こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
伝統を受け継ぎ守りつつも、決して過去の再現だけに終始することなく日々新たな可能性を模索し続けるフェンダー社は、1987年にカスタムショップ部門を設立以降、機能性に徹した実戦的な楽器から芸術性の高いワンオフのコレクターズ・アイテムに至るまで、これまでに数々のユニークな楽器を世に送り出し、一つのギターブランドから、今や一つの文化の域に達するべく、常に自らその可能性を体現してきました。そんなカスタムショップの職人の中でもフェンダー社トップの製作技術と知識を誇る“マスタービルダー”の称号を与えられた職人達には、製作におけるほぼ全ての判断が自身の裁量に委ねられており、彼らのオーダーシートには“不可能”の文字はないとさえ言われています。

今回は、同社のUSAのライナップには存在しない“Jaguar Bass”を最上級のマスタービルドで実現すべく当店より特注製作を依頼したところ、マスタービルダーの“John Cruz(ジョン・クルーズ)”氏が最高の完成度をもって我々のリクエストに応えてくれました。

60年代初期のモデル同様、アルダーボディ、スラブローズ指板を基本に、ヴィンテージJBスタイルのカスタム・ピックアップをジャズベース同様の位置に配し(リアを1cmほどブリッジ側にずらした70sレイアウト)、バダスBASSIIブリッジを搭載。Jaguarの特徴を決定付けるボディ上部のコントロール・プレートには、一方に各ピックアップのオン/オフとシリーズ/パラレルの切り替えスイッチを、もう一方には内蔵プリアンプのオン/オフ・スイッチとEQのコントロールが配され、パッシヴ・サーキットを基本としつつ必要に応じてパワフルなアクティヴ・ベースとしての使用も可能にしております。

今回のオーダーに際して我々が最も拘った“最高の品質”と“手造りによる生々しい質感”というコンセプトは、カスタムショップ随一のレリック加工技術を誇るジョン・クルーズ氏の手によって叶えられ、経年変化による変色からハードウェアの酸化、ヴィンテージと見紛うほどの生々しい数々の傷跡、そして彼のセンスと技術がなければ再現が極めて困難であろうネックの部分的な色焼けのグラデーションや、独特の塗装の質感といった細部に至るまで完璧に仕上げられており、まるで本物のヴィンテージであるかのような独特の風合いとメタリックで重厚な質感を合わせ持った、遊び心溢れるロックなカスタムベースに仕立てて頂きました

今どきのフラットなアンプとの組み合わせはもちろん、両ピックアップをシリーズ(=ハムバッカー)にして真空管アンプを唸らせた際のロックなサウンドもなかなかのものです。もともと日本のプロダクトである楽器がカスタムショップのマスタービルダー・メイドとして存在しているだけでも夢があって楽しいですね。


Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya