こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
1970年代初頭よりニューヨークの第一線で活躍し、ビッグネームだけでも枚挙に暇がないほどの膨大な数におよぶツアーやレコーディングに携わってきた輝かしいキャリアを誇り、自身もグラミーの受賞経験を有する偉大なベーシスト、Will Lee(ウィル・リー)。そんな彼の右腕となるメインベースを提供し、約30年にわたってサポートしてきたサドウスキーから発売されたこの“Will Lee Model”は、彼の要望を全面に取り入れ、基本となるデザインからサーキットまでを新たに設計するなど、アーティストの名を冠したシグネチュア・モデルというだけに終始せず、同社の新機軸となるべく新たなスタイルとして登場しました。。そしてこの度、待望の5弦バージョンもついに完成の時を迎え、ベースコレクションに入荷となりました。 
チェンバー(中空)構造を採用した軽量なスワンプアッシュ・ボディによる豊かなボディ鳴りは、指弾きの際にはまるで上質のアルダーかのような程よい弾力が感じられる一方で、紛れもなくアッシュのそれと判るスラップ時のソリッドな響きも併せ持っており、4弦を含めた同モデルの全てに共通した魅力となっています。また、本機の最大の特徴のひとつとなっている22フレットの指板は、Key=B♭やFといった管楽器とのセッションの際にも便利な、最高F音にまで音域を広げると同時に、21フレットモデル同様のオープンなスラップ・サウンドまでも確保しており、ナット幅44.5mmのスリム・ネックはスムースなフィンガリングを提供し、専用に開発されたオリジナル・プリアンプは、従来の2EQ+パッシヴ・トーンに加えてミニスイッチで瞬時にミドルのブーストを可能にしたことで、更なるトーン・バリエーションを実現しているなど、現場のあらゆる要求に即座に対応するための便利な機能が盛り込まれています。
ミドルのプリセットは、バックプレート内のDIPスイッチとトリマーによって、500Hz又は800Hz、それぞれ2種類のバンド幅(Narrow<1> / Wide<1.7>)から選択が出来、さらにブースト量とOn/Off時の音量調節までが設定可能。なお、本人の楽器は「500Hz / Q=1.7(Wide)」のフルブースト状態に設定されており、予めたっぷりとブーストされたトレブルとベースに合わせた大胆な設定となっていますが、トレブルとベースをごく僅かに足しただけのほぼフラットな状態で使用する場合には、そもそも楽器自体が持っているミドル(中音域)の成分が充分にあることと、ミッド・ブースト量のトリマーの設定位置によっては聴感上ミドルがカットされたように聞こえるポイントがあるため、例えば、予めミドルのブースト量をかなり控えめに設定し、2フィンガーの際にはあえてミドルをOnにしてアンサンブルに馴染みやすい柔らかめのトーンを作っておき、スラップ時には逆にミドルをOffにして楽器本来のミドルの成分をそのまま活かす、といった具合に、使い方次第では、奏法によって異なる音抜け(または抜け過ぎ)の問題も容易に解決することが可能になるでしょう。
製作者と演奏家という2人のマエストロが共に作り上げた新たな名機は、どんな状況下においても自身のサウンドを最高の状態に保つことが出来る、機能美の究極といって差し支えない逸品に仕上げられています。

Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya