インテリアに調和し、日々の生活の中に自然に溶け込むピアノ。 国産大手家具メーカー「カリモク家具」とローランドのコラボレーションによる、スタイリッシュなデジタルピアノ「きよら(KIYOLA)」が登場しました。
某日にお台場・カリモク家具ショールームにて行われた新製品発表会では、家具メーカーならではの無垢材の性質、インテリアコーディネート等に関する知識を学ぶと共に、同製品開発の中心人物となったお二人に話を聞くことができました。

写真左から中山(鍵盤堂)、村井氏(ローランド)、藤森氏(カリモク家具)

鍵盤堂(以下鍵):
まずは自己紹介をお願いします。
藤森孝彦氏(以下藤):
カリモク皆栄株式会社マーケティングセンター主幹の藤森です。今回は製品デザインを担当しました。
村井崇浩氏(以下村):
今回の製品プロデュースを担当しました、ローランド株式会社第二開発部 製品リーダーの村井です。
鍵:
楽器の中では最もリビングに設置される、インテリア要素の強いデジタルピアノですが、実際の家具メーカーとのコラボレーションは、これまでにありそうで無かった企画ですね。今回のコラボレーションに至った経緯をお聞かせ頂けますでしょうか。
村:
これまでも様々なカラーやスタイリッシュなデザインなど、インテリアを意識した製品を作って参りましたが、ユーザーの皆様からの意見・要望を元に、もう一歩推し進めてみることになりました。日本の住宅事情を考慮し、コンパクトでも本格的で高級感のあるデザインを、という事で家具メーカーであるカリモクさんに提案させて頂いた、という経緯です。
鍵:
やはり、無垢材ならではの質感やデザインは家具メーカーならではですね!
藤:
ええ、無垢材の持つ肌触りの良さ、インテリアに調和する優しさを大切にしたデザインとなっています。特に、本体左右の丸みを帯びた部分はソファの肘掛を意識して拘ったポイントとなっています。
村:
塩ビシートや突き板仕上げでは、こんな複雑な形に貼り付けることはできませんから、無垢材だからこそ実現できた形状ですね。
鍵:
確かに、いつまでも触っていたくなるようなカタチと手触りです。こうした細やかな仕上げは手が掛かりますよね。
藤:
基本的な形は機械で整形しますが、例えばこのエッジの丸さは一つ一つ、手作業で加工しています。
村:
この譜面立ての部分も、よく見ると凄く綺麗なんですよ!
鍵:
ホントだ。
藤:
演奏時に正面に見える部分だからこそ、ちゃんと作りたいですよね。
村:
お気付きかと思いますが、「きよら」には中央にロゴが無いんです。家具としてインテリアに溶け込むには、過度な主張は不要だと考えました。ブランドロゴは右端のパネル部に小さく表示されています。
鍵:
なるほど。更に、圧迫感の無いデザインに貢献しているのが、この細身の足ですね。この途中で僅かに膨らんで、床側に向けてテーパーが入るシェイプ、たとえばアーコール(※)の椅子やテーブルを彷彿とさせますね。
※曲げ木などの技術を使ったイギリスの家具メーカー。1940年代にデザインされたウインザーチェア等が有名
藤:
アーコール!私も大好きな家具の一つです。やはり、長年に渡って愛されてきたデザインには、普遍的な良さがあります。「きよら」も同様に、これから何十年にも渡って愛されるデザインであってほしい、という願いも込めて、こうした普遍的でシンプルなモチーフは大いに参考にさせて頂いています。
鍵:
「ピュアオーク」、ウチのリビングに置いたらピッタリです(笑)。アーコールみたいなナチュラルでクラシックなデザインにも合うし、例えばイームズチェアの足にも同じようなシェイプが見受けられますよね。更に、このショールームに展示されているようなモダンな家具にもしっくり収まっているし、本当にコーディネイトし易いデザインだなあと思います。
ちなみに、この製品をデザインするにあたって、カリモクさん側からローランドさん側にハードウェア的な寸法や仕様などのリクエストを出されたことはありますか?
藤:
基本的には、ローランドさんから頂いたモジュールの寸法に合わせての設計となりました。しかし、この形になるまでは何度も試作品をつくり、お互いに意見を出し合って煮詰めていっています。私達からの一番大きな要望としては、本体のサイズ感ですね。とにかく、一般家庭のリビングにおいて圧迫感を無くすには、出来る限り奥行きを小さくしたかったんです。
鍵:
寸法図を見る限り、ローランドのスタイリッシュ・ピアノ「F-140R」よりも奥行きが小さいですね。と、いう事はデジタルピアノのモジュール部にも新規設計が多かったのですか?

F-140Rの奥行き345mmに対し、KF-10は更に小さい

村:
いえ、例えば蓋の開閉機構は既存のF-140R等を流用していますし、音源や鍵盤はスーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源とPHA-50鍵盤という、すでにご好評いただいているLXシリーズ同等の最新技術を搭載していますので、基本的には既存のハードウェアの組み合わせですね。→LXシリーズインタビュー記事はコチラ
鍵:
それでも試作品が何度も作られた訳ですが、苦労したのはどんな部分でしょう?
村:
ズバリ、スピーカー周りです。最初に上がってきたキャビネットにスピーカーを組み込んでみたのですが、全然鳴らないんです。無垢材の鳴り方が既存のキャビネットと全く異なるので苦労しました。最終的に、専用設計のスピーカーボックスを底面に設けることで、満足できるサウンドにチューニングできました。
鍵:
普通に見ている限りだとちょうど死角になる部分なので気が付きにくいですが、こうして覗き込んでみると、確かに結構な大きさのエンクロージャーがくっついていますね。横から見ると判り易いです。
村:
ええ、更に左右の鍵盤の下にも上側に向けてスピーカーが設置されています。ちょうど鍵盤の隙間から音が出て、演奏者に直接届けることで、アコースティックピアノの様な音場を作り出しています。
鍵:
この場所へのスピーカー設置は面白いですね。底面の大きな鉄板フレームが無くなったPHA-50鍵盤の恩恵がこんなところにも活きてきているとは。このサイズのデジタルピアノでこの臨場感は素晴らしいです。
話は変わって、この蓋の部分の板材は突き板張りですよね。
藤:
ええ。木材の性質上、どうしても反りや伸び縮みが発生するので、こうした精度が要求される部分にはMDF材(※)に本体と同じ木材(オーク/ウォールナット)を薄くスライスした突き板を張っています。もちろんこの突き板も天然木から作られていますから、それぞれに個体差があります。また、細かい工夫として、この板材の断面には細く加工した木材を貼り付けてあるのがお判り頂けますか?
※中密度繊維板と呼ばれる、木材を繊維状にほぐして、合成樹脂を加えて板状に成型したもの。
鍵:
ホントだ!数mm厚の木材が四方に接着されていますね。塩ビシートはもちろん、突き板仕上げも、傷ついて下地のMDFが見えちゃったりすると残念ですもんね。傷つきやすい縁の部分がこうなっているのは、素晴らしい配慮だと思います。
ちなみに、この塗装はウレタンですか?
藤:
はい、ポリウレタン塗装です。
鍵:
じゃあお手入れも簡単ですね。
藤:
ええ、汚れがひどい場合でも水拭きのあとで乾拭きして頂ければ大丈夫です。一般的なオイル仕上げのように定期的にオイルを塗り込む必要もありません。
村:
ラッカー塗装のようにベタベタしたりひび割れたりもしません。環境耐性を評価する過酷な品質試験でも、びっくりするくらい優秀な結果でしたよ(笑)
鍵:
(笑)それにしても、本当に無塗装のような質感ですね。
藤:
特殊な「ピュア塗装」技術によって、クリア塗装を施しても色が濃く(濡れ色)ならず、無垢の色あいをお楽しみ頂けます。更に、年数を経過した際の色の変化も無垢材の魅力です。
鍵:
カラーバリエーションにある「シアーホワイト」も爽やかな色味ですね。
藤:
はい、これは今年の6月に発売されたばかりのカリモク製家具と同じカラーとなっています。近年のマンション等でトレンドとなっている、明るい色を基調としたインテリアに最適なカラーです。一般的な塗装とは異なり、ほぼ8割を木地着色で仕上げるため、塗装の難易度も高いのですが、白い色の中にもナチュラルな木の質感をお楽しみ頂けるかと思います。
鍵:
そしてウォールナット。
藤:
現在でこそウォールナット色の塗装ではなく、無垢のウォールナット材を使うことは、実は社内でも凄くモメたんですよ。
鍵:
今回の「きよら」でですか?
藤:
いえ、家具そのものの時です(笑)。ウォールナット材は色味が美しい材ですが、木目が非常に「暴れる」んですよね。
1点1点個体差が非常に激しいので、大量生産の家具では販売が難しいのです。実際、このカラー(材)はインターネット販売は行っておりません。
鍵:
ギターの販売と同じですね。
藤:
ええ、カーリーメイプル等と同じような世界かと思います。
鍵:
「きよら」では大丈夫ですか(笑)?
藤:
はい、この製品に関しては材を選別していますし部品もスリムですので、大きなテーブルに見られるほどの極端な木目の変化は出にくくなっています。
鍵:
それはそれで、ちょっと見てみたい気もしますがね(笑)。とはいえ、このショールームに展示してある個体も、良く見たら一部に綺麗な杢が出ています。
藤:
天然木ですから、やはり個体差は出てきます。他にも、僅かな節があったり、オーク材では柾目(※)ならではの虎斑(※)が出ていたりします。天然木だからこそこうした部分の味わいも楽しんでいただきたいポイントです。
※柾目:丸太から板材を製材する際の木取り法で、年輪が板材に対して垂直方向となり、板目に比べて反りや割れに強い材となります。
※虎斑:オーク/ナラ材等で見られる、木の中心部より外周部に向けて木目に対し直角に伸びる養分の通り道。光に当てると立体的に反射します。

欧米の高級家具などに使用されるレアな虎斑

鍵:
ペダルユニットや専用椅子にも無垢材が使用されていますね。
鍵:
さて、満を持して椅子の話をお伺いします(笑)。この椅子、本当に座り心地が良いですね。中々言葉では表現し難いのですが、しっとり、柔らかいのに体重を掛ける程に反発力が増してくる感じ、座面の形状も独特ですね。
藤:
やはり家具メーカーである以上、椅子の設計にも拘りました。通常の椅子と違い、浅く腰掛けて演奏するという性質に最適化するために、家具でも使用しないほどの超高密度ウレタンを使用しています。効果的に重量を分散し、坐骨を起こして腰椎への負担を軽減する形状により長時間の演奏にも疲れにくい椅子になりました。
村:
しかもこの椅子、軽いんですよ。
鍵:
(持ち上げてみて)ホントだ!凄く軽いです。
藤:
本体の材と同様に、適切な乾燥過程を経ていますから、軽くて丈夫、狂いも少ない椅子になっています。
鍵:
この椅子だけでも売れそうですね・・・ていうか、欲しいです(笑)。
村:
今のところはセットでの販売のみで、単体発売の予定はありません。が、あえて値段を付けるのであれば、カリモクさんの椅子で、しかもこれほどのクオリティなので、かなり本格的な価格になるかと・・・(笑)。
鍵:
ちょっとした高級家具ですね・・・!
藤:
はい。ですから天井の電球を替えたりするときの踏み台としては使わないでくださいね(笑)。局所的に圧を掛けるのは、この椅子に限らず、ウレタンのクッションにとっては良くありませんので・・・。
鍵:
はっ!(心当たりが・・・)気をつけます(笑)・・・いやぁ、この椅子が付属するというだけでも、「きよら」を選ぶ理由になりますよこれは。
藤:
ありがとうございます(笑)
鍵:
そんな、天然木無垢材ならではの質感あふれるキャビネット、家具メーカーならではの座り心地を追求した椅子、そしてローランド最新のデジタルピアノが融合した「きよら」。どんなお客様に使って頂きたいとお考えですか?
村:
そうですね。これまではデジタルピアノをリビングに置くことに抵抗感を持っていたインテリアにこだわりを持つ方はもちろん、省スペースでスタイリッシュなデジタルピアノをお探しの方に、是非使って頂きたいと思います。インテリアに調和し、日々の暮らしにピアノが溶け込むことで、より音楽を身近に感じるライフスタイルをお楽しみ頂ければ幸いです。
鍵:
そうですね。ふと手を伸ばせば、そこにピアノがある・・・。そんなリビングが増えていくと嬉しいですね。ちなみに、カリモク家具さんとのコラボレーションは今後も継続していくのでしょうか?
村:
今回の「きよら KF-10」は限定生産モデルではなく、ローランドの正式なカタログモデルとなります。「きよら」というシリーズとして、今後も継続して展開していきたいと思っています。
鍵:
それは楽しみですね!今回のKF-10を皮切りに、今後の展開を考えるとワクワクします。本日は貴重なお話、ありがとうございました!

KF-10-KO きよら(KIYOLA)【ピュアオーク仕上げ】

KF-10-KW きよら(KIYOLA)【ウォールナット仕上げ】

KF-10-KS きよら(KIYOLA)【シアーホワイト仕上げ】

お問い合わせ

池部楽器店 鍵盤堂

tel.03-5728-6941

kenbando@ikebe.co.jp
■店舗詳細ページ