70sVS80s Gibson ES-335比較対決!
こちらの記事は、過去に掲載したWEBコンテンツを、再編集の上で公開しています。


Gibson ES-335TDN ’74
マホガニー3Pネックが採用された1970年代。
ヴォリュートと呼ばれる補強の出っ張りが付いた時代でございます。
3Pにすることでネックの反りを相殺し、ヴォリュートによって強度アップが図られました。ピックアップにはステッカードTトップが採用され、オールド感を非常に色濃く残しています。
「ヴィンテージはマホネックまで!」とよく巷では言われています。1969年から3Pマホガニーネックになり、1975年付近でメイプル材へと変更されてしまいます。そのため、1975年付近の仕様変更までの商品は人気があるのです。

Gibson ES-335DOT ’88
1981年後半から再生産された1960年仕様の335となります。
1986年にアンティーク・ナチュラル、チェリー、アルパイン・ホワイト、エボニー、ヴィンテージ・サンバーストの5色展開となりました。
60年の再生産なので、1Pマホガニーネックが採用されています。渋いドット・ポジション・マーカーがヴィンテージ感をアップしていますね。
80年代後期は気合いれて作っている商品が多く存在し、「当たり」の確立が高い年代でもあるのです!
この時期特有の「The Original」ピックアップが搭載されています。通称「基板ピックアップ」とも呼ばれていますね。
甲乙つけがたいこの2本!
それでは比較していきましょう!!
ヘッドロゴ
まずはヘッドのギブソンロゴを比較してみてください。
あまり大差はないのですが、88年製の方は文字が太くなっていますね。
双方共「i」にドットは存在します。書式などの違いは御座いません。


ヘッド裏の刻印とシリアル等
ペグは74年がダブルライン&ダブルリングのクルーソン社が採用されているのに対し、88年はグローバー社製品が採用されています。
シリアルナンバーは共に刻印され、MADE IN U.S.A.も位置が若干違いますが共通点ではありますね。


ヘッドサイド
ヘッドの角度にも違いは御座います。
74年は約14度、88年は約17度となっています。
74年は65年付近に行われた仕様変更で14度となったものを継続しています。
88年は60年のリイシューモデルなので、17度が採用されているのです。もちろんテンション感に違いがございますので、サウンドも異なります。


ナット幅
74年は通称「ナローネック」と呼ばれ、約39mm。
ナローネックも1965年付近に行われた仕様変更に準じています。
88年は通常の約42mmが採用されています。これは60年製がワイドネックだったためと思われます。
しかしオリジナルの60年よりもグリップは太いです(笑)。写真で見比べてください!


ネック裏ヘッド付近
74年製はヴォリュートと呼ばれる補強が施されています。
ヴォリュートとはネックとヘッドの付け根付近にある「出っ張り」のコトです。
3Pマホガニーに加えヴォリュートが付くことによって強度が十分に確保されています。
対して88年製ではDOT時代に準じてノン・ヴォリュート(ヴォリュート無し)が再現されています。


ヒール&ジョイント部分
74年は3Pマホガニーネックが採用され接着面があるためなのか、ヒールの形状が少し角張っています。
88年は「これでもかっ!」ってくらい丸く仕上げられていますね。
ストラップピンの位置やバインディングの形状にも注目して下さい。違いがだんだん判ってきますねぇ。


ネック部分サイドビュー
横からの比較画像です。
意外にもそこまで大きな違いは見受けられませんね。


ブリッジ部分サイドビュー
74年ではABR-1が採用され、88年ではナッシュビルタイプが採用されています。
ABRのスタッドはボディ直に打たれていますが、ナッシュビルタイプではアンカーが採用されています。
ブリッジ駒のマテリアルが異なっているのも注目点ですね。
74年のFホールの内側が白いのに対し、88年では黒くなっているのも見逃せないですね。


ボディエンドからのビュー
この角度からですと、それぞれの年代でのアーチの具合も見て取れますね。
74年が耳の部分まで膨らみがあるのに対し、88年では耳の部分はほぼフラットに見えますね。
プレス工程でのジグの違いかと思われます


次に内部の違いを比較!
ご覧下さい!
フロントピックアップ・キャビティ内
一目見て違いがタップリありますねぇ・・・。74年のキャビティ内のマテリアルがマホガニーであるのに対し、88年はメイプルですね!
74年はテノンがないのに対し、88年では若干のロング・テノンですね(オリジナルとは異形状)。
ネック製作段階での工程、セット工程の違いが大きいと思われます。
もちろんサウンドにも違いが生じてきます。一般的にはロング・テノン(ディープジョイント)の方が良いとされていますが、(個人的にはですが)個体差の方が大きいかと思われます。
ピックアップザグリの形状もかなり異なっていますね。74年よりも88年の方が、キッチリと加工している感じがします。
加工治具が異なる物を使用したからでしょう。88年にのみANT NAT(アンティーク・ナチュラル)のスタンプが確認できます。


リアピックアップ・キャビティ内
こちらもフロント同様に違いがタップリですね。
74年ではスプルースのブレーシングのみが見えます。88年では、6弦側のみメイプルのセンターブロックが見えます。
70年代はセンターブロックが簡略化され、あまり入っていません。
80年代のDOTではセンターブロック部分が増えました。しかし両年代ともリアピックアップ・キャビティの1弦側はくり貫かれ、配線の合理化が図られています。
1964年付近までは、リアピックアップ・キャビティはしっかりとセンターブロックが詰まっていました。
ここがオリジナルとは大きく異なる点でもありますね。




ピックアップ
74年付近のピックアップは通称「ステッカード・Tトップ」と呼ばれています。
パテントナンバーの入った水貼りステッカーがベースプレートに貼られ、コイルの巻いてあるボビンの正面には「T」の文字がレイズドされています。ベースプレートにあるボビン留めビスはブラス製のマイナスビスです。
88年付近のピックアップでは、ピックアップ裏面が基板で構成されている「The Original」ピックアップが搭載されています。通称「基板ピックアップ」(笑)。そのままですねぇ。画像で見比べると両者の違いは一目瞭然ですね。




皆様如何でしたか???
一昔前ではあまり気にしなかった部分が色々と見えてきたのではないでしょうか。
実際にワタクシも見比べて「へぇ~」と思うコトが多々御座いました。
どちらの年代も甲乙つけがたい程、魅力が御座いますね。
ルックスやディテール的な部分だけではなく、サウンドもかなり異なります。
どちらが貴方に合うかは、そう・・・貴方次第です!!!