あまやかな90年代R&B、寄り添う珠玉のテキスト。
松尾潔の原点となる自選ライナー52本!
CDの全盛期である1980年代後半から1990年代にはたくさんの名盤が生まれ、海外の作品も盛んに国内盤が制作されました。
歌詞、対訳、それにライナーノーツが付き、ときにはボーナス・トラックも収録されるなど、レコード会社は輸入盤との差別化を真剣に模索していたものです。
そんなCD爛熟期に、R&Bの分野でひとりの若者が執筆活動を開始します。雑誌『ブラック・ミュージック・リヴュー』をベースにライター・デビューを果たした松尾潔氏です。
現在ではプロデューサー、ソングライターとして知られ、シングルおよび収録アルバムの累計セールス枚数は3000万枚を超すというヒットメイカーですが、氏のキャリアのスタートは文筆業だったのです。
本書では、松尾氏が90年代に執筆した膨大な数のライナーノーツから52本を自身が厳選。
「第1章 女たちよ!(女性シンガー編)」「第2章 男たちよ!(男性シンガー編)」「第3章 花よ嵐よ!(グループ編)」の3章仕立てでお届けいたします。
チャート順位などのデータをきっちり踏まえたうえで、ブラック・ミュージックの歴史や系譜から最新動向までに精通、さらにはアーティスト本人の現地インタビューも多数経験した松尾氏だからこそ書くことができた、貴重な解説の数々(そして実体験の数々)。
これは90年代のR&B受容の赤裸々な記録でもあり、美メロ・ガイドでもあると言えるでしょう。
そうそう、今では普通に使われる「美メロ」という言葉ですが、これは松尾氏の発案だってご存知でしたか?
【CONTENTS】
〇第1章 女たちよ!
フィリス・ハイマン
ラップにも挑戦、極めて完成度の高い1枚
Phyllis Hyman / Prime Of My Life
シー・シー・ペニストン
今が旬の勢いには抗いがたい魅力がある
Ce Ce Peniston / Finally
シャニース
待った甲斐があったモータウン・デビュー作
Shanice / Inner Child
アリソン・ウィリアムズ
前作から一転、〈歌志向〉を強く打ち出す
Alyson Williams / Alyson Williams
メアリー・J・ブライジ
聴き手の渇きを潤していく、しっとりとした艶に満ちた声
Mary J. Blige / What's The 411?
ミキ・ハワード
ゴスペルに根ざしながら独自の世界を確立
Miki Howard / Femme Fatale
ジャネット・ジャクソン
マイケルも嫉妬したであろう、整然とした音の配置
Janet Jackson / janet.
アンジェラ・ウィンブッシュ
ヒップホップ好きの人にこそ聴いてほしい
Angela Winbush / Angela Winbush
レイラ・ハサウェイ
声質のみで聴き手を魅了できる数少ない歌手のひとり
Lalah Hathaway / A Moment
ティナ・ムーア
傑作であります。ひとことで言うと。
Tina Moore / Tina Moore
ロリ・ゴールド
ブロンクス・ビューティーの瞳には一点の曇りもなかった
Lori Gold / Lori Gold
シャンテイ・サヴェージ
見事なR&B的整合感その背景には美メロの狩人が
Chantay Savage / I Will Survive (Doin' It My Way)
エリーシャ・ラヴァーン
〝慈しみ?の心にあふれた英日米の合作プロジェクト
Elisha La'Verne / Her Name Is....
エリカ・バドゥ
通受けする初期設定と巧緻なマーケティングの産物
Erykah Badu / Baduizm
エイドリアナ・エヴァンス
ジャズ、R&B、サルサなどのミュージック・ガンボ!
Adriana Evans / Adriana Evans
〇第2章 男たちよ!
キッパー・ジョーンズ
90年度の収穫突出した出来のソロデビュー
Kipper Jones / Ordinary Story
アレクサンダー・オニール
ジャム&ルイスとの入魂のコラボレーション
Alexander O'Neal / All True Man
ピーボ・ブライソン
初期の作風を思い出させる復調著しい歌いっぷり
Peabo Bryson / Can You Stop The Rain
ジェラルド・レヴァート
文句なし、興奮すら覚えた待望のソロ・デビュー作
Gerald Levert / Private Line
グレン・ジョーンズ
一朝一夕に完成したのではないこの高品質
Glenn Jones / Here I Go Again
キース・ワシントン
熟した男が世に送り出す新しき傑作
Keith Washington / You Make It Easy
ジェラルド・アルストン
人と人の縁が織りなす巡りあわせの不思議
Gerald Alston / First Class Only
バリー・ホワイト
プロデューサーをプロデュースする達人
Barry White / The Icon Is Love
ジェイムズ・ブラウン
JBは電磁石なんだとぼくは思う
James Brown / Living In America
ディアンジェロ
異様なまでの抑えた調子が虚を衝く
D'Angelo / Brown Sugar
久保田利伸
アメリカ進出第1弾となる良質のR&B作品
Toshi Kubota / Sunshine Moonlight
ルーサー・ヴァンドロス
ソロデビュー以来のビッグヒットを時代順に
Luther Vandross / Greatest Hits 1981-1995
ケニー・ラティモア
そのヴォーカルの色艶、もう完璧ではないか
Kenny Lattimore / Kenny Lattimore
キース・スウェット
この5枚目のアルバムは5枚目の傑作アルバム
Keith Sweat / Keith Sweat
ジョニー・ギル
やっぱりジョニー・ギルは器が違う
Johnny Gill / Let's Get The Mood Right
エリック・ベネイR&Bの魅力がわかりやすく詰まった良作
Eric Benet / True To Myself
マイケル・ジャクソン
MJによるMJイメージと利き腕DJ達が考えるMJ像
Michael Jackson /Blood On The Dance Floor / HIStory In The Mix
ローム
ドロリとした古くささを今っぽい意匠で
Rome / I Belong To You
ジョー
心あるR&Bファンは彼の活動を支援すべきだ
Joe / All That I Am
ブライアン・マックナイト
〝らしさ?と新しさの混淆際立つR&Bのかたち
Brian McKnight / Anytime
ベイビーフェイス
童顔の巨人氏アンプラグド初見参
Babyface / MTV Unplugged NYC 1997
〇第3章 花よ嵐よ!
ハイ・ファイヴ
テディ・ライリーが見事に切り取った若さの瞬間
Hi-Five / Hi-Five
ガイ
まさに未来を感じさせる期待に違わぬ1枚
Guy / The Future
レヴァート
もうひれ伏すしかないこれは大傑作!
Levert / Rope A Dope Style
ブレイズ
『What's Going On』以来のモータウンの良心を見る思い
Blaze / 25 Years Later
サーフィス
洗練された音作りの軌跡、新曲3曲を含むベスト盤
Surface / The Best Of Surface...A Nice Time 4 Lovin'
アイズレー・ブラザーズ feat.ロナルド・アイズレー
兄弟3人が再び集ったリユニオン第1弾アルバム
The Isley Brothers Featuring Ronald Isley / Tracks Of Life
バイ・オール・ミーンズ
圧倒的な完成度の高さを誇るモータウン移籍作
By All Means / It's Real
L?-Key?
70年代臭を濃く漂わせる稀有なファンク・バンド
L?-Key? / Where Dey At?
ジェイド
メロウな側面に注力、エモーションズの再来
Jade / Jade To The Max
メイズ・フィーチャリング・フランキー・ビヴァリー
とにかく気品がある媚びは売らねど艶がある
Maze Featuring Frankie Beverly / Back To Basics
ドゥルー・ヒル
4曲の必殺チューンが彼らへの特別扱いを約束した
Dru Hill / Dru Hill
ボーイズIIメン
通算3作目にして、最もラジオ・フレンドリー
Boyz II Men / Evolution
トニー・トニー・トニー
デビューから10年、ソウルの息子たちからの宝物
Tony Toni Tone / Hits
LSG
スーパーグループが爆誕秋の似合う音やナ
LSG / Levert・ Sweat・ Gill
エクスケイプ
女性ボーカル・グループの作品のあるべき姿
Xscape / Traces Of My Lipstick
余情章
人間交差点
『ニュー・ジャック・シティ』OST
NJSあってこそのNJC記念碑的なサントラの登場
Various / New Jack City
はじめに
おわりに