【レポート】レッド・ツェッペリン大研究 VOl.1『誰も知らなかったJPレスポール&アンプセッティング』 by ジミー桜井

Angus Ogawa

どーも、コンニチハ!イケベWEBサイトの中の人、Angus Ogawaと申します!どーぞヨロシクお願いします。過去に私が書いたレポートのアーカイヴをご紹介します♪今から10年前の2015年1月に公開した記事です。今や世界でご活躍されている「ジミー桜井」さんによるジミー・ペイジのレスポール&アンプセッティングです。当時取材して、相当な衝撃を覚えたことを今でも覚えています。研究会に登場する比較用の現行機材は時代を感じますが、サウンドを追求する考え方は、とても普遍的だと思います。是非ご覧ください。(2025.6.12 更新時コメント)

2014年12月27日 スタジオリボレ Part2 101スタジオ。「レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジのサウンドはどのようにしたら再現できるのであろうか…?」比類なき探究心によりジミー・ペイジを完全再現し、ジミー・ペイジ本人も認めるレッド・ツェッペリン・トリビュートの世界的第一人者、ジミー桜井氏がそのサウンドの秘密に迫ります!

飽くなきジミー・ペイジへの探求心、ここに炸裂。

ジミー桜井氏は、日本での活動のために結成した新ユニット『JimmySAKURAI Plays ZEP』の盟友の斉藤氏(Ba.)とディック北畑氏(Dr.)と共にステージに登場。

ディック北畑氏のドラムを合図に“We’re Gonna Groove”の演奏がスタート。ジミー桜井氏にコントロールされたレスポールとMarshall1959のエッジの効いたトーンに、ヴィンテージ VOX TONE BENDERの甘い歪みとが融合。LED ZEPPELIN DVDで確認できる、ロイヤル・アルバート・ホールで行われた名演を彷彿とさせます。

オーバードライブさせたMarshall 1959に、VOX TONE BENDERを組み合わせることで、ギター本体のヴォリュームを上げたときは太くて甘いトーン、ヴォリュームを絞ったときはクリスタルのようなクリーントーンを表現できるようになります。

ジミー・ペイジ・サウンドの要

ジミー・ペイジの、レスポールから放つフレーズの数々を、“あの音”で弾くことには数々の秘密があります。それはギター本体のトーンコントロールです。ピックアップのセレクトから、ヴォリュームのバランスなど、細やかな調整によって多彩なトーンを生み出しています。

アンプのセッティングはトレブル10、プレゼンス9、ミドル8、ベースは0に設定。ジミー桜井氏所有のヴィンテージECHOPLEXをブースターとして使用。低音域をカットし、高音域を強調。

バンドアンサンブルを聞かせるために、ジミーペイジのサウンドの基本は”ローカット”。しかしセッティング的にローカットにしても、マーシャルのキャビネットの箱鳴りが十分な低域の迫力を補っています。

そして、ギター本体のピックアップポジションはフロント・ピックアップ+リアピック・アップのミックストーンが軸となります。各ヴォリューム、各トーンのコントロールを行うことによって、プレイする曲に応じてギターの音色に変化を与えるようにしています。
アンプ側のセッティングは極力変えずに、ギター本体をジミー桜井氏の絶妙なコントロールによって、ジミー・ペイジサウンドを再現するのであります。

このギターコントロール方法を踏まえた上で大研究会は進みます!

現行の機材を使ってどこまで近づけられるか?

ピックアップ「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」が搭載された現行ヒストリックコレクションのレスポールを使用して“Rock n’ Roll”のデモ演奏が行われました。驚くほど、ジミー・ペイジサウンドに肉薄しており、濁りのないミックストーンが再現されていました。

続いて、比較のためにジミー桜井氏所有の、「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」を搭載した1959年製のヴィンテージ・レスポールに持ち替えて、同じセッティングで再度“Rock n’ Roll”をデモ演奏。やはりギターの最高峰と言われるヴィンテージのバースト、木材や作り、経年による変化が影響されているのか音の輪郭は丸く角が取れたような艶かしさもありつつ、抜群に存在感のあるサウンドを響かせていました。
さらに続けて、現行ノーマル仕様のヒストリックコレクション・レスポールに持ち替えて“Rock n’ Roll”をデモ演奏。近年のヒストリックコレクションに搭載されているピックアップ「カスタムバッカー」は過去の製品に比べて低出力ですが、比較するとパワーがあり、往年のジミー・ペイジサウンドと異なる現代的な張りのあるニュアンスを感じました。

『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』を徹底的に解析!

続いて、ジミー桜井氏は『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』の音源を使い、“Rock n’ Roll”と“Celebration Day”のサウンド・メイキング方法を公開しました!

“Rock n’ Roll”サウンド・メイキング

・ピックアップはミックスポジション
まず、リアピックアップ、フロントピックアップのVol、トーンともに10の状態から必要のない音域を削ることが基本。
リアピックアップのVol.は10、トーンは0~3にセット。
この曲で聞こえてくる、ジミー・ペイジのレスポール・サウンドは、フロント・ピックアップ+リア・ピックアップのミックス・ポジションで弾いています。
ジミー桜井氏が実際にレスポールをミックス・ポジションにして、トーン・コントロールを行いジミー・ペイジがどのようにギターのセッティングを行っていたかを解説しました。
ちなみに、リア・ピックアップだけで弾いている箇所はギターソロでした。

“Celebration Day”サウンド・メイキング

冒頭のギターリフはミックス・ポジション。リアピックアップの音に近いように聞こえますが、実はフロント・ピックアップのヴォリュームを抑え、リア・ピックアップ寄りの設定にしていたからです。リフ後半からリア・ピックアップに切り替え。
このように、ジミー・ペイジはピックアップの組み合わせとトーンコントロールによって多彩な音色を出し、レッド・ツェッペリンのスタジオ盤にあるような奥行きの深い世界観を、ライブで表現するために様々な創意工夫を凝らしていることがわかると思います。
このことから、聞き分けることと使い分けることが、ジミー・ペイジ・サウンドを出す上での重要なポイントと言えます。

ジミー・ペイジ・サウンドのポイント

  • アンプのイコライジングで、出したい音域は全て出す。
  • 削りたい音域はギター本体側で削る。
  • ピックアップは「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」を使用する。
  • 本人に近づくためには、見た目がとても大事!ということで、ギターのパーツにもこだわる。(ペグは70年代のグローバーゴールドペグ、ピックガード、DMCのエスカッションスイッチなど)

ジミー桜井氏こだわりのTOKAI LS-JIMMY

ここで、こだわりが詰まったTOKAI LS-JIMMYの紹介!
TOKAI LS-JIMMYとは、ジミー桜井氏本人が材選びから徹底監修を行い完成させた、こだわりのギターです。
桜井氏所有の1959年製のヴィンテージ・レスポールを徹底的に解析。職人の手によって丁寧に仕上げられた美しく際立つアーチド・トップ加工を施し、ボディはわざとムラのあるような塗装に仕上げることでヴィンテージ・ギター特有の褪色具合を再現しています。
もちろん、フィニッシュはラッカー塗料を使用。使い込むにつれて風合いと風格が増し、何年経っても楽しめる存在となってくれるでしょう。
ネックも非常に良質なマホガニーの1ピース材を使用し、4.5度の仕込み角度でディープジョイントのセットネック方式でジョイント。ヘッド表面には1ミリのメイプルをラミネイトしてジミー桜井氏所有の1959年製のヴィンテージ・レスポールに近い方法で製作するとともに強度を稼いでいます。
ピックアップはもちろん「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」を搭載。DMCパーツも惜しみなく使用。
また、フロント・ピックアップがカバードでリア・ピックアップがオープンのダブルクリームである点も見逃せません。
一切の妥協なく、こだわりにこだわり抜き完成した、ジミー桜井氏のジミー・ペイジ愛が溢れている存在感抜群のギターです。

音色の表現への深きこだわり

そして、もう一本ジミー・ペイジといえばこれなしでは語れない、Gibson EDS-1275を使用して“stairway to heaven”BBCライブバージョンを徹底分析しました!

BBCライブとは?

1971年4月1日にロンドンのパリ・シアターで行われた内容になります。
スタジオ盤が収録されている“LED ZEPPELIN IV”の発売が同年11月8日で、レコーディング期間が1970年12月~1971年5月とされています。ライブでの初披露は1971年3月5日ベルファストのアルスター・ホール公演ということから、BBCライブでの演奏は、ジミー・ペイジが試行錯誤していることが伺えます。
このBBCライブでの“stairway to heaven”は、ギターのアレンジがシンプルですが、全体的にどこかメランコリックな漂いが強く出ているアレンジとなっています。


“stairway to heaven”BBCライブのポイントは12弦側にポジションを変更するタイミングにあります。
代表的な『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』では1回目の歌が終了し、Gのポジションへ行く際に12弦に切り替えています。BBCバージョンではその時点でもまだ6弦側で弾いていて、ロバート・プラントが2回目の歌に入ったタイミングで12弦側にポジションを切り替えています。
こういった事例からも、ジミー・ペイジが、楽曲にあったギターの響きを常に思考錯誤していることが伺えます。
また、ジミー桜井氏はGibson EDS-1275の構造を利用したサウンドメイキングが、ネック・セレクター・スイッチを組み合わせることで可能であることを解説しました。
ネック・セレクター・スイッチの位置が真ん中にあるとき6弦・12弦とも音が出る状態になり、ギターから出される音がフェイズ状態になり、パワーダウンしたような印象になります。この特性を生かしたプレイを紹介。また、6弦・12弦が共鳴することで発生するフィードバッグを活かしたサウンドアプローチも披露しました。
こうして、細かく分析すると、ジミー・ペイジの音色の表現への深きこだわりを垣間見ることができます。

自宅で作れるジミー・ペイジ・サウンド

続いて、自宅で演奏する際のサウンド・メイキング方法をご紹介。こだわりの機材が必要なのことは分かるけどなかなか…という方は特におすすめです!身近な機材でも再現は可能です!

ジミー桜井氏は、ギターは現行ノーマル仕様のヒストリックコレクションのレスポールを使用し、Marshall DSL-15CとBSM トレブルブースターを組み合わせて自宅で再現できるサウンドを解説しました。

アンプ側はクランチ・チャンネルを使用して、やはり高音域を強調したセッティングを行います。
そして、エフェクターにトレブル・ブースターを使用します。
トレブル・ブースターを使用することによって、ヴォリュームを絞ったときのトーンに輪郭と艶を与えることができ、音抜けが向上するなど、効果的な音色を生み出すことができます。

使用したトレブルブースターを比較

BSM / VX-C … VOXのトレブルブースターを再現。こちらはゲインが小さめ
BSM / VX-T … VOXのトレブルブースターを再現。こちらはゲインが高め

“ジミー・ペイジを再現”ということであれば、ゲインが小さいBSM / VX-Cがマッチしますが、BSM / VX-Tは中音域が強調され、より音域の幅を広く調整することができるといったメリットもあります。

次に、「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」を搭載した現行ヒストリックコレクションのレスポールをMarshall DSL-15Cにダイレクトに繋ぎ、アンプ側をリードチャンネルに設定。するとトレブルブースターを使用せずとも、ジミー・ペイジ・サウンドを出すことができ、「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」の特徴を体感することができました。

また、ジミー・ペイジといえば、ECHOPLEXの存在もかかせません。 ジミー・ペイジはエコー部分の使用もしていますが、ECHOPLEXのプリアンプ部をブースターとして使用していました。

現在ではECHOPLEXの入手が難しい状態ですが、そのプリアンプ部を再現したエフェクターが発売されています。代表的なのはJim Dunlop/ Echoplex PreampとXotic/ EP Boosterがあります。
比較のために、現行ヒストリックコレクションのレスポールをジミー桜井氏所有のヴィンテージECHOPLEXとEchoplex Preampに繋ぎ、ヴィンテージMarshall1959から音を出しました。
Echoplex Preampはジミー桜井氏所有のヴィンテージECHOPLEXと比べて、カバーできる音域を広げられるようになっているので、ゲインを高くしたセッティングも可能です。

ジミー桜井氏は「よく出来ていて近いサウンドが出せるね。高域もブーストしてくれるのでセッティングによってはトレブル・ブースター的にも使えるね。」と評価しました。

自宅で行うジミー・ペイジサウンド・メイキングのポイント

  • 現行のレスポールを使う場合はトレブルブースターを使用する
  • トレブルブースターがなければ、ワウ・ペダルでも代用できる
  • 「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」をレスポールに搭載する

ホンモノに迫る、デジタル・モデリング・アンプ

自宅で手軽に、さまざまな音が出せるというメリットから、愛好者が増えているデジタル・モデリング・アンプ。そのデジタル・モデリング・アンプの中でも、注目度が高いYAMAHA / THR-10を使用し、サウンド・メイキング方法を紹介。
アンプシミュレーションを、BRIT HIモードにし、Bassは0、Middleは10、Trebleを10に設定。
それに加え、アンプのヘッドフォンアウトからPAに繋ぎ音を出します。 このモデリング・アンプに「GRINNING DOG / Mr.Jimmy Pickup set」を搭載した現行ヒストリック・レスポールを繋げた状態で、バンドアンサンブルを行いました。
意外とパンチの効いたサウンドで“Immigrant Song”が演奏され、会場を驚かせました!
これには、ジミー桜井氏も唸ります!
「バンドアンサンブルでも使えるくらいイイ線いっているサウンド、自宅練習にはピッタリだね」

会場に驚きの空気が流れた状態で、
「ではもう一度、ヴィンテージ機材を鳴らしましょう」とジミー桜井氏。アンプをヴィンテージMarshall1959に切り替え、再び“Immigrant Song”をバンドアンサンブルで演奏。
やはり、この音にはかないません!ズッシリと伝わる音圧、音質の膨らみ方から、高音域の突き抜け方まで、まるで音が生きているかのようでした。
デジタル・モデリング・アンプの進化も素晴らしいですが、それと同時にアナログアンプの持つ“生きた音”の魅力も再認識できました。

出したい音を追求することができる、それが醍醐味

最後にジミー桜井氏はGibson EDS-1275を持ち、バンドで“Song Remains the Same”を演奏。ワウペダルを高音域が強調される位置まで踏んでトレブリーにしたサウンド。ギターを鳴らすと『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』の“Song Remains the Same”が蘇ります!バンドが加わったところで、熱の入った桜井氏のギタープレイが炸裂しました!まるでジミー・ペイジの魂が乗り移ったかのように、右手を振り上げるあのアクションや、両足をクネクネと動かしながら移動するあのアクションなど、多くのパフォーマンスが再現され、会場のお客様も心躍らせていました。

ジミー・ペイジの魅力はまだまだたくさんあり、細かいディテールや詳細ポイントなど、話していないことがあるとジミー桜井氏!是非とも、第2回を開催してより細かい部分の研究会を行っていただきたいです!(この目からウロコな大研究会、今回お越しいただけなかった方も、レポートをみてご興味をお持ちになっていただけた方も、是非とも生でご体験いただくことをオススメします!!)

今回の大研究会。ジミー桜井氏が“どれだけ本人に近づけるか”をテーマにして、“ギターを弾くときに、より細かなところへ目を配り、耳をかたむけ、手を動かすことによって導き出せる、大きな可能性”の意味を私たちに伝えてくれました。
まずはお手持ちの機材で、どうやって近づけるかの工夫をしてみること。そこから足りないと感じたら、ギター本体をいじってみる、エフェクターを試してみる、アンプを変えてみるなど、試行錯誤していくことが大切です。 ご自身でサウンドを追求し、それを手に入れたとき、きっとギターを弾くことの楽しみが増え、楽器の面白さや、音楽の魅力を再認識することでしょう。

最後に、ジミー桜井氏と参加いただいたお客さまで記念写真!みなさま、ご来場いただきありがとうございました。

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