「音もうちょっと小さくならんの」
「えっ」

私は念願のアンプヘッドを手に入れて浮足立っていた。
当時のバンドにはギタリストがもう一人いたのだが、私はアンサンブルなど気にせずに好き勝手に鳴らしていた。
音がデカすぎる。でも真空管アンプだから、大きい音じゃないと好きな音が出ない。
メンバーからの無言の圧を感じる日々。
なんとか、なんとかしなければ……

そんな時、タエちゃんと出逢った。
タエちゃんは本名をWAZA Tube Amp Expanderといい、その頭文字を取って私は
「タエちゃん」と呼んでいた。

これがあれば、あの爆音でないと出せない真空管アンプの美味しい音を、小さい音量でも出すことができるのだ。
それだけじゃない。タエちゃんはなんでもできるロードボックスだった。
その見かけによらず150Wの真空管アンプまで受け入れてくれる懐の深さがあった。
オーディオインターフェース内蔵だから、音量を気にせずお気に入りの真空管アンプの音を宅録することもできる。
エフェクトも搭載されていて、コンプ・ディレイ・リバーブ・EQならタエちゃんだけでまかなえる。
キャビシミュやIRデータにも対応していて、PCで好みに作りこんだRIGを本体やフットスイッチでリアルタイムにコントロールできる、
とってもライブ向きだ。
キャビに接続する場合はロードした後に内蔵のパワーアンプを通した音を鳴らしてくれるのだが、
その音がまたタエちゃんらしくてよい。
なによりタエちゃんはBOSS出身だ。ギタリスト向けに使いやすく、また使い込みやすくチューニングされていると感じた。

どんな現場もタエちゃんと一緒だった。
アンプとギターとタエちゃんだけで、運搬重量は50㎏近くになり、本番前だというのに筋肉痛で腕と指の震えが止まらなかった。
でもチューブをフルアップしたあの音は、なにものにも代えがたかった。

「タエちゃん、明日はもっと楽しくなるよ」

私は虚空に向かって独りごちる。

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