こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
“エレクトリック・ベースのストラディバリ”と呼ばれ賞賛される伝説のルシアー、Carl Thompson(カール・トンプソン)氏。1974年にブランドを立ち上げて以来、職人の手によってのみ生み出すことが出来る、温もりのある滑らかな曲線や質感、味わい深いトーンをそなえた、真のハンドメイドと呼ぶべき作品を数々生み出してきました。中でも名作として誉れ高い、通称“レインボー・ベース”は、Primus(プライマス)のLes Claypool(レス・クレイプール)氏の使用によって知られ、今なお多くのファンを魅了し続けています。そんな“ワン・オブ・ア・カインド”の楽器作りを常に行ってきたカール・トンプソンの歴代の作品の中でも、この度、まさに究極の名に相応しい一本がベースコレクションに奇跡の入荷となりました。
パドゥークやレースウッド、メイプルなどの材を組み合わせた色とりどりの鮮やかな色彩に目を奪われる、約150本という過去最高のピース数で構成された“Rainbow”ラミネートのボディ・トップ&バックに、フレイム・メイプルのボディ・コア、パドゥーク材のネックを採用し、ピックアップカバーからブランドロゴ・プレート、ロッドカバー、ナットといった細部に至るまでを緻密なレインボー・ラミネートで見事に表現。さらに、ネックジョイント部やバックパネルにも異なる材によるさらなるアクセントが配され、トンプソン氏の特別な思い入れの証であるアバロン貝によるダイヤのインレイがボディバックを飾り、ボディ・サイドにはレインボー・ラミネートによるスペシャルな“Cat's Eye”が配されるなど、カール・トンプソンの魅力の全てが表現された珠玉の逸品に仕上げられています。
また、その天才的ともいえる絶妙なボディデザインによって、36インチ(エクストラロング)スケールを採用した楽器ながらも、フレット位置はまるで34インチの楽器並みに体に近く、腿に乗せてもストラップで吊っても全く不自然さを感じさせない見事なまでのバランスの良さを実現。この楽器に関していえば、特殊なスケールというよりもむしろ「エレクトリック・ベースなら34インチ」、「ウッド・ベースであれば約40インチ」、といったような各楽器における基準値的な感覚にさえ近いものを感じさせます。
上質のトーンウッドのみを用いて組み上げられ、パッシヴ・サーキットで構成されるカール・トンプソンの楽器ならではの、温かく、そして太く芯のある味わい深い独特のトーンは、他のハイエンドブランドの楽器とは全く異なるもので、どちらかというとむしろヴィンテージ楽器やアコースティック楽器のフィーリングに近く、手作りでしか成し得ない木の温もりが楽器の手触り、鳴り、その佇まいから伝わってきます。ユニークな位置に搭載された2つのピックアップも非常にうまい位置に配されており、どちらかを単体で使用した場合でもそれぞれの素晴らしいトーンをお楽しみいただけます。
コレクタブルな美しい外観に仕上げられた、カール・トンプソンの本当の素晴らしさは、そのユニークなルックス以上に、楽器としてのバランスの良さや、木の特性を活かした味わい深いトーンにこそあるといっても過言ではありません。楽器としての使用を前提に各部の強度が計算された上で、カール・トンプソンの特徴の全てが決して破綻することなく、あくまでも自然に融合するようにデザインされ、どの角度から見ても一目でそれと判る、楽器としてもアート作品としてもパーフェクトな作品に仕上げられています。

Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya