを入れます。

② 各弦の開放をそれぞれ弾いて、太い6弦がEの音(ミ)を示すようにペグを回します。音が低い場合には反時計回りにペグを回して弦を張り、音が高い場合には時計回りにペグを回して弦をゆるめます。

③ 弾く⇒音を見る⇒ペグを回す⇒弾く⇒音を見る、のサイクルをチューニングが合うまで繰り返します。レギュラーチューニングの場合、音程は6弦(太い方)から順にE/ミ、A/ラ、D/レ、G/ソ、B/シ、A/ミに合わせます。

④ 一通りチューニングが終わったら、もう一度6弦から1弦までチューナーでチェックしてみましょう。順番に弦が張られていくことでネックに力がかかり、少し音程が狂っていることがあります。全部の弦が安定するまで何回か繰り返しましょう。

音叉を使うチューニング・・・「音叉(おんさ)」は二股に分かれた金属の棒で、柄を持って硬いところに当てると「ポーン」という綺麗な音がします。ギターやベースのチューニングでは440Hz(ラ)の音の音叉を使用します。また、ピアノやキーボードなどに「ラ」の音を出してもらうのもいいでしょう。

まず、5弦の開放弦の音をA/ラに合わせてから、隣の弦を順番に合わせてください。

ハーモニクスとは、指の腹を弦に軽く触れ、弦を弾いた直後に指を離して出す「ポーン」という高い音です。音の微妙なズレも分かりやすく、実音のチューニングよりも正確に合わせることができます。

まず、5弦の開放弦の音をA/ラに合わせてから、隣の弦を順番に合わせてください。

8. 弦の張り替え

弦が錆びたり古くなると音に輝きがなくなり、チューニングも合わなくなっていきます。そうなったら弦を交換しましょう。またアコースティックギターは1弦と3弦が非常に切れやすく、切れてしまった場合も弦交換は必要になります。弦楽器を弾くにあたり弦交換は欠かせないことなので手順をしっかりと覚えましょう。

最初に用意するもの・・・ ●交換用の弦ギター専用のニッパーストリングス・ワインダー

① 古くなった弦をゆるめてからニッパーで切り、ペグとブリッジから弦を外します。

ブリッジピンの外し方は主に、専用のピン抜きで抜く、ストリングス・ワインダーに付属のピン抜きで抜く、サウンドホールの中から押し上げて抜くの3パターンです。

専用のピン抜きで抜く・・・サウンドホール側から、てこの原理を使って抜きます。

ストリングスワインダーに付属のピン抜きで抜く・・・引っ掻けて上に引き抜きます。

サウンドホールの中から押し上げて抜く・・・貫通しているブリッジピンの先端にクロスなどを当てて手で押し上げます。

② 新しい弦の太さが間違っていないか確認し、ブリッジピン穴にボールエンドを入れブリッジピンを挿します。この時、ブリッジピンの先端の下にボールエンドが来ないようにします。巻かれている部分を少し折り曲げるのがコツです。

③ 新しい弦をペグ穴に通し、ペグ0.5~1個分あたりで折り曲げておきます(ギターのブランドや機種により異なります)。この時、弦がねじれないようしましょう。弦がねじれているとビビリやチューニングが安定しないなどの原因となります。

ペグポストの弦の処理は、シンプルに下に巻いていく方法、一周だけ上に巻く方法、巻きつけて絡ませる方法(マーティン巻き)など複数ありますが好みの巻き方で問題ありません。

④ 折り曲げたところまで弦を戻して、弦同士が重ならないように押さえながら下へ巻いていきます。

⑤ 巻き終わったら、弦の余った部分をニッパーで切り落とします。③~⑤を全弦で繰り返します。

⑥ 全弦分の張り替えが終わったらチューニングをしましょう。この時、ボールエンドがブリッジピンの下にあると、ピンが飛んでしまいますのでご注意ください。弦を何度か引っ張りながら、安定するまでチューニングします。

9. クラシックギター/ガットギターの弦の張り替え

クラシックギターの弦交換の方法は、教室や先生によって様々です。やりやすく綺麗でチューニングが安定すればどの方法でも問題ありませんが、このマニュアルではアコースティックステーションリボレ秋葉原/ハートマンギターズでの弦の交換方法をご案内します。

① トップ材に傷が付かないように、クロスなどをブリッジ下に敷いてズレないようにした後、古くなった弦をゆるめてからニッパーで切り、ヘッドとブリッジから古い弦を外します。

② 新しい弦の太さが間違っていないか確認し、ブリッジ穴に弦を通して結びます。弦の結び方は何パターンかありますが、外れなければ好きな巻き方で問題ありません。1弦と2弦は滑りやすいので巻き数を多くしましょう。


③ 新しい弦をペグ穴に通し、一旦弦の下をくぐらせます。この時、6弦と1弦だけは外側から、他の弦は内側からくぐらせましょう。この時、弦がねじれないようしましょう。弦がねじれているとビビリやチューニングが安定しないなどの原因となります。

④ 2~3周巻きつけてから音程を上げていきます。最終的なチューニングは最後にまとめて行います。

⑤ ある程度巻き終わったら弦の余った部分(ヘッド側)をニッパーで切り落とします。③~⑤を全弦で繰り返します。

⑥ 全弦分張り替えが終わったら、チューニングをしましょう。この時、弦がしっかり巻かれていないと、勢いよく弦が外れてプレイヤー自身やトップ板を傷つける「弦飛び」というが起こる恐れがあるので、十分にお気を付け下さい。

⑦ 弦を何度か引っ張りながら安定するまでチューニングし、ブリッジ側の弦の余った部分を切ります。クラシックギター=ガットギターはチューニングが安定するまで数日かかりますので、こまめにチューニングしましょう。

10. 楽器のお手入れ

クロスを用意する・・・楽器の塗装はデリケートです。堅い布で拭いてしまい楽器に傷が付かないように、ギター拭き専用のクロスをまずは一枚ご用意ください。特に弦は磨かないでいると、汗などですぐに錆びて交換しなければならなくなります。ギターを弾いたら、片づける前に必ずクロスでギターを拭く習慣をつけましょう。なお、サラサラな仕上げのサテン塗装の楽器は拭き過ぎると光沢が出てしまうので、余程汚れていない限りは拭かなくても問題ありません。

汗などの汚れを拭き取る・・・クロスで汚れを拭き取ってから、ギターポリッシュをクロスに染み込ませてギター全体を拭きます。ギターの肩やブリッジ付近にたまる埃、演奏中に良く触れる場所に付着した汗や油脂を綺麗に取り除きます。なお、デリケートなラッカー塗装やセラック塗装、バーニッシュ塗装などは、クロスやポリッシュの種類によっては変質する場合もありますので、取り扱い説明書を参照に、目立たない場所で試してから使用しましょう。

フィンガーボードは汚れが溜りやすい・・・汗が染み込んだり、手垢がついて汚れている場所をしっかりお手入れを行ってください。アコースティックギターの指板は塗装されていないものがほとんどなので、放っておくと乾季にひび割れが起きたり、カビや緑青が発生する場合があります。汚れがひどい場合は、オレンジオイルなどの指板専用のオイルを適量ティッシュなどに取って指板に塗ります。しばらくすると汚れが浮き上がってきますので、最終的に乾拭きで余計な油分を完全に拭き取ってください。なお、フィンガーイーズなどの指板潤滑材やオイルの付け過ぎも指板が痛みますのでほどほどにしましょう。

「人間がいて心地良い環境は、楽器も心地よい」とお考えください。あなたがたそこに一時も居たくないような、高音の車内や直射日光の当たる場所、ジメジメした湿度の高い場所、エアコンの風が直接当たる場所の乾燥や急激な温度変化などは禁物です。

また、床などの踏んでしまったり蹴ってしまう可能性があるところには置かず、長時間の保管でなければギターハンガーやギタースタンドに楽器を出しておくことが練習にも手を取りやすく上達には一石二鳥です。スタンドのギターに接する面は滑り止めにゴムなどが付けられていることが多いのですが、ラッカー塗装などでデリケートな塗装は変質する場合があります。お使いのギターがラッカーやバーニッシュなどの塗装の場合は「スタンドブラ」や柔らかい布などで楽器に接するゴム部分をカバーして下さい。なお、そのようにした場合、楽器が滑りやすくなることもありますのでご注意ください。

弾き終わった後は1音半から2音程度、弦をゆるめていただくことをお勧めいたします。梅雨や夏は木部が水分を吸って膨らみ、冬は乾燥して木部が縮みます。冬はやや弦を緩める度合いを少なくしてもいい場合があります。

いつでも持っておきたいアイテム・・・
ギター専用のニッパー(ギター専用のものでないと刃こぼれする場合があります)
ストリングス・ワインダー
湿度調整剤
予備の弦

11. 調整と保管

アコースティックギターは、エレキギターに比べると調整できる箇所は少ないですが、調整することでぐっと弾きやすくできることがあります。

ご注意!・・・楽器の調整には経験と知識が必要ですので、十分に下調べをし、楽器の扱いに慣れてから行いましょう。分からないことは、実際に手を加える前に必ず購入したお店に問い合わせてみましょう。お店の連絡先は、楽器のお買い上げ時に封入される控えなどをご覧ください。

トラスロッド調整・・・ネックは基本的に木材で出来ており、そこへ金属弦の強い張力が掛かっているので、気候の変化などの諸条件で反ってしまうことがあります。ネックが反ってしまうと弦高が高過ぎて弾きにくくなったり、逆に弦高が低すぎて弦がびびったり、音の出ないポジションが出たりします。そういった場合に備えて、現在はほとんどのアコースティックギターには調整可能なトラスロッドが搭載されています(クラシックギターは基本的にトラスロッドの機構はありませんが、最近では搭載された製品も増えています)

この項目では、ネック調整の方法をご案内します。
※ネックの調整の際に、無理のあるやり方によっては木部やトラスロッドそのものを破損してしまう可能性があります。少しでも不安がある場合は、ご購入いただいた店舗までご相談ください。

① チューニングを合わせてネックの状態を見ます。まず6弦の1フレットとボディと接続されている部分のフレット(14もしくは12フレットであることがほとんどです)を押さえて、7フレット辺りのフレットと弦の間隔をチェックします。べったりとくっついていたら「逆反り」で、隙間が空き過ぎていたら「順反り」です。ネックが真っ直ぐな状態ですと、0.1mmくらいの隙間があるかないかくらいで、7フレット辺りを叩くとペシペシと音がします。なお、ギブソンやマーティンなどの古くからあるブランドは慣習的に僅かに順反りにセッティングすることが多くなっています。

② 1フレットを押さえたまま最終フレットを押さえ、12フレット近辺の隙間を確認します。この隙間が、先ほどの1フレットとジョイント部のフレットを押さえた時の7フレット近辺の隙間より明確に広ければ「ハイ跳ね」もしくは「トップ腫れ」などの可能性があります。この場合はトラスロッドの調整だけでは対応できないことが多いので、ご購入いただいた店舗までご相談ください。

③ ①~③の作業を1弦でも行い、1弦の状態と6弦の状態に差があまり無いことを確認します。それらの隙間があまりに大きい場合、ネックがねじれている場合がありますので、こちらの場合もご購入いただいた店舗までご相談ください。

④ ネックの状態が確認できたらトラスロッドを回します。調整の際はしっかりとレンチを差し込み、トラスロッドのナットを潰さないように気を付けてください。順反りの場合はトラスロッドを時計回り=ネジを締める方向に回します。逆反りの場合は反対に回します。どのくらい回すかは、そのギター個体のトラスロッドの効き方やネックの状態によって変わってきますので、経験を必要としますが、1/4回転=90度ずつ様子を見ながら回し、①~③の作業を繰り返し、何回回したかチェックしながら望みの状態になるまで調整しましょう。

※トラスロッドで調整可能な「正常な」反り以外にプレイアヴィリティに関わるトラブルには、上記の「ハイ跳ね」「トップ腫れ」「ねじれ」以外にも「ナット溝が削れ過ぎている」「トップ落ち」「波打ち」などがあります。こちらの場合もご購入いただいた店舗までご相談ください。

サドル調整・・・ほとんどのアコースティックギターのブリッジサドルは外れるようにできています。弦高が高すぎるのにトラスロッドの調整では弦高が下がりきらない場合、このサドルの底面を削ることによって、弦高を調整することができます。また、オクターブ・チューニングが狂っている時、このパーツを加工することで、ある程度の対処ができる場合があります。しかし、こちらは一度加工すると戻すことができないのと、エレアコの場合はサウンドバランスを崩したり素子を傷つけたりする可能性があるため、慎重な作業が必要になります。初めてサドルの調整をされる場合はご購入いただいた店舗までご相談ください。

ナット調整・・・ローフレットのテンションが高くて演奏しづらい場合やローフレットのチューニングがシャープしてしまう時は、ナットの溝を調整することで改善できることがあります。こちらも一度行うと元に戻せない作業ですので、ご購入いただいた店舗までご相談ください。なお、3フレットを押さえて1フレットを見た時、0.1mm程度の隙間が開いている状態が正常です。その隙間が広過ぎる場合は削って対処できますが、全く隙間が無い時は消耗品であるナットを交換する必要があります。また、ナットの溝に対して細過ぎる弦を張るとビビリの原因となります。その際は弦を太くするか、ナットの作成を店舗までご依頼ください。

12. エレアコをアンプにつないでみよう

エレアコ(エレクトリック・アコースティック)・・・あらかじめピックアップが内蔵(インストール)されているアコギを「エレアコ(エレクトリック・アコースティック)」と言います。

エレアコは別途マイクをセッティングしなくても、アンプやDI、オーディオインターフェイスに繋ぐことによって、音を大きくしたり録音したりすることができます。

エレアコのピックアップ・システムには大きく分けて、電池を使用するプリアンプが内蔵されている「アクティブタイプ」と、プリアンプが内蔵されておらず電池を使用しない「パッシブタイプ」の2タイプがあります。一般的にアクティブタイプのピックアップは、ボディのサイドやサウンドホール内にボリュームなどのコントローラーがあります。また、メーカーによってはRoland社製のギターシンセサイザーに接続できるものもあります。

またそれらのタイプの他に、音の拾い方が異なるいくつかの種類のピックアップがあり、用途や演奏スタイルによって使い分けていただく必要があります。ピックアップの集音の方法は複数あり、それによって取り付け方やお取り扱いの注意点が異なります。

アンダーサドル・ピエゾ・・・市販のエレアコは、ほとんど「アンダーサドル・ピエゾ」を搭載していります。「ピエゾ」とは簡単にいうと「振動を電気信号に変えるもの」で、ブリッジサドルの底面に「素子」と呼ばれるパーツが敷かれ、この素子が弦振動を電気信号に変えることでアンプなどから音を出すことができます。抜け感がありハウリングにも比較的強く、バンドアンサンプルの中では活躍しますが、弾き語りやソロギターの際には所謂「エレアコ的な音」、という不自然に聞こえるサウンドに成りがちです。また、圧力を電気に換える為、変則チューニングとレギュラーチューニングを行き来するスタイルですと、圧力が弱まりバランスが狂ってしまう場合があります。

貼り付け型ピエゾ・・・ボディのトップ材の表面や裏面に貼って振動を拾うタイプのピエゾ・ピックアップもあります。こちらは貼り付け位置によってトップを叩いてパーカッシブな音を出す際によく使われます。

マグネットタイプ・・・サウンドホールに橋渡し式に嵌めるタイプのもので、エレキギターと同じ仕組みで電気信号を発生させます。取り付けが簡単な商品が多いこともあり、もともとピックアップの付いてないギターを後からエレクトリック化する際によく選ばれます。先述の「貼り付け型ピエゾ」と併用されたり、後述のコンデンサーマイクと一体になったアイテムやワイヤレスのものもあり、様々な種類が販売されています。

コンデンサーマイク/バウンダリーマイク・・・マイク系のピックアップは、生のギターサウンドに近い音色になりますが、ハウリングに弱く、サウンドメイクを工夫しないと、特にバンドなどでは非常に使いづらいです。コンデンサーマイクにはギター内部に設置するもの、ギターのボディを挟み込むもの、粘着性のガムなどでボディトップにマイクを直接貼り付けるものなどがあります。

上記以外にも、最近ではYamaha社の「トランスアコースティック」など、ボディ内に極少のスピーカーを持ち、アンプに繋がずともリバーブやコーラスのエフェクトを掛けられるギターも増えてきました。ピックアップは用途やご予算に応じてお勧めが変わりますので、エレアコ化をご希望の際は、是非専門店にご相談ください。

プリアンプ/D.I.・・・バンドなどでエレアコを使用する場合、他の楽器と演奏する際は、音量や音質を揃える必要があります。その時に使用するのが「D.I.(ダイレクト・インジェクト・ボックス)」です。D.I.はPAミキサーに音を送る際にインピーダンス(電気抵抗)を変換したり、「アンバランス接続」と呼ばれるギター⇒アンプへのシールドケーブルによる接続を、ノイズに強い「バランス接続」に変換したりするために必要な機器です。また、ノイズは少ないままで音量を上げることができる「プリアンプ」という機器を使うと、より多彩に音色をコントロールすることができます。こちらは前述のD.I.と一体型の物も多く、音にこだわりのある方やどんなライブ会場でも一定のサウンドをキープして出したい方は、できれば持っていたいアイテムです。

代表的なプリアンプ/D.I.・・・
L.R.Baggs Para Acoustic D.I.
L.R.Baggs venue D.I.
FISHMAN Aura Spectrum DI
FISHMAN TONEDEQ
ZOOM AC-3 [Acoustic Creator]
BOSS AD-10 [Acoustic Preamp]

13. 故障かなと思ったら

バズ/異音がする場合。
●新しい弦が正しく張られていますか? ⇒ 8. 弦の張り替えをご参照ください。
●ネックは反っていませんか? ⇒ 11. 調整と保管をご参照ください。
●ナットは低くないですか? ⇒ 11. 調整と保管をご参照ください。
上記を確認しても異音がする場合は、エレアコの配線が鳴っていたり、ブレイシングなどの内部の木材が剥がれてしまっている可能性が考えられます。

チューニングがおかしい、安定しない場合。
●新しい弦が正しく張られていますか? ⇒ 8. 弦の張り替えをご参照ください。
●ネックやサドルの状態は適正ですか? ⇒ 11. 調整と保管をご参照ください。

エレアコの音が出ない場合。
●電池は新しいものが入っていますか?
●シールドは正しく接続されていますか?
●ギター・アンプのボリュームはゼロになっていませんか?
●チューナーがオンになっていませんか?

弦高が高すぎ/低すぎて弾きづらい場合。
●ネックやサドルの状態は適正ですか? ⇒ 11. 調整と保管をご参照ください。

割れている/パーツの間に隙間がある場合。
●割れているように見えても、塗装が木の継ぎ目に吸い込まれているだけの場合や、ウェザーチェックと呼ばれるラッカー塗装の経年変化の可能性があります。ただし、本当に木が割れていた場合、長期間放置すると木部の状態が変化して元に戻らなくなることがあります。ご購入いただいた店舗までご相談ください。

14. 安全上のご注意

保管場所の湿度・温度を出来るだけ人間の過ごしやすい環境に保つ。
⇨ 極端に乾燥した場所や湿気の多い場所、直射日光を避け、気温25℃、湿度50%を目安に空調管理することで、木部の反りや変形を最小限に抑えられます。

弾き終わった後は、弦をゆるめる。
⇨ アコースティックギターは、チューニングしている状態でおおよそ60~70kgの力がネックやブリッジに掛かっています。演奏後はできるだけ弦をゆるめて保管してください。

弦の交換後は不要な部分を短く切り揃え、取り扱いに注意する。
⇨ 弦の先端は鋭利なため、ケガの原因となる場合や衣類を傷つける場合があります。

楽器ケースを落としたり、乱暴な取り扱いはしない。
⇨ 楽器の入ったケースは重量があります。重さによる衝撃や金具などで思わぬケガをする場合があり、ギターの破損に繋がる恐れがありますので大切に扱いましょう。

サウンドホール内に異物が入らないようにする。
⇨ ブレイシングや配線を傷つける恐れがあります。

エレアコの電池は<+><->を間違えないようセットし、長期間使用しない時は外す。
⇨ 思わぬ事故や液漏れ、発熱の原因になる可能性があります。

むやみにサドルで弦高調整をしない。
⇨ サドルの底面が真っ直ぐで無くなると故障の原因に繋がったり、ピックアップサウンドのバランスが崩れる恐れがあります。可能な限りはプロのリペアマンにお任せください。

むやみにトラスロッドの調整をしない。
⇨ サウンドホールの淵を傷つけたり、トラスロッドが折れてしまう場合があります。可能な限りはプロのリペアマンにお任せください。

楽器に乗ったり圧力を加えるなど、乱暴な取り扱いはしない。
⇨ アコースティックギターの大部分は薄い木材でできているので、圧力で割れてしまう場合があり、ケガの原因にもなります。

シンナーやベンジンなどで楽器を拭かない。
⇨ メンテナンスの際は、専用クリーナーを使用するか専用クロスで拭いてください。お使いのギターの塗装の種類によって、ご利用いただけるクロスやクリーナー(ポリッシュ)が異なります。

火気や水の近く、高い場所などに保管しない。
⇨ 火災や故障の原因となったり地震の際に落下して怪我の原因になる場合があります。

15. アコースティック専門店のご紹介

アコースティックギターのことは、イケベ楽器のアコースティック専門店へお任せください。

アコースティックステーションリボレ秋葉原
ウッディで広々とした店内には、リーズナブルなお手頃アコギから、マーチン、ギブソン、テイラー、ヤマハ、ヘッドウェイを初めとする国内外一流ブランドの各種モデル、さらに、貴重な高級ハンドメイド手工ギターまで、国内最大級の品揃えです。

ハートマンギターズ(渋谷)
見上げるほど高い天井高の店内に、膨大な数のアコースティック楽器が展示された国内最大級の専門店です。ギブソンやマーティンをはじめとする数多くの王道アコースティックギターのほか、匠の技が作り出す芸術的なハンドクラフトが冴え渡るハイエンド楽器も専任スタッフの入念なケアのもと取り扱っております。