「オーダーミーティング&百瀬氏インタビュー」
大体の木材選定が終了した後、実際に百瀬氏を交えながら今回我々が要求するオーダーに関して音の傾向や装飾など細部に亘る徹底ミーティングを行いました。
 
その際百瀬氏に現在のヘッドウェイギターについてなどいろいろお話を伺うことが出来ましたので、併せてご紹介したいと思います。
 
ハートマンスタッフ:
(以下HM)
百瀬さん、本日は宜しくお願い致します。
   
百瀬氏:
宜しくお願いします。
   
HM:
まず、ヘッドウェイのカスタムシリーズ、5シリーズと7シリーズの違いについてなんですが、明らかにサウンド傾向が違いますが具体的に分けている点などについて教えてください。
   
百瀬氏:
まず5シリーズにはゴトー製のロトマチックタイプのペグを使用していて、7シリーズには同じくゴトー製のオープンタイプのペグを使用しています。5シリーズのようにロトマチックタイプのペグの方が重い為、その分ヘッドが重くなるのでサウンド傾向としてはやわらかい音になります。7シリーズは5シリーズに比べペグが軽量ですのでヘッドが軽くなります。その為サウンド傾向としては5シリーズより固い音になります。
   
HM:
なるほど。確かにヘッドが重たくなると低域が増しますし、サステインも伸びますよね。逆にヘッドが軽くなると中域が強調されてタイトな感じが出てきます。では、使用木材に関してはいかがでしょう?
   
百瀬氏:
木材に関して言えば、例えば5シリーズのドレッドノートモデルにはイングルマン・スプルースを、7シリーズのドレッドノートモデルにはシトカ・スプルースを使用しています。5シリーズに使用しているイングルマン・スプルースはシトカ・スプルースよりも柔らかい木材ですので、やはりサウンド傾向もふくよかで柔らかめな音になります。そしてシトカ・スプルースを使用している7シリーズの方が芯のある、締まった音になります。
   
HM:
確かに5シリーズの方がふくよかでやさしい感じがしますね。ブリッジ形状やピックガード形状、ヘッドの形やインレイなど見た目もモダンさが感じられます。
 
  ブレーシング(*)に関しては削り方などに違いをつけていますか?
※ブレーシングとは、トップ材とバック材の内側に施す力木のことで、振動を効率よく全体に伝える役目のほか補強の意もあります。削る量などにもより振動の仕方が変わります。
   
百瀬氏:
そうですね。ブレーシングだけみると7シリーズの方がトップブレース全てスキャロップド(*)させているので、やわらかく、軽いタッチでも音がでやすい構造にはなります。5シリーズはX部分だけをスキャロップドさせています。塗装に関しては、5シリーズはウレタン塗装で7シリーズはラッカー塗装にしています。

ウレタン塗装はラッカーと比べると硬質で耐久性に優れ経年変化にも強いなど保護能力に優れています。ですが、昔のポリウレタン塗装とは違い被膜をかなり薄くすることで楽器本来の鳴りを損なわずに仕上げることが出来ます。
  ※スキャロップドとは、ブレーシングをカーブを描くように削ることで現在では多くのメーカーでこの加工を行っています。この加工をすることで、よりトップが振動しやすくなり軽いタッチでも音が出やすくレスポンスに優れた特性を得ることが出来ます。
また、反対にその加工を施していないブレーシングを、ノンスキャロップド・ブレーシングと呼びます。
   
HM:
確かにとても薄い塗装はまったく鳴りの妨げにはなっていませんよね。ラッカーと同じく弾けば弾いただけ楽器が成長していきますね。なるほど。5シリーズはあえて全てをスキャロップドしないことで、音に芯のある(*)感じも出しているわけですね。
  ※ここでいう「音に芯がある(芯のあるサウンド)」という意味は、基音がしっかりしていて、余分な倍音を抑えたクリアーな実音がはっきりと聞き取れるサウンドのこと。
 
そして7シリーズの方は5シリーズよりも伝統を重んじた構造というか、開業当時のヘッドウェイサウンドを継承したイメージで製作されているということですね。ピックガードの形状もそうですし、昔のマーチン風に塗り込みにしているところなど見た目も7シリーズの方が伝統的な感じがします。
   
百瀬氏:
そうなりますね。
それと個人的に思ったのですが、最近はノンスキャロップドタイプのギターが少なくなってきているように思いますね。
ノンスキャロップドはスキャロップドされている物と比べると最初は硬い感じに聞こえますが、弾き込めば弾き込んでいくだけ芯のあるサウンドになっていって、それはそれでとてもいいんですけどね。
   
HM:
そうですよね。70年代のマーチンが代表されるように、独特の力強さがありますよね。
では、トップ材などの木材の厚みは昔と比較して今はどのようにしているのですか?
   
百瀬氏:
昔は今よりもちょっと薄めにしていたましたが現在はだんだん厚くなってきています。
最初はトップ材が3ミリ、バックが2.6ミリくらいにしていたところを今では、トップ材が約3.3、バック材は3ミリくらいにしています。
板厚がある程度あったほうが芯のある力強いサウンドが出やすいので。
それと昔のモデルにはスキャロップドはさせていませんでした。
   
HM:
なるほど。板厚を増やしているがブレースをスキャロップしてバランスをとっているのですね!
   
百瀬氏:
よりエアー感の強いサウンドが欲しいと言う意見もありブレースをフォワードシフト(*)させる事もあります。
7シリーズの既存モデルにはセミフォワードシフトといって若干フォワードシフトした位置にブレーシングをクロスさせています。その差は約5mmくらいですね。
  ※フォワードシフトとは、Xブレーシングを通常の位置よりさらにサウンドホール側に寄せることで、よりトップの振動の幅を広くすることが可能になります。当店オーダー品では、HD-Blackwood Custom、HD-Jacaranda Custom、 HF-Koa Customのアディロントップモデル、HC-Ziricote Customに採用を予定しています。
   
HM:
ネックの仕込み角度に関してはいかがでしょうか?
   
百瀬氏:
昔は仕込み角度が今よりも浅かったんですよ。そうなると今よりもテンション(弦のハリの強さ)が強いので、太く張りのあるサウンドになります。今の方が角度をつけて若干テンションを弱めにしていますね。

具体的にネックの仕込み角は何度と決めていなくて、ブリッジとサドルの高さに合わせて決めているんですよ。
マーチンはブリッジの高さが約9ミリのサドルがブリッジから約4ミリ出ているので13ミリくらいですか?大体それを基準として決めています。カスタムシリーズは当初13ミリだったのですが、より音の芯を強くしたいという意見があり今では12ミリの高さで設定しています。

仕込み角度に関しては、角度が浅い方がテンションが強くなり、角度が付いている方がテンションは弱くなります。
   
HM:
なるほど、そうだったんですね。時代とともに求められる音は変わっていきますが、でもその中で伝統を重んじる事も大切ですよね。では接着剤に関してなんですが、ヘッドウェイではニカワは使用していないのですか?
   
百瀬氏:
30年前当時はニカワを使っていたものも一部はあったのですが、その使い方が難しいなどの理由もあり現在は全部タイトボンドで接着しています。たしかに修理のときなどに剥がしやすいなどのメリットはありますけど。色々な接着剤を試したりもしたのですが、やはり強度の面などからも現在使用しているタイトボンドが一番いいという結論に達しました。
   
HM:
わかりました。ありがとうございます。
あとネックですが、やはりすべて手作業で行っているのですか?昨年放送された「響きのスコア」というテレビ番組で紹介された時に百瀬さんがネックをハンドシェイピングしているのを見て気になっていました。
   
百瀬氏:
そうですね。カスタムシリーズはすべて手作業でネックシェイピングをしています。もちろんブレーシングも同じですね。1フレットと9フレットで厚さを測りシェイピングはしていますが、塗装などの関係にもより若干個体差は出てきます。

昔は指板のエッジを丸めたりもしていましたが、今はあまりしていないので比較すると多少は違いを感じると思います。ネックはある程度太いほうが太いサウンドにはなりますが、あまり厚くすると弾きにくくなってしまいますので、慎重に作業を行っています。また薄いとそれなりのサウンドへの影響はありますね。しかしヘッドウェイギターはまだまだ低音域が足りないような気がするんですよ。それもあって未だに試行錯誤を繰り返しています。
   
HM:
なるほど。特にフラットピックで演奏するような場合、あまり薄いと音も薄くなってしまう傾向もありますしね!私の中では十分素晴らしい音だと思っていましたが、まだまだ試行錯誤されているのですね。勉強になります!

今日はお忙しい中大変貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!大変有意義な一日となりました。引き続き私たちも応援していますので、これからもがんばってください!
   
百瀬さん:
こちらこそ。ありがとうございます。今回頂いたオーダー品は私にとっても初めて扱う木材もあり、また一つのチャレンジだと思います。ハートマンさんと、このギター達を手にしていただける方々の為に特別な1本となるよう精一杯がんばらせて頂きます。
 
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