![]() ファクトリーツアー 多弦ベースのパイオニアであり、良質なウッド・コレクターとしても知られるハイエンドベース界の重鎮Ken Smith。 25年もの間、真の良質な木材のみを使用し、完璧なまでのクオリティを維持し続けることにより、世界中のベースプレイヤーから絶大な支持を得ている数少ないベース専門ブランドです。 今回、輸入代理店SleekEliteの協力を得て、遂に工房視察が実現!気になる製作現場を皆様にもご紹介させて頂きます。ファクトリーツアーはKenSmithのホームページでも既に公開されていますので、今回はここでしか見れないもう一つのファクトリーツアーにご案内致します。 |
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■遂に潜入! | |||
![]() 02. 弦の棚 ![]() 03. コントラバス演奏中! |
`04/10/20 `04/10/21 |
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■膨大な量の木材! | |||
工房の半地下にある材木の倉庫です。見渡す限りメイプルやウォルナットの山!!! かなりの数の木材を所有しているのは知っていましたが、これにはさすがに驚きました。さすがにこの中の全ての材をスミスの楽器に使用するわけではなく、一部の家具業者や、某有名ギターメーカー等に供給している材木業者へも卸しているのだそうです。強制乾燥を一切することなく、常温で何年もの間、充分に自然乾燥された後、初めて楽器に使用されるのですが、もちろんこれだけの数を所有しているからこそできる技なのでしょう。ちなみに、この倉庫に現在あるだけでも、なんとスミスのベースが数千本以上(!)も作れるだけの在庫量だそうです! |
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![]() 04. ウォルナットの山 |
![]() 05. 半地下の材 |
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![]() 06. 秘蔵のメイプル材 |
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材の山の中から隠しメイプルを発見!左下の写真は、家具業者に見つからないように隠してあったタイガーメイプルの板(笑)!3m以上もある長い板にはビッシリと美しい虎杢が!(写真07.)は、有名メーカー用にキープしてある木材の棚です。 この棚はTOP材用のフィガードのメイプルが大半を占めていました。 | |||
![]() 08. ポリッシュの樽 |
このピンク色の液体はスミスのポリッシュです。同じ半地下室の一角で、ポリッシュ もまた、このように手作業で容器に詰められ、出荷されているのです。 | ||
■(仮称)コンストラクション・ルーム | |||
工房1Fにあるこの部屋の棚には、シーズニングを終え、ある程度のサイズに切り出された指板用の板(写真10.)や、ラミネートが施されたボディー・ウィング(写真11.
)、ヘッドTOP用の板などがスタンバイしていました。 小さな工房なら、ストックの材が全てこの棚に収まってしまうかもしれません、、。スミスの楽器は、20種類以上の豊富な木材の中から、その組み合わせ方やラミネートの数、塗装の種類などによって様々なキャラクターが生み出されていますが、もうこの段階では、既に塗装以外のほとんどの仕様が決定しています。 ご存じの方も多いかもしれませんが、このようにボディーやヘッドのTOPに貼られる木目の出た(フィガード)木材の多くは、まず板状に薄くスライスされ、その断面を本のように開く(ブックマッチ)ことで、左右対象の、芸術的なルックスへと生まれ変わるのです。特にメイプルなどは、左右で明暗が反転していておもしろいですね。 もちろん F-bass工房と同様、ここまで来て、ただで帰るわけがありません!工房直オーダーモデルについては、最後にご紹介させて頂きます。 |
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![]() 09. コンストラクションルーム |
![]() 10. 指板材 |
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![]() 11. TNボディーx3 |
![]() 12. ヘッドストック用の板 |
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■作業場 |
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![]() 13. 作業場 |
![]() 14. 作業場 |
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先程のコンストラクション・ルームを抜けるとそこには、清潔感のある、とても広い作業場が2部屋ありました。ここでセットアップ以外の全ての作業が行われます。 | |||
![]() 15. ネックのストック |
![]() 16. ネック/ボディ接着 |
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(写真15. )メイプルとブビンガ等の材を貼り合わせた5ピースネック。接着剤を塗った後、写真右のようにクランプでがっちり固定して、一日乾燥されます。 (写真16. )は、ボディーとネックを接着しているところですが、ネック、ボディー・ウィングなどのラミネート部分は、その都度こうした作業が繰り返されているのです。このように異なる材(化粧板)をはさんでラミネートすることには、見た目の美しさ以外にも、接着の強度や、ネックの剛性を高める効果もあるようです。 |
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『製作に使用されている治具や機械』
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先に訪れたF-bass工房もそうでしたが、正直なところ、完成した楽器を見ているだけでは、どこまでを「ハンドメイド」と呼ぶべきか、私自身、分からずにいた気がします。真のハンドメイドとは、楽器の製作に必要な道具もまた、自分達の手によって作られているのです。 | |||
![]() 17. ヘッドの治具 |
接着されたネックはこの機具に固定され、ヘッドの形状にくり抜かれます。 | ||
![]() 18. .ボディーの治具各種 |
![]() 19. ネックヒール治具 |
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(写真18.)の手前に写っているのは、ボルトオンモデルのボディー用の治具。これを木材の板にあてて、BSRのボディーシェイプやコントロールの穴が開けられます。 (写真19.)は、ネックスルーモデルのネックヒール部分を削る為の機具です。左側にボディーを裏返しに固定し、ドリルをあてると、右側の治具にもガイドが当たり、同じように削れるという、極めてアナログな仕組みになっています。 |
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![]() 20. フレット溝切マシーン |
この機械にネックを入れてフタを締め、スイッチ一つで数秒間、フタを開けたらアラ不思議!あっという間に24本のフレット溝が完成。それぞれの溝全てに小さなノコギリが仕込まれており、同時に作動するだけという単純かつユニークな機械です。 | ||
![]() 21. 穴あけ中のエリック |
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こうしてラミネートされ、研摩されたネックは、塗装の前にペグの穴も開けられます。(写真21.) ここまで出来上がってからの作業だけに、単純とはいえ慎重を要する工程の一つです。このネックはネックスルー・モデル用のものですが、、なんかすごい光景ですね、、。 この時、ネックスルーで思い出したのですが、スミスの全てのネックスルー・モデルとボルトオンの最上位である“P”グレードのネックには、さらに強度を稼ぐ為、トラスロッドのサイドに、2本のグラファイト・バーが埋め込まれていますが、ひとくちにグラファイトといっても、やはりいくつかのグレードがあるそうで、ここで使用されているものは、なんとNASAで使用されているものと同じグレードなのだそうです!これにはさすがに恐れ入りました。ケン曰く「グラファイトはただの保険にすぎない」そうですが、、。(写真22.) |
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![]() 23. サンディング |
![]() 24. サンディング |
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こうして完成したネックはボディーと接着(ボルトオンは塗装後)され、最終的にはやはり人の手によってサンディング(研摩)されます。プレイヤーが手にした瞬間、まるで長年使用してきた楽器かのようにしっくり馴染む、独特のネック・シェイプやボディーの滑らかな曲線は、決して機械では生み出すことの出来ない、ハンドメイドならではのものと言えます。 | |||
![]() 25. オイルサンディング |
![]() 26. 塗装乾燥中 |
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充分に研摩された後、ラッカー塗装のものは(写真25.)のようにオイルサンディングされ、塗装が吹かれます。「ラッカーフィニッシュ」と呼ばれる楽器の多くは、時間短縮の為に、目止め剤やポリ系の下地を用いていますが、ここでは決してそういったものに頼ることなく、全てラッカーを使用し、じっくりと時間をかけることで、薄く、かつ丈夫で、木の持つ美しさを最大限に引き出す塗装に仕上げられています。裏を返せば、穴埋めをしないと使えない木は初めから使用しないという、ケンのポリシーにも繋がる部分と言えます。 またオイルフィニッシュに関しても、実に二十種類以上の複数のオイルを独自にブレンドして使用する為、他メーカーにはない独特の質感を持っています。入荷するベースの、オイルフィニッシュの質感が数年ごとに微妙に変化してきているのも面白いところです。 スケジュールの関係で、この日は塗装風景などの写真が撮れなかったことが悔やまれますが、このような貴重な情報が得られただけでも相当な収穫だったと思います。 |
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■パーツ/セットアップ | |||
![]() 27. アッセンブリーの組込み |
塗装が充分に乾いた後、ケンのオフィスの奥にあるこの部屋で、パーツやアッセンブリーが組み込まれ、最終チェックが行われます。 | ||
![]() 28. スミスのパーツ |
写真ではちょっと分かりにくいですが、この棚にはスミスのペグやブリッジ等のハードウェアから、P.U、プリアンプまで全てのパーツが並んでいました。 80年代、スミスは多弦ベースを先駆けて発売しただけでなく、その楽器に合ったブリッジやテーパーコア弦のようなアイテムも同時に開発しており、現在の多弦ベースやテーパー弦の基礎を作り上げたメーカーとも言えるでしょう。 |
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![]() 29. パーツ組込み |
![]() 30. 初期モノ!Smith 4弦! |
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最後の最後まで、こうして一本一本、手作業で丁寧に組み込まれていきます。ケンが「家族」と呼ぶ、優れた職人達のチームワークとケンの厳しいチェックによって、オーダーからわずか3~4ヶ月という納期ながら、完璧なまでに高いクオリティの楽器が作られているのです。 ちなみに(写真30.)は、最も初期の頃に製作された「Electric Bass I」というモデルで、なんとエンベロープフィルターが内蔵されています!当時の時代背景が伺えますね。これはたまたま修理で預けられていたものだそうです。 |
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![]() 31. 出荷前のベース |
こうしてアッセンブリーが組み込まれ、チェックされた後に、各国へと出荷されていきます。出荷直前の当店オーダー品もこの中にありました。ちなみにここに並んでいるベースの全てがディーラー等の売約済みで、フリーの在庫は一本もありませんでした、、。 | ||
■最後に | |||
![]() 32. 機内から |
KenSmithファクトリーツアーはお楽しみ頂けましたでしょうか。 こうして、スミスの楽器は、目に見えない部分にも常に最良のマテリアルを使用し、細心の注意を払って組み上げていくことで、創業から25年経った今もなお、世界のトップに君臨し続けているのです。 こちらもF-bassのファクトリーツアー同様、一人でも多くの方がスミスの楽器に興味を持って頂ければ幸いでございます。 「まだまだ物足りない!」という方には、Smithよりファクトリーツアー・ビデオも発売されていますので、よろしければそちらもご覧下さい。 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。また、今回ご協力頂いたケン・スミス氏、工房スタッフの皆様、スリークエリートの広瀬氏には、あらためてお礼申し上げます。 |
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■番外編■
イケベ30thアニバーサリーモデル&IKEBEセレクト・オーダー! |
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![]() 33. IKEBEオーダー |
今回、F-bass、KenSmithというハイエンドの2大ベースメーカーの工房を訪れ、その様子を皆様にお伝えすることができたことは本当にラッキーだったと思いますが、やはり今回の目的はそれだけではありません!イケベ30周年を記念するスペシャルオーダーモデルと、通常モデルも材を厳選して、工房にて直オーダーして参りました!!
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![]() 34. Ebony x3 |
![]() 35. 5EG(Ebony) |
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ある程度、基本的な材は決めていたので、まずはコンストラクションルーム(勝手にそう呼んでいますが、、)にあったボディー・ウィングのストックを物色。まずマッカーサーエボニーTOPのものを一通り引っ張り出してきて、一番バランスの良さそうなものを確保。このウィングは、マッカーサーエボニーTOP/ウォルナットCORE/ウォルナットBACKの5ピース・ボディーで、6弦のEGモデルに決定!エボニーとウォルナットの、太く重厚なサウンドに仕上がる予定です。 | |||
![]() 36. GN用のタイガーメイプル |
![]() 37. V字クラロウォルナット |
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次にウォルナットとタイガーメイプルの良さそうなものを探していたところ、やっぱりありました!この時、ちょうど4AグレードのタイガーメイプルTOP
/ ウォルナットCOREのものが10枚ほどあったので、全部引っ張り出し、一番バランスの良いものを選定。5弦のGN(オイルフィニッシュ/ ネックスルー)でお願いしました。 さらにウォルナットのほうも、まるで本物の虎を思わせるような、珍しい木目のクラロウォルナットを発見!迷わずキープしました。このモデルは、クラロウォルナットの太さと、ボディーCORE部に使用したマホガ二ーの柔らかさ、レンジの広さを組み合わせ、オイルフィニッシュで仕上げることで、木の暖かさを感じさせる6弦ネックスルーモデルを作ることにしました。 |
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![]() 38. 5EG-TQX(5A+タイガー) |
![]() 39. 5EG-TQX(7pcラミネート) |
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この時、メイプルTOPのボディーウィングの山の中から、一本だけ強力なオーラを放つ材を発見!パーフェクトな5A+のタイガーメイプルTOPでした。(写真38.) もともとスミスの25thアニバーサリーモデルに使用するために、キルテッドメイプルCOREの7ピースボディーで組み合わせてあった、ストック中、最上級のものだったのですが、イケベの30thアニバーサリーモデル用ということでお願いして、何とかBSRシェイプの5弦EG(ラッカー塗装のネックスルー最上位モデル)で作って頂くことができました! 良質なアルダーの音色にも近いと言われる、キルテッド(ウェスタン)メイプルをボディーの核に使用しており、TOPにはキルトよりも硬く、芯のあるタイガーメイプルを使用したモデルだったため、ここはどうしても、あえてオイルフィニッシュの柔らかい音のタッチでいきたいと思い、またまた無理なお願いをしてみました。 すると、、材も材なので、本当はラッカーで仕上げたほうが木目もより美しく見えるのですが、今回は、特別に時間をかけてオイルを二度塗りすることで、オイルフィニッシュ特有のサウンドとラッカーの美しさを併せ持った、まさにスペシャルな一本に仕上げて頂くこととなりました! |
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![]() 40. キルト選定 |
![]() 41. キルト板 |
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次もまたまたメイプルなのですが、ある意味ではその辺のエキゾチックウッドよりも希望の木目のものが見つかりにくいキルテッドメイプルで探してみました。こればかりは実際に目で確かめてくるしかないと思っていたので、板の状態の材も含め、かなり探しました、、。 そして実際に塗装を吹いた後のルックスを想定して、揮発性の高い、石油のような液体を吹きつけて一通りチェックしていきました。意外となかなか無い、大粒の5Aキルトを探していたのですが、そこはケンスミス!希望のキルトもついに発見!これは軽量なアフリカンマホガニーCOREと合わせて、クセのない上品な5弦EGモデルで作ることにしました。 |
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![]() 42. TNブラックタイガーボディーx3 |
![]() 43. イケベオーダーのブラックタイガー |
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そして最後に、イケベでも最も人気の高いモデル、通称ブラックタイガーの6弦モデルをオーダーするため、これまたストックを一通り見せて頂きました。 ブラックタイガーとは、オイルフィニッシュのGNを基に、大変希少なクロッチウォルナットをTOPに、タイガーメイプルをCORE部に使用したネックスルーモデルで、ジョン・パティトゥッチが使用していた6弦もこのモデルのBTシェイプのものでした。 また、この楽器に使用されている「クロッチウォルナット」は、もともとブラックウォルナットの丸太の中でも、ごく稀に綿状(クロッチ)の木目が現れる部分があるのですが、その大変希少な木目の出た材のことを俗にクロッチウォルナットと呼んでいるのです。この時、7~8枚あったストックの材は、その一本一本が本当に個性的な木目を持っていましたが、その中でも、ボディーのセンター寄りにきれいな帯状の木目の出た(写真43.)の4Aの材で作ることにしました。 |
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このようにして、工場直オーダーならではの 贅沢なオーダーが実現しました! 今回オーダーした全てのベースが、イケベ30周年記念モデルと呼ぶに相応しい、極上のベースばかりです! |
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『イケベ30thアニバーサリーモデル』
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『スペシャル直オーダーモデル』 ■BSR6EG-EP \SOLD : Selected Ebony Top & Walnut Back w/ Peruvian Walnut Core ■BSR5GN-TW \SOLD : Selected 4A Tiger Maple Top / African Mahogany Core 5pc. Body Wings , w/ Series Parallel Switch ■BSR6GN-FN \SOLD : Selected Claro Walnut Top & Back w/ African Mahogany Core , 5pc. Body Wings , w/ Series Parallel Switch ■BSR5EG-QN \SOLD : Selected 5A Quilted Maple Top / African Mahogany Core ■BSR6TN-CM \SOLD : Selected 4A Crotch Walnut Top / Tiger Maple Core |
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