こんにちは。Bass Collectionベースフィッタの岡崎です。
今月は、新鋭ブランドにして世界のトップベーシストから今もっとも熱い注目を集めるJBスタイルの5弦ベースをご紹介致します。
このAlleva-Coppoloの“LG5”は、少々乱暴な表現を用いるなら、トラッドスタイルのJBスタイルをコンセプトにオリジナルのサウンドを追求した、いわゆるよくあるスタイルの楽器です。しかしこのモデルが他の多くと違う点は、数値やスペックといった製作者側の一方的なこだわりに終始することなく、実際に楽器を演奏するプレイヤーが求めていた理想的なプレイフィールやサウンドを、作者が自身の感性で真に理解し製作しているということでしょう。
一般的にJBスタイルのヘッドストックに5個のペグを配置しようとした場合、本来4弦であればE線が来るべき場所に5弦のB線が追加されることによって、本来は最も遠くに位置するはずの1弦ないし2~3弦のペグがヘッドの逆サイドに移され、特にスラップ時の高音弦側の鳴りやテンションに変化が生じてしまいます。もちろんどこまで狙ってそうしたかは分りませんが、そうした5弦モデルのデザインならではのジレンマを解消するため、このLG5は全てのペグが4弦に限りなく近い場所に置かれ“5連ペグ”という、極めてシンプルかつ大胆なレイアウトを採用することで、ラージヘッドならではのどっしりとしたヘッド鳴りと、4弦モデルに限りなく近いテンション・バランスを獲得しています。また、それと同時にこのユニークなヘッドのデザインにより、メーカーの個性をルックスに表すのが難しいJBスタイルの楽器に、一目見てそれと判る個性と安定感をも与えています。
また、ピックアップやプリアンプといった、エレクトリック・ベースの心臓部にあたる主要パーツにも、市販品ではなく完全なるオリジナル・パーツを用いることで、サウンド面においても伝統を受け継ぎ独自の進化過程を経たコッポロだけのオリジナリティを確立しており、さらに楽器の完成後、数十年かけて起こりうる様々なシチュエーションやコンディションの変化までを視野に入れ、ネックやボディには少なくとも30~40年前にカットされ充分なシーズニングが施された材が主に使用され、極薄のポリ塗装で仕上げられることによって、ローBの鳴りや輪郭の沈みがちなアルダー/ローズ特有のトーン・キャラクターを適度に引き締める役割をも果たしており、演奏性・サウンド共に5弦JBスタイルとしての最高のバランスを実現しました。
音量や歪み具合までをピッキングひとつでコントロールすることができる懐の深さ、人の手によってのみ仕上げることが出来る柔らかな曲線を描くネックシェイプなど、洗練されることで失われがちな“音楽的”な要素を多分に感じられる楽器です。そこに、酸いも甘いも噛みわけたベテランのプレイヤーは心惹かれるのでしょう。

Text by Kenji Okazaki, Bass Fitter / Bass Collection Shibuya