■はじめに


ゴダン社は近年益々その規模を拡大しており、現在はカナダ国内に3箇所、
アメリカに1箇所の計4工場を保有しています。工場内部も常に拡充と進化を遂げており、
今回はメインとなるカナダ国内2工場の最新情報をご紹介致します。

カナダ・プリンスヴィル工場。

こちらでは主にフルアコモデルの「5th Avenue」、ファミリーブランドのアコースティックギターを製造。

写真は入り口ですが、工場全体はフレームに収めるのが困難な程の大きさです!

カナダ・リッチモンド工場。

こちらではお馴染みのマルティアックシリーズやエレクトリックギターを製造しています。

ゴダン社の4つの工場の中でも最大の規模を誇ります。

販売部門としてのGodin Guitarsと製造部門のGUITARBEC.incがあり、巨大な看板が迎えてくれました。

■木工

工場内には信じられない程の木材のストックがあり、何とボディトップ材は約20万本分も!
工場内にて原木から全ての製材を行っているとの事で、ギター製作には欠かす事の出来ない良質な木材確保に対するゴダン社の強い拘りが垣間見れます。

南米や北方から種々の木材のストックには、いつまで寝かすかが明記されています。充分寝かせてから機械乾燥→製材となります。

こちらは、自然乾燥後の含質度コントロールルーム。
設定した湿度にされてから製材されます。

その量に圧倒されます!

こちらは「5th Avenue」等のネック接合部分に使用される積層構造のウッドブロック。ブレイシング等、細かなウッドパーツも全て自社工場内にて製造しており、高い品質とコストパフォーマンスを確保しています。 ブロックも数量管理されています。

「Atom G888」と強そうな名前の機械は、トップの裁断を行います。 緑色の大型機械は5th Avenue系のトップ材のアーチをプレス成型する機械で、その圧力は何と40トン!

ここまでハイパワーなものは珍しく、強力にプレスされた木材は変形を起しにくくなります。

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こちらの大型ルーターマシンでは、ボディネックを始めブリッジパーツまで幅広い部位を成型しております。大まかに成型された木材はクラフトマンの手でより精密に仕上げられていきます。
少しの隙間も許されないトップ材の接着は、光る台の上で接地面の入念なチェックをした上で行います。
この様な他では見られない独自のアイデアを活かして精度を獲得しているのもゴダン社の大きな特徴です。
正確に接着されたトップ材は、回転しながら乾燥されます。
アコースティックやフルアコの薄いトップ材に欠かせないブレイシングの接着です。

各モデル、専用の冶具を用いて位置出しをするのは他社も概ね同じですが、接着時には真空圧着に加え空気で膨張した円形のクッションで更に圧力を加える事で接着強度を増しております。
この方式を取り入れてからはブレイシング剥がれのトラブルが殆んどないそうです。
更に、はみ出た接着剤を綺麗にそぎ落とし、トップ材には日付けが入れられます。

ミストで適度に水分を含んだボディサイド材は専用開発のプレス機で多角度から成型されており、一般的な型でのプレス成型よりも木材への負担が少なく済んでいます。

驚くべき事にこういった独自の技術を持った機械類や製作工具は自社内のセクションで専用開発されています! 複数台が同時に稼動しています。

正確にプレスされた側板。

指板製作機 画面上段で判り難いですが、
正確な厚さとサイズに加工中。

指板にも日付けが入れられます。

指板面仕上げは繊細な手仕事です。

指板ドットインレイのチェック!

フレットは、手作業で溝にセットした後、専用のマシンで打ち込まれます。

画像では分かり難いですが、多方向から細かく何度も打ち込む事で浮きや隙間のないフレッティングを実現しています。

楽器の演奏性やサウンドを決定付ける重要なファクターであるネックジョイントについては、専用の工具で角度を小まめに計測しながら作成されます。

接着前の最終段階ではレーザーを搭載したサンディングマシンにより、ボディ/ネックの接地面が精密に調整されます。

ネックは凹凸のある部分に2本のボルトで接着剤と共に装着されます。
これはアコースティックギターが経年変化で避けて通れない、「元折れ」という現象を回避する優れた方法で、長い年月の使用でも剛性を保ち続けるアイディアです。

更に、ゴダンのトラスロッドは逆反り、順反りに対応できる、ダブルトラスロッドで、トラスロッドが締め切ったり、緩み切ったりすることが起こらないので、永く使用できる優れものです。

塗装を待つネックとボディ達。新製品のSummit Classicのチャンバーボディも見えます!
ロバート・ゴダン氏が熱く語る! Spanish CedarバックのSummit Classic!

■塗装

木の導管を埋めるウッドシーラー(目止め)を手作業で擦り込んでいます。
厚塗りされたシーラーをバフィングマシンで研磨して行くのですが、その手際の良さは思わず見入ってしまう程。

塗装作業は機械に頼れない部分が多く、職人技の光るセクションでもあります。

塗装の吹付け作業を行う専用ブース。
ブース内は清潔に保たれており、作業員の健康面にも最大限配慮した設備を備えております。
モデルによって紫外線の照射で塗装を硬化するUV塗装も採用しており、UV塗装は経年変化での退色や変色が起こりにくいのが特徴です。
乾燥中の5th Avenueボディ達!

こちらはかなり珍しい自動バフィングマシン。
人の手では困難なスピーディー且つ均一な作業を可能にしております。勿論、手作業でのバフィングも行われており細部まで丁寧に仕上げられていきます。
楽器工場ではお馴染み、バインディング上などの余分な塗装を手作業で削るスクレーピング。恐るべき正確性とスピードは何度見ても驚かされます。
ヘッドトップに刻印されるロゴマークの転写作業。
こういった手先の器用さを求められる作業の多くは女性スタッフが行っています。他写真でも分かりますが、各工場内は女性の割合が非常に高く、女性の部門長も多くいらっやいます。ゴダン社は福利厚生が手厚く、離職率が低い為、スタッフは皆さん経験豊富な方ばかりだそうです。

ネックジョイント部に接着剤を装填!

2本のボルトはボディエンドからの
長ーい特殊ドライバーで絞めます!

ミスの許されないナットやブリッジの装着は専用の器具で計測しながら熟練のスタッフにより精密にセットアップされます。
こういった拘りこそがメイドインカナダの高いクオリティに直結しています。
精密に組み上げられた楽器は熟練のスタッフによりセットアップされます。完成直後は最も変化が起きやすい為、検品後の楽器は工場内で1週間寝かされ、その後再度検品した上で基準を満たしたもののみが出荷されます。

■まとめ

ファクトリーツアー後にリッチモンド工場前にて記念撮影。
今回多忙な中、案内いただいたロバート・ゴダン社長(写真中央右)、パトリック・ゴダン国際営業部長(写真中央左)、本当にありがとうございました! ゴダン社は年々ファクトリー内の設備を拡充しており、世界的なシェアも益々拡大しております。規模を拡張していながらもクオリティを更に向上させているのは、ゴダン社の磨きぬかれた生産体制、最新の設備、そして楽器製作に情熱を持ったスタッフに他なりません。

特に設備を整え出来る限り工程を簡略化する事で誰が作業をしても安定したクオリティが得られる様に工夫をしている点は、ゴダン社の大きな特色と言えます。
イケベ楽器店では今後も定期的なファクトリー訪問をしながらゴダン製品を大プッシュして参りますので、ご興味のある方は是非イケベ楽器店の店頭にてその高いクオリティをお確かめ下さい!

■番外編 Head Office~Montreal JAZZ FESTIVAL

カナダ出身の元F-1レーサーのジャック・ビルヌーブのレストランも軒を連ねる、モントリオールのダウンタウンの一角を6/25~7/5まで、全世界から集まる熱狂的音楽ファンやミュージシャンを更に熱くさせる!「Montreal JAZZ FESTIVAL」が開催されています。
我々は午前中Godinギターズの本社で新製品の試作プレゼンや今後の展開でのミーティングを済ませ、夕刻からMontreal JAZZ FESTIVALエリアに向かう。 ストリートには様々なジャンルのストリートミュージシャンが音を出しています。
既にギャラリーで町は別世界となっていました。

翌日の画像と共にご覧下さい。
先ずは、フランスを代表するアコースティックギターのJAZZギタリスト!Sylvain Luc(http://www.sylvainluc.fr/sylvainluc-uk.html)の出演する会場を目指します!
屋外の無料のライブとライブ会場での有料ライブがあります。パトリック氏と共にSylvain Lucへコンタクト!
特別にリハを見させて頂き待機!

本番は高齢な男女が多く独特の雰囲気に飲まれそうになります。

この日のライブは「RICHARD GALLOANO & SYLVAIN LUC HOMMAGE A EDIT PIAF」とタイトルされた、アコーディオンの世界的巨匠RICHARD GALLOANO(http://www.richardgalliano.com/)とのデュオでエディットピアフへのオマージュでした。
ライブ後半では観客が大合唱になる場面もあり、素晴らしい文化だな!と感嘆致しました!
RICHARD GALLOANO氏の使用アコーディオンはVICTORIAでした。

終演後バックステージにて、Sylvain Luc氏からお話を伺いましたが、昨日のリチャード・ボナとのデユオではGodin Multiac Nylonを使用されたとの事で、使用弦は工場出荷時と同一のダダリオ製ハードテンションを愛用されている、と伺った時は嬉しくなりました。Multiac Nylonのバックプレートへサインを頂きましたので、マニアなファンへのGodin購入特典と致しました。
「ノートルダム大聖堂」
オールドモントリオールの象徴的建造物は、日本の寺社仏閣同様、その荘厳な空気が我々を崇高な世界に連れて行ってくれそうな気にさせられます!徒歩で15分程でMontreal JAZZ FESTIVAL会場に到着。途中にチャイナタウンがあります。

快晴の天候も相まってお祭りの様な雰囲気で、来場者も小さな子供連れの家族も多く見かけます。

会場の端にキッズ向けのアトラクションが数点あり、旗を持った幼稚園の団体と思われる列もいくつかあり、市民に溶け込んだ大きなイベントだと再認識させられます。 デキシーランドをストリート・ミュージシャンの様なスペースでライブをしており、他の大きなステージは準備中でした。

暫くすると演奏の終わったデキシーランド側のやや大きなステージで大学生と思われるビッグバンドの演奏が始まりました。
編成はシンプルですが、演奏内容とPAが素晴らしく、上質なサウンドに驚かせられました。
夕刻パトリックと再び会場に戻ると、SOMI(http://www.somimusic.com/)という女性シンガーのグループが大きなグルーブで演奏しておりました。管が入りリズム隊がしっかりしていると、聴きごたえがあります。

そのライブが終わり少しすると、一番大きなステージでTHE MAVERICS(http://www.themavericksband.com/)というバンドの演奏が始まりました。

朝見た時はPAのサウンドチェック中でしたが、開演時間が近ずくと少しずつ観客が集まり、気がつくと1000人単位の観客で、一番長い空間を使ってプロジェクターや、PAスピーカーも吊り下げ式の最新版が稼動しており、通常イベントではクレーンで吊るところを、常設の巨大な曲った鉄骨に下げられています。こちらも演奏、PAともに驚く程良いサウンドでした。

ステージ間近でノッている人や、芝生で座ってビール片手で観覧する方等、様々な光景を目の当たりにすると、おのおのが自然体で心底音楽を楽しんでいるのが伝わってきます。

会場スペースは無料ですので、イベント全体の予算はモントリオール市も大きく関与していると思われます。
なお、昨夜のSylvain Lucの様に有料ライブは、クローズされた会場で開催されていました。

我々の宿泊するホテルには、女子サッカーのワールドカップへ出場する、アメリカとドイツのチームが15階と17階にそれぞれフロアを借り切って宿泊しておりました。

出入りで見掛けましたが、凛とした姿勢と表情はアスリートのトップに君臨する者の、圧倒するものを感じました。
そんな彼女たちと戦っている「なでしこ」の素晴らしさをあらためて感じる瞬間でした。
 
初AIR CANADAでGodinのパワーと、Montreal JAZZ FEATIVALの感動を持って帰国致します。