Heartman Vintage Guitars コラム『GRETSCH 初期Duo Jetを知ろう』

ハートマンヴィンテージギターズ
小松崎

小松崎です。前回はGuildのギターを取り上げさせていただきましたが、各方面からのマニアックな反応が嬉しいやら何やらで。。。このコラムはあえてややアカデミックな内容にて構成しておりますので、サラっと読み流していただけると。きっとテストには出ないと思いますので。


GRETSCH 6128 Duo Jet
(1953~1971

56年

57年

59年

62年

1953年から生産が開始され、1954年にソリッドボディモデル※1として発売された『6128 Duo Jet』。

13-1/2インチ(342.9mm)ワイド/2インチ(50.8mm)厚のマホガニーボディに、24-1/2インチ(622.3mm)スケールのマホガニーセットネックを採用したこのモデル、当時Gibson(ギブソン)社やFender(フェンダー)社のソリッドボディモデルに対抗したという話は有名です。

※1実際にはくり貫きのマホガニーバックでホロー構造のボディです。


GRETSCH
6128 Duo Jet early’54

今回ご紹介する1本は、1953年生産※2の最初期仕様となります。初期ものならではの特徴的な仕様がみられ、近年ではそれの復刻モデルも生産されているほどの人気仕様といえるのではないでしょうか。1954年になると早くも細部のマイナーチェンジが進むため、初期仕様で現存する個体数は少ないといえるでしょう。

※2このギターのシリアルナンバーは1954年を指しているため、1954年出荷の個体と判断しております。

ヘッドストック

実寸 ヘッド上部幅70.5mm。ヘッド厚15.6mm。

注目なのは『Script(スクリプト)ロゴ』。Duo Jetでは1954年早々にブロックロゴに仕様変更されるので、とても貴重ではないでしょうか。

この時期のドラムキー型(四角ナット)トラスロッドに合わせ、トラスロッドカバーもスモールバージョンが採用されています。

チューナーはGrover製オープンバックの楕円形メタルボタン『StaTite Tuner』を採用しています。

ネック

ナット幅43.4mm。フィンガーボードは素晴らしいローズウッド材※3、指板Rは9.5インチラジアス。ネック厚(指板面からネック裏頂点までの距離)は1F付近で22.1mm、10F付近で25.2mm。しっかりと厚みのあるネックシェイプであることが伺えますね。ポジションマークはパーロイドの『Block inlay(ブロックインレイ)』です※4

※3Duo Jetでは1958年後期頃からフィンガーボードにエボニー材が採用されるようになります。

※41956年後期から、『Humptop block inlay(ハンプトップインレイ)/Cloud inlay(クラウドインレイ)』に仕様変更となります。かの世界的に有名なDuo Jetはハンプトップインレイでしたよね。

ネックジョイント

ジョイント角度が曖昧なことでもおなじみのオールドGRETSCH、こちらはプレイしやすいネック角度に調整済みとなります。プレイヤーさんには嬉しいですね。サイドからみると16フレットジョイントであることがわかりますね。

【ボディ】

サウンドホールのないホロー構造のマホガニーボディが基本。ボディバインディングはトップ側に配され白/黒/白(3プライ)仕様となります。ボディトップは、当時グレッチ社がドラムに使用していたブラックの樹脂素材がパイン材やメイプル材とともにラミネイトされています。※5。エルボー付近に【GRETSCH】の金属製エンブレムが取り付けられているのも初期仕様の特徴です。

5樹脂素材ではなくブラックのラッカーフィニッシュバージョンも存在します。

ピックガードは白/黒/白/黒(4プライ)の初期仕様。1954年途中からは以後よくみられるシルバーカラーのものが採用されるようになりますので貴重ですね。

ブリッジ

1950年代前半のDuo JetにはMelita(メリタ)製『Synchro-Sonic Adjustable Bridge(シンクロソニックブリッジ)』が採用されているのはおなじみですが、最初期は可動型のブリッジ台座ではなくブリッジスタッドがボディにダイレクトに打ち込まれる仕様となっております。

テールピース

基本仕様の「G」の文字がくり貫かれたGテールピース。Bigsby B-3トレモロユニットに交換された個体もしばしばみられ、定番のカスタマイズといえるでしょう※6

ダブルカッタウェイ期の1961年以降は、「BURNS Vibrato Unit(バーンズヴィブラートユニット)」が搭載されるようになります。

※6オリジナルでBigsby B-3トレモロユニットが搭載された個体も稀にみられます。

コントロール

コントロールは、マスターボリューム/フロントPUボリューム/リアPUボリューム/トーン※7の4ノブに、ピックアップセレクタースイッチとなります。この時期のコントロールノブ上部には、まだ矢印等の刻印はみられません。

※71959年頃からトーンノブを廃止し、ピックアップセレクタースイッチの並びにトーンスイッチが採用されます。

コントロール内部

CRL製のPOTとAEROVOX製のキャパシターで構成されているのが確認できます。

ピックアップ

ピックアップはオールド/ビザールギターファン垂涎の、DeArmond/Rowe Industries社製『Dynasonic(ダイナソニック)』を2基標準装備。特に1950年代ものは太さと艶やかな倍音域を兼ね備えた名ピックアップです※8

ピックアップ自体での高さ調節が難しいので、ギターのセッティング(弦高等)に合わせるようにピックアップ下にスペーサーを敷き高さを調節しています。

※8Duo Jetでは1958年初頭より『Filtet ´Tron(フィルタートロン)』ピックアップが搭載されるようになります。

サウンド

良質な木材を土台に、ボディのホロー構造やがっしりとしたネックシェイプ、ダイナソニックピックアップが相まって、太く艶やかなトーンが魅力のギターですね。

ハートマンヴィンテージ
小松崎

今回は初期仕様を見ていきましたが、以降数多くのマイナーチェンジや、ダブルカッタウェイ仕様への変更を経て、現在では数種類リイシューモデルが生産される定番モデルとなっている【Duo Jet】です。皆さまの楽器選びの参考にしていただければ幸いです。

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