こんにちは。Bass Collection ベースフィッタの岡崎です。
今月のコレクションは、いま業界で話題を呼んでいる注目のニューブランドをご紹介いたします。
伝説的な楽器職人/ギターデザイナーとして知られる代表のJ.W.Black氏は、80年代にロジャー・サドウスキーの工房でオリジナルモデルの製作に携わり、ルシアーとしての才能を開花させます。彼等が送り出した、プリアンプを搭載したハイクオリティーなカスタムベースは、当時NYのミュージシャンを中心に評判を呼び、高い評価を得ました。(初期のサドウスキーのヘッド裏には、ロジャー・サドウスキーと並んで彼の名が記されています。) その後、Fender Custom Shop の一員に加わり、マスタービルダーに就任してからは、エリック・クラプトンやジェフ・ベックを始めとする名だたるトップアーティストの楽器を手掛けるなど、名ルシアーとして多忙をきわめます。アーティストモデルやヴィンテージ・リイシューモデルの製作は勿論のこと、現在の"ショーモデル"の概念を生み出したともいえる、ゴージャスな"Tree of life"インレイや、美しいフィギャードメイプルのボディトップ、 フレイムメイプルのネック等を採用した、絢爛豪華なスペシャルモデルのデザインや製作も彼が得意とするスタイルでした。 フェンダー社を退いた後も、同社のスーパーバイザーとして製品の監修に携わっていたり、ごく最近では、Suhr Guitars やSugi Guitarsとのコラボレーションで度々その名を耳にする機会が増えていましたが、この度、自身の経験と豊富な知識を形にするべく、遂に自らの名を冠したブランドを立ち上げるに至りました。
同ブランドの製品としては2種類あり、ひとつは、職人ジェイ・ブラック自身によって仕様が決められ、不定期に製作される、ある種ワンオフモデルのような作品であり、もうひとつは、彼の古くからの友人の協力によって実現した、生産拠点を日本においたハイクオリティーかつアフォーダブルな価格設定の製品となります。
前者にあたる本機は、選定された上質の軽量なアッシュ材をボディに、やや厚めながらも弾き辛さを感じさせない絶妙なネックグリップを採用し、ヴィンテージ同様の7.25Rを採用したローズ指板にはヴィンテージのフィールを壊さない程度に適度に高さと幅を持たせた"Medium Tall Vintage"フレットを使用。ブロンドカラーのボディ塗装やハードウェアには、ブラック氏本人によってソフト・エイジド(ライト・レリック)加工が施され、経年変化による金属パーツのくすみや塗装のウェザー・チェック等の味のある質感が再現されています。
60年代のレアモデルを彷彿とさせるブロンド/アッシュのボディは、軽すぎず重過ぎない、ヴィンテージスタイルのジャズベースとしてはまさに理想的な重さといえ、太い導管にたっぷりと空気を含んだ豊かな鳴りは、程よい力強さと鋭さをそなえたフォームバー・ワイアーを用いたカスタム・ピックアップとの相性も良く、アメリカンテイストとでもいうべき骨太なトーンと、上質な楽器がもつ安定感の両方を兼ね備えた楽器に仕上げられています。現在各社から発売されているヴィンテージ・レプリカ・スタイルの楽器と比較して、やはりそのどれとも違ったオリジナリティーを感じさせる逸品です。


Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya