ロックハウスイケベ池袋ギター担当/江原(えはら)です。
今回紹介するのは「Gibson Les Paul Junior (Vintage Tobacco Burst) 【S/N 223660151】」です。
ピックアップ1基、ノブ2つ、ブリッジは1パーツ。
足し算ではなく引き算で完成しているギターです。余計なものが無いぶん、ギターの素の声がそのまま出てくるタイプですね。
レスポール・ジュニアの登場は1954年。
もともとはLes Paulファミリーの中でもエントリー向け、いわゆるスチューデントモデルとして作られたと言われています。
カラーはVintage Tobacco Burst。
中心の明るいブラウンから外周の濃い色へ沈んでいくバーストで、マホガニーの木目がうっすら透けて見えます。
黒いトップハットノブとの相性も渋いです。
年代ごとの移り変わりで言うと、1958年頃にはボディがダブルカッタウェイ形状へ変更されたとされています。
今回の個体はシングルカッタウェイなので、それ以前の初期スタイルの雰囲気ですね。
現行モデルは2019年から続くOriginal Collectionの仕様で、直前の2015年モデルからは大きく性格が変わっています。
2015年モデルは、自動でチューニングしてくれるG-Forceペグや、幅広のネックに真鍮製のゼロフレットナットなど、現代的にアレンジされた仕様でした。
現行ではそれらが無くなり、ネックはVintage 50sプロファイル、ナットは幅43.05mmのGraph Tech製、ペグはホワイトボタンのVintage Deluxeと、デビュー当時のスタイルに立ち返る方向へ振り直されています。
ボディ・ネックはどちらもマホガニーで、ボディにメイプルトップは乗っていません。
メイプルトップが加える高域の硬さが無いぶん、中低域がふくよかに出やすい構成と言えます。
指板はローズウッド、ポジションマークはアクリルのドットです。
ローズウッドは高域の角が少し丸まる傾向があり、マホガニーの温かさをそのまま後押ししてくれる組み合わせです。
ネックはVintage 50sプロファイル、ナット幅は43.05mm。
50年代らしい厚みのあるグリップのプロファイルです。
ブリッジはWraparound(ラップアラウンド)。
弦をこのブリッジ1本に巻き付けるように張る構造で、テールピースとブリッジが一体になっています。
弦振動を受け止める部品が少なく、構造はとてもシンプルです。
ピックアップはブリッジ位置にP-90 Dog Earを1基。
「ドッグイヤー」はカバーの両脇に耳のようなマウント部分が付いた形状のことで、ボディに直接取り付けるタイプです。
P-90は、フェンダー式のシングルコイルより幅広で平たいコイルを持つシングルコイルで、太さとジャリっとした輪郭を併せ持つのが持ち味です。
コントロールは1ボリューム、1トーン。
しかもハンドワイヤードでの配線で、基板を介さずに配線されています。
トーン回路のコンデンサはOrange Drop。
トーン5くらいだとピッキングの早さを保ちつつも甘いサウンドになってくれます。
ナットはGraph Tech製。
弦の滑りを良くしてチューニングの戻りを安定させる狙いのパーツです。
ここで比較の軸をひとつ。
よく並べられるのがLes Paul Specialです。
Specialはフロントにもピックアップが付くので、正直、自分は以前「Specialでいいじゃん」と思っていました。
ところが実際に弾いてみると、なぜかJuniorにしかないパンチと太さがあるんです。
理由を言い切ることはできませんが、ピックアップ1基というこの構成が鳴らす音は、弾いた実感として確かに別物でした。
もともとはスチューデントモデルだったJuniorですが、後の時代にはハードロックやパンクのギタリストたちに愛用されるようになりました。
歪ませたP-90一発でロックを鳴らす、そのスタイルを象徴する存在ですね。
重量は実測で約3.22kgです。
ストラップで吊っても肩が楽なウェイトで、長時間のライブでもかなり助かるはず。
足すものが無いからこそ、弾き手の手元と歪みの量がそのまま音になる1本です。
Specialと迷っている方こそ、Juniorのパンチを池袋のアンプで鳴らして比べに来て下さい!