こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
スタイルや構造、サウンドなど、その良し悪しが各人の好みによって左右されるものは除き、楽器のクオリティを判断する際に基準となる重要な3つの要素があります。それは、"素材の質"と"加工精度"、そして"耐久性"です。アコースティック楽器とは違い、主に頑丈なソリッド・ボディを採用しているエレクトリック・ベースの場合であれば、楽器の耐久性とは、イコール(=)ネックの強度であるといっても過言ではなく、もちろん誰しもがネックの強度は高いに越したことはないとお考えのはずです。しかしながら、必要以上にネックの強度を上げることは、弦振動を"トーン"に変えるために必要な倍音成分を抑え込んでしまうことになり、結果、冷たく無機質な音色になってしまいかねないというリスクと常に隣り合わせとなります。そんなネックの剛性、耐久性を突き詰め、その"剛性感"を自らの楽器の個性としてサウンドに取り込み昇華させることにより、耐久性の確保だけに止まらず唯一無二の魅力溢れるサウンドを造り上げてしまったブランドがアメリカに存在しました。今月は、ノースカロライナに工房を構える"Roscoe(ロスコー)"の5弦モデルをご紹介致します。

ロスコーを代表する3モデルのうち、取り回しの良い小振りなボディということもあり、日本ではスタンダードとなっているこの"LG"モデルは、強度としなやかさを併せ持つメイプル材と、床材などにも使用されるほどの高い硬度を誇るパープルハート材を組み合わせております。さらに、ネック内部のトラスロッド脇にグラファイトの補強材を仕込み、手間を惜しまず丁寧に組み上げられることで、ロスコーの最大の特徴である"デッドポイントとは無縁の薄く頑丈なラミネート・ネック"を完成させました。さらに、軽量で小振りなボディでたっぷりと鳴らし倍音を与え、Bartoliniエレクトロニクスで増幅させることで、B線の低音部においてもとにかく反応が早く、ローアクションでも力強く肉厚な上質のアクティヴ・サウンドを生み出すことに成功しています。

また、本機にも採用している紫と黄白色のコントラストが印象的なスポルテッド・パープルハートの指板は、ローズウッドなどと同じマメ科の木でありながらエボニー並みのレスポンスの良さと、メイプルのような芯のある太くクリアなトーンを併せ持った、特性に偏りの少ない材であることから、硬いながらもスラップ時のコンプレッションが非常に少なく、ロスコーのような楽器には非常に適した材であるといえます。また同時に、そのインパクトの高い個性的なルックスは、ロスコーを象徴するトレードマークにもなっています。

さらに今回は、ボディのトップとバックの両方に最上級"エキシビジョン"グレードのフレイム・メイプルが贅沢に使用されており、さらにボディトップの滑らかな曲線によって三次元的な立体感が表現された上品な美しい虎杢は、どの角度から見ても文句のつけようがなく、落ち着いたダークなパープルカラーの中にも埋もれない強力な存在感を放っています。

 


Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya