こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
コントラバスを起源とするベースならではといえるスタイル“エレクトリック・アップライト・ベース”。今回ご紹介する本機は、目を閉じればまるで本物のコントラバスを弾いているかのような錯覚を覚えるほど、そのあまりにも自然な演奏性とリアルなサウンドにより、オーケストラの主席コントラバス奏者を含む世界の一流演奏家から愛され、“エレクトリック・コントラバスのストラディバリウス”とまで呼ばれ賞賛される、同スタイルの最高峰に位置するモデルとなります。 弦楽器の本場イタリアに工房を構える“ALTER EGO(アルターエゴ)”の製品は、弦楽器製作のマエストロと、物理学者、エンジニア他、各分野の専門家が集い、15年以上に渡る研究結果と熟練の技術を惜しみなく注ぎ、最良のマテリアルを用いて製作されています。また、同社製品の機能美あふれる秀逸で無駄のないデザインは、イタリア・デザイン界で最も権威あるコンパッソ・ドーロ賞(金のコンパス賞)を受賞しており、デザイン面においてもトップレベルであることを証明しています。
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本機の共鳴板となる表板には、ストラディバリも自身の楽器に用いたヴァル・ディ・フィエンメ産の希少なレッド・スプルースを使用し、工の字型のボディに表板がフローティングした状態になるよう固定されたユニークな構造を採用することで、楽器にアコースティック同様の振動系統をもたせ、機械的な弦振動のエネルギーを表板の振動によって空気の“音響振動”へと変換し、最小単位でのアコースティカルな生鳴りを創り出すことに成功し、共鳴箱を持たないソリッド構造の楽器ながら、アコースティックさながらの生々しいサウンドを生み出しています。
さらに、駒の両足の下に内蔵したオリジナルのピエゾ・ポリマー・ピックアップによって駒から表板へと伝わる振動はロスなく電気信号に変換され、ピエゾ特有の高域のクセを緩和するためのフィルター「fullness」コントロールを備えた高品位のオリジナル・プリアンプを介することで、アンサンブルに必要なだけの十分な出力と、アルコ、ピチカート、どちらの奏法でも最良の音色に調整出来るようデザインされています。
また、長年の使用における楽器の耐久性はもちろんのこと、鳴りの熟成や後の修理の可能性までも考慮した上で素材の選択、及び機構のデザインがなされており、イタリアの弦楽器製作技術を知る修理工であれば誰にでも修理可能な構造に設計している点など、100年以上も前に造られた楽器が今なお現役で活躍する弦楽器の世界に身を捧げ、世界中のアーティスト等とのコミュニケーションを大切にしてきた彼らならではの楽器造りの姿勢を垣間見ることが出来ます。
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ソリッドとはいえ弾いていて無機質な感じは一切なく、弦を弾いた瞬間に左手の指先に伝わってくる心地よい振動や、音の立ち上がり、体感上の弦のテンション感までもがコントラバス同様のフィーリングを持っており、まさにエレクトリックとアコースティック、それぞれの魅力を併せ持った“究極のエレクトリック・アップライト・ベース”へと見事に昇華させています。
![]() Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya |