イケベ池袋店にTaylorコーナーを新設したことで、販売スタッフもよりディープな知識を吸収していかなければなりません。
そこで今回、Taylorに精通した方々にいろいろなご意見を伺おうと、Taylorデモンストレーターの石毛氏と
Taylor正規輸入元のTaylor担当である冨岡氏にご来店頂きました。

以下はそのインタビューをまとめたものです。非常に興味深い内容もございますので、
どうか最後までお付き合い下さい!

出席者
石毛 哲生(Taylorギター デモンストレーター)
YMT冨岡 雅佳(ヤマハ ミュージック トレーディング Taylor担当)
イケベスタッフ・峯田 斉  (池部楽器 池袋店 Taylor担当)

 
さっそく色々伺おうと思っていたのですが、シゲシゲとTaylorに見入る石毛さん。色々と手にとっていたりしたのですが、新製品のT-5のあたりに来た時に、「いやー、僕もT-5を手に入れちゃったんですよ!」と言いつつご自身のT-5を取り出してバリバリと弾き始めてしまいました!! アコースティックAMPやマーシャルAMPを駆使しながらギャロッピングでバリバリ弾きまくる石毛さん、ついつい聴き入ってしまっている所で、おもむろに石毛さんが語り始めました。
 
石毛氏: テイラーの良い所はネックが良いんですよ。って言うのはネックが取り外せる所からのメンテナンス性の良さなんですよね。今までも色々とアコースティックギターを使ってきたんですが、ネック回りで苦労する事が多かったんですよ。僕はギターの調子が悪いと自分の体の調子も悪くなったような気がして気分が滅入ってくるので、今まではネックのコンディションが変わった時とか弦高のセッティングには色々と気を使いました。その点テイラーはメンテナンスがやり易いんで本当に助かります。テイラーは、もしこうなってもここをこう治せば大丈夫!っていう安心感があるのですよ!ギターは木で出来ているので、気候の変化の大きい日本ではしょうがない点も多いのですが、メンテナンス性の良いテイラーはプレイヤーにとって凄く安心できますよね!
   
イケベ: やはりアコースティックギターは気候などでセッティングの変わり易い楽器だと思いますので、色々と気を使いますか?
   
石毛氏: そーなんですよ、僕もアメリカに行ったりする事も多いのですが、飛行機に乗る時は出来るだけ気を使ったりするんですよ。気候が変われば当然音も変わったりするのですが、プレイする上でのセッティングに安心感があるギターはイイですよね
 
イケベ:

安心感って、意外と触った瞬間に「これは大丈夫」っていうインスピレーションを感じる事もありますよね?

   
石毛氏: そーなんですよ、ギターを持った時の質感とか構えた時のバランスとか、触った時に感じる瞬間はありますよね。このT-5なんか、何だこれは!でもカッコイイ!!って感じで弾いた瞬間から惹き込まれてしまいましたよ。
   
イケベ: と、話が尽きなくなりそうですので、まず石毛さんはどんな音楽遍歴でどんなプレイスタイルの方なのかみなさんにご紹介頂いてよろしいでしょうか?
   
石毛氏: 僕はね、チェット アトキンスみたいなプレイスタイルで指で弾くって所はご存知だと思いますが、タッチ感や音のバランスに気をつけてプレイするようにしているんですよ。アコースティックギターなどの生楽器は音量なんかではある程度限界があると思うので、その楽器が一番イイ音で鳴るような所を弾くように気をつけてプレイしています。色々な事はやりますけれども、シンプルにイイ音で楽器を鳴らせたらいいなって思っています。
   
YMT冨岡氏 石毛さんはナッシュビルなんかにもいらしたんですよね
   
石毛氏: はい、ナッシュビルでスタジオミュージシャンもやっていました
   
YMT冨岡氏 元々の音楽を始めたきっかけは?
   
石毛氏: 元々はカントリーバンドから入ったんですよ。チェットが好きで、ビートルズが好きで、フィンガーピッキングで弾いていた時に、たまたまフィンガーピッカーを探していたカントリーバンドに入ったんです。大学を卒業した頃で、仙台に行ったり九州に行ったりって感じの営業バンドで結構イイお金にはなったんですが、ビッチリと色々な所を回っていたので長くは続けられないなーと思っていた所に、知り合いから洋楽のカラオケを作る話が来たんですよ。昔はそんな仕事もあって、そこからスタジオミュージシャンの仕事が始まったんです。そんなヘンな所から始まっているんですよ(笑)
   
イケベ: それはどんな曲とかやっていたんですか?
   
石毛氏: 当時はね、カーペンターズとかビートルズとかをの洋楽を中心にでしたよ。当時は友達がやっていたので、僕はこの曲がやりたい!なんか言いながら好きな曲ばかりやっていましたけどね。その時はエレキギターもアコースティックギターも使っていましたが、エレキの仕事が多かったですかね。80年代ですからだんだんと新しい機材が出てきた所で、デジタルだとかMIDIだとかだったんですが、だんだんとアコースティック一本でやりたくなってきたんですよね。だから面白い仕事もいっぱいやっていましたよ。飲食店なんかのBGMでアコースティック一本で曲をやっているようなやつとか、英語で唄おう!って感じの教材のバックで弾いてみたりとか。
   
YMT冨岡氏 でも、どんな転機でアメリカに行ったんですか?
   
石毛氏: ティム・ジョンソンっていうソングライターの知り合いがいまして、どうせギターを弾いているんならナッシュビルに行ってみないか!って言うから、イイね〜なんて答えたら本当に行く事になっちゃいましてね。しかもティムの家がオレゴンなもんだから、そこから中古のバンを買って日本を縦断出来るぐらいの距離を走っていったわけなんですよ。で、やっとナッシュビルに到着した時は本場の音に触れて何か出来ればイイなー!ぐらいに思っていたんですよが、それでもどうにかなるんじゃないかなー!って気持も有ったりしましたよ。初めは右も左もわからないから、街中で音の出ているような所にギターを持って行って、ギターを弾かしてもらったりしていました。そしてだんだんと色々な所で弾いたり知り合いが増えてきたりした時に、
”おーチェットみたいのを弾くんだねー!”
”そーなんだよチェットは好きなんだよ!”
”そーかー、じゃぁ会って見るか!”
ってな感じで知り合い伝手でトントン話が進んじゃって、チェットに会うことができたんですよ。ナッシュビルに行って色々な所で弾いたりしたけどチェットに出会えたのが一番大きかったかなー!
   
YMT冨岡氏 チェットに曲を書いたりもしたんですよね?
   
石毛氏: そうなんだよ!何回か会うようになった時にデモテープを渡したのね、でもどーせ聞かないだろうと思っていたら夜になって電話がかかってきたんだよ。”I'm Chet”とか言ってるから友達の悪戯かなって思ったら本人だったんだよね!
”昨日テープくれただろ、君若いねー、学生?”
”いやー、もうけっこう年いってるんですけど。”
”テープ聞いたよ、イイ感じだねー、よかったらオフィスに来ないかい?”
なんて感じで話が進んでね!オフィスに行った時もチェットはとっても気さくな方で、テープだけで譜面なんて無いから、”ここはどんな風に弾いてるの?”なんて聞かれると、チェットの前で、”こんな風にやってるんですよー”なんて緊張しながらもやってきましたよ。でもねチェットの凄い所はそんな雑談をしながらもポロポロとギャロッピングを決めていたりするけど、いざ録音なんかの本番になると更にビシーッと決めてしまう事なんだよね!チェットはスタジオに入ると一人でこもってしまうタイプなので、そんなに何回も見た事が有る訳じゃないけど、やっぱり凄いよね!
   
イケベ: スタジオとステージでは違ったりするんですか?
   
石毛氏: 基本的には変わらないと思うんだけど、あの人はパフォーマンスの最中でも気分が乗らないと曲を途中で止めちゃったりもするんだよね。でも、そこからフッと弾き始めて気が乗ってくると凄いプレイを決めていたりしたけどね!あれぐらいの人になると何でも有りって感じだよね。
そー言えばGibsonのチェット・アトキンス モデルってあるよね。あのギターはピエゾで結構ハイゲインなんだけど、チェットの弾き方を見ていると何故そうなのかが解かるんだよね。チェットのピッキングは凄くジェントリータッチだから、ギターをハイゲインにして柔らかく弾くんですよ。
 
YMT冨岡氏 Gibsonのチェット・アトキンス モデルは、あまり生っぽくないですよね。何故チェットは使っていたんでしょう?
   
石毛氏: バンドに入って弾く時に使う事が多かったから、ハウリングの問題とか音量的な問題だと思いますよ。たぶんあの頃はあんな感じのエレガットって無かったですからね。ただね、あのギターは生楽器と思わないで電気楽器として見ると面白いんですよ。凄くトレブルの効いたシャラーンとした音をバチンッと弾いたり出来ますからね。ナッシュビルでバッキングの録音なんかをする時にですね、ギターの音をハイハットなんかのシンバルのあたりに合わせるんですよ。そんな時に煌びやかなサウンドが合ったりするんですよね。上と下をはっきりさせたサウンドで、そんなサウンドのときにはいわゆるアコースティックな、柔らかい生っぽさはあまり要らないんですよ。それで真ん中の音はフィドルがとったり、エレキギターが入ったりするんで、だから音がぶつからないんですよね。80年代のカントリーでは、よくそんなサウンドでやっていましたよ。
   
YMT冨岡氏 そー言えば、ボブ・テイラーが言っていたんですけど、79年にニール・ヤングがテイラーのギターを使い始めたんですよ。テイラー創業の5年後ぐらいなんですけど、ニール・ヤングがテイラーのギターをスタジオで使ったら凄くマイク乗りが良くて、それから使っているそうなんですね。その事をボブ・テイラーに聞いてみたら、テイラーのギターは昔からあえて低域をカットしている所もあるそうなんです。それで煌びやかなジャリーンとしたサウンドで響くそうなんですよ。そのあたりからスタジオミュージシャンが多く使い始めているんですよね。
   
石毛氏: ハッキリしているのは、どの位置にどのギターをどういう音で入れるかをテイラーは解かっていたんでしょうね。僕の知り合いのナッシュビルのギターリストもやっぱりテイラーを使っていましたよ。
   
イケベ: ちなみに石毛さんがテイラーのギターを知ったのはいつ頃でした?
   
石毛氏: 始めて知ったのはね、15年ぐらい前かな。やはり使い始めているミュージシャンが多くて、でね最初にテイラーを見て思ったのは特徴の無いギターだなって思ったんですよ。変な言い方だけど、その頃はギターに求め過ぎていたんですよ。例えばマーチンらしい音とかオベーションらしい音とか、極端に言えばリゾネーターギターとか、ギターで音を作ろうとしていたんですよ。でもね、今テイラーが良いと思っているのは、例えれば上質なご飯みたいな感じなんですよね、テイラーは。だからおかずじゃないんですよ。ギターに弾かされちゃうって事が無いんですよ。今一流ミュージシャンが使い始めているのは、弾き手によって色々な個性を出せるって所じゃないですかね。美味しいご飯が有れば調理によってはハヤシライスにもなったり天丼にもなったりしますからね。ジャズの人が使ったりロックでも使ったり出来る所がテイラーのポジティブな所じゃないですかね。
   
イケベ: それは基本的な所がシッカリしているからですかね?
   
石毛氏: そーなんですよ、基本がシッカリ鳴っているんで、だから多くのミュージシャンが使い易いって言っているんじゃないですかね。自分にこういうイメージが有って、それを鳴らそうとした時に音を出しやすいんじゃないですかね。
   
YMT冨岡氏 よくテイラーを使っているミュージシャンから聞くのは、ストレスの無いギターだって事なんですよ。思い浮かんだフレーズがそのまま出てくるようなギターだって聞きます。
   
イケベ: テイラーのギターは生での鳴りはレンジが広い方なんですかね?
   
石毛氏: これはね、機種によっても違うと思いますよ。全体的に広く出ているとは思いますけど、じゃあフィンガーの時は柔らかい音が出る機種でとか思いますからね。木の組合せやボディーのサイズで全然音が違う所もテイラーはよく出来ているなと思いますよ。
   
イケベ: ちなみに石毛さんの好きなテイラーの機種は?
   
石毛氏: 僕はね、スティール弦だったら514かな。マホガニーにシダートップの514は柔らかいフィンガーで弾きやすいギターですね。でもストロークだったらローズウッドが欲しくなるかな。で、演奏スタイル上カッタウェイは有ったほうが弾き易いですね。
   
YMT冨岡氏 カッタウェイは有るのと無いので違いますか?
   
石毛氏: 違う。やっぱりね無いほうがまろやかな音がします。何故か解からないけどカッタウェイが有るほうがチョット硬い音になりますね。昔オベーションを使っていた時にカッタウェイの有る無しにはこだわった時も有ったんですが、ステージで使う時にカッタウェイが有ると高いほうまで使えるんで、フレーズに幅が出るんですよね。カッタウェイが有るほうがカッコイイしね(笑)
   
YMT冨岡氏 テイラーと言えばグランドオーディトリアムの人気がありますが、けっこうドレッドノートのカッタウェイ有りが良いんですよ。一般的にドレッドノートのカッタウェイは敬遠されがちなんですが、テイラーのは音が纏まっていて、鳴りと演奏性のバランスが良いんですよ。今剛さんなんか、710のドレッドカッタウェイモデルをステージで使っていますしね。
   
石毛氏: そうですね、ドレッドノートは良いですね、ふくよかな響きがするし。スタンダードなアコースティックの音を求めている方には心地よいかもしれませんね。でもね、やっぱり514はテイラーのメインかなって個人的には思いますよ。テイラーらしさが良く出ていますしね。初めてテイラーを触る人にはお薦めします、初めてにはチョット高いけどね。
   
YMT冨岡氏 高い安いの基準ってどのように捉えれば良いですかね?
   
石毛氏: 難しーねー!!
   
イケベ: 石毛さんはギター講師もしていますが、先生的に見てどうですか?
   
YMT冨岡氏 けっこう、生徒さんに高いギターを薦めていますよね(笑)
   
石毛氏: はははっ、たしかに4〜5万円ぐらいのギターを見た後に数十万円のギターを見ると”高い!”って思いますよね!でもね、あんまり安いギターは最初に買わない方が良いと思うんですよ。安くてもある程度はしっかりとした造りのギターを持った方が良いとは思いますね。シッカリした造りでちゃんとした弾き心地のギターじゃないと、ギターって弾き辛いってやめちゃうんですよね。
   
イケベ: そうですね、楽器を販売する側からしても買って頂いた後のことを考えると、できれば長くギターを楽しんで頂きたいですからね。
   
石毛氏: それでね、慣れてきたら2本目は憧れのギターとか、こんな演奏をしたいからこんなギターとか色々と欲が出てくるんで、その時にはジックリと良いギターを選べばいいんだと思いますよ。初めての生徒さんが来た時には最初にギターを見てあげて、ネックの調整をしたりとか、女の子で弾き辛そうだったら細い弦に変えてあげるとかして、ギターに慣れ易いようにって始めますからね。この前も女の子がES付きのテイラーを買ってましたけど、ステージでイイ音で鳴らしていましたよ。
   
YMT冨岡氏 アコースティックって、エレクトリックの乗ったエレアコって敬遠される所もあるかと思いますが、いかがです?
   
石毛氏: いやね、それはね良いギターが有ってしっかりとしたギターテクニシャンがマイクで音をピシッと決めてくれれば良いんですが、じゃぁステージにはドラムがいる、ベースもブンブン鳴っているって状況だとどうにもならないからね。生徒さんがステージで頑張って生ギターをガンガン弾いても、バンド形態だと、お父さんお母さんが見ても”家の子の弾いている音が全然聞こえない!”ってなっちゃうんだよね。だから使い方によって考えた方が良いね。
   
イケベ: ちなみに石毛さんから見てテイラーのエレクトリック的な面の感想は?
   
石毛氏: テイラーは昔はフィッシュマンが載ってたんだよね?YMTの方が居るのにハッキリ言うけど、僕だったら今のES付きとプレイスタイルで使い分けるかもね。昔のフィッシュマンが載ったピエゾのタイプはシャリーンとした音は得意なんだよね。立ち上がりの良い弦からすぐに音が出る感じがするんだよね。ただ、フィンガーピッキングで弾くにはこのボディーセンサーが良いんですよ。ボディー鳴りの拾い方がイイですからね!
   
イケベ: コントロールが2バンドとシンプルですが、これは如何ですか?
   
石毛氏: これがね意外と使い易いんですよ。って言うのも意外とミドルはいじらなくても大丈夫なんですよね。元の音がシッカリしているんで、少しトレブルを上げようとか、チョットだけベースをいじろうとか、それぐらいのコントロールで必要充分って感じです。たぶん設計した人もそのあたりが解かっているのかもしれませんね。
ただね、話は少し戻りますが、今までピエゾに慣れた人は、ピエゾのシャリーンて音を欲しがるかもしれませんね。生のアコースティックではなくエレアコの音ってありますからね。
   
イケベ: エレアコの音って今の音楽では、ある種、確立された面も有りますからね。
   
石毛氏: そーなんです、それがピエゾの音なんですよね。アコースティックをマイクで拾う音とは別で、ブライトな音なんですよね。だから僕もテイラーを薦めるときは、暖かい生っぽい音をエレアコで求める方に薦めますね。ただ不思議な事に今のテイラーでもトレブルを上げるとけっこうシャリーンていいますけどね。ピエゾじゃないけどピエゾっぽい感じも出せますね。
   
YMT冨岡氏 テイラーのコントロールにはセンターにクリックが付いていますよね。このセンタークリックの位置でノンEQなんですよ。この何もいじっていない所から足したり引いたりと好みで調整して下さいって造りなんですよ。そのあたりは解かり易くできていると思いますよ。
   
石毛氏: それと、このテイラーのPUシステムはある種の挑戦かもしれませんね。今まではピエゾで辿ってきたエレアコの音を、違う道で追求しているんじゃないですかね。
   
YMT冨岡氏 ボブ・テイラーが、”昔から思ってたんだけどピエゾの音ってアコースティックの音じゃないよね”って言っていたんですよね。そこが原点に有るんですよ。ピエゾは細かい所まで開発し尽くして、今も開発は進んでいるのですが、それでもベースはピエゾなんですよね。
   
石毛氏: 僕が一番に思ったのがね、ステージでCDみたいな音が簡単にできちゃうって所なんだよね。でもあのシャラーンって音は最近のエレキギターにピエゾが付いたような物でもそれっぽくできちゃうんだよね。でも色々と追求していくと、これは違うんじゃないか!って思う人が出てきてもおかしくないよね。
   
イケベ: 最近は色々なピックアップメーカーもダブルマイクにしたりとか色々と考えてきていますよね。
   
YMT冨岡氏 今までは選択肢としてピエゾとコンデンサーってあたりが大きな所ですよね。ピエゾは反応は良いのですが、平面的な面があって、コンデンサーの立体的な所と組み合わせるような試みがあります。テイラーの場合は初めから立体的なサウンドを目指して開発をしていますが、確かにレスポンスではピエゾの方が良いかもしれませんね。それは機能の差だと思いますよね。
   
イケベ: お客さまからテイラーのPUシステムはコンタクトマイクなんですか?って良く聞かれます。
   
YMT冨岡氏 テイラーのコンセプトとしては、弦振動がブリッジを伝わってボディを振動させた時の、トップ材の動きをいかに繊細に捉えるかって所なんですよ。だから今までのシステムと根本的に違って音を取るだけじゃなく、どれだけ”響き”を拾えるかなんですよね。弦の振動を拾うのではなく、全体の響きを拾うようにしているんです。
僕は開発段階から見ているんですが、特殊なカメラを使ってギターを弾いた時にボディーがどのように動いているかを解析しているんですよ。だからギターの設計段階から、ボディーの動きの一番違う位置にボディーセンサーをセッティングしていますので、後付けのPUシステムとは違うんですよね。
   
イケベ: そういえば、石毛さんはテイラーの工場にも行っているんですよね。
   
石毛氏: はい、テイラーの工場を見て大雑把にですが2つ気付いた点があります。まず一つ目はギター製作をする上で、機械で作業する所と人の手でする所をちゃんと分けている所ですね。機械で正確に加工をする所は合理的に色々な機械を使っているのですが、人の手が必要なところは、やはり職人の感覚がモノを言うからか、ちゃんと職人が作業しているんですよ。だからテイラーのギターは、同じモデルであったらほぼ同じネックグリップになるので、単純にあるモデルが欲しかったら音だけで弾き比べて選ぶことが出来るんですよ。まったく同じモデルでもネックグリップが一本一本違うとなると、それはそれで面白くもあるんですが、ギターを選ぶのは大変ですよね。だから僕もT-5が凄く気に入った時に、トップ材はどれが良いかな?とかカラーはどれがカッコイイかな?って選ぶことが出来たんですよ。
 
イケベ: そうですね、T-5なんかは特にトップ材やカラーのヴァリエーションが豊富なので、選び甲斐がありますよね。
   
石毛氏: 材もマテリアルでサウンドも変わりますので、演奏スタイルを考えながら色々と試してみました。
で、工場で気付いた2つ目は、ボブ・テイラーさんは従業員を大切にしているな!って事なんです。工場の中を見学させてもらった時にビックリしたのが、医務室みたいのがありまして、その中でカイロみたいのをやっているんですよ、いわゆる整体ですかね。話を聞いてみると従業員の為に週に何回か整体の先生が来るそうなんですよね。やはりギター製作では色々と体に負担も掛かるみたいですからね。
   
YMT冨岡氏 ボブ・テイラーは、それだけじゃなくて職人の作業する時の体勢なども考えているみたいで、中腰で作業机に向かっていると腰を痛めるから高さを考えたりとか、人間が無理な体勢にならないように色々な所で考えているんですよ。また、テイラー工場はオートメーション化が進んでいるってよく言われますが、オートメーションってネガティブな印象もありますよね?でも大量生産する為のオートメーションとテイラー社のオートメーションは逆なんですよ。テイラーは精密な所やミスのできない所はオートメーション化していて、職人の勘が必要な所はあくまで職人の手で作業をするんですよ。
   
イケベ: ちなみに職人の手作業でおこなう所で代表的な所はどこですか?
   
YMT冨岡氏 そーですね、フレットを打ったりするのはハンマーではないのですが、バランス良く全体的に打ち込むには職人の力加減が大切ですし、重要なボディーにネックを組み込む作業も長年の経験が必要な箇所です。また、インレイワークなども職人がやっている代表的な所ですかね。
   
石毛氏: 材のセレクトはどうしているんでしたっけ?
   
YMT冨岡氏 やはり経験豊かな職人がセレクトしていますよ。
   
イケベ: テイラーのような加工精度の高いギターは材のセレクトが重要かと思うのですが?
   
YMT冨岡氏 確かに重要ですが、一番ではないと思うのですよ。って言うのは前に聞いた面白い話しがありまして、ボブ・テイラーが”やっぱりアコギは材だよね!”という人に、なんとコンテナ用の木枠をばらした端財を使ってギターを造っちゃったそうなんですよ。そのギターがけっこうシッカリとした音がしていたようで、その人はえらく驚いたらしいのですが、やはりボブ・テイラー曰く、ギターは作り方が一番重要ということなんです。構造とか作り方とかがシッカリとしていてこそ、材の良さも活きるんですよ。少し話は戻りますが、テイラー工場がオートメーション化されているって言いましたが、それはボブ・テイラーの頭の中で”ギターをこうしたい、こんなギターを造りたい!”っていう考えを実現化させる為に必要な機械を自分で作っていった結果なんですよ。人間の手以上の精度やクオリティを求めた時に必要な機械ですので、ある意味ボブ・テイラーの手の延長なんですよね。石毛さん、思い出して下さい、工場の中に機械を作る部署があったでしょ。
   
石毛氏: あれは、ビックリしたね!!
   
YMT冨岡氏 あそこで工作機械を自社で作っているんですよ。買ってきた機械を使うのではなくね。
   
石毛氏: あれはテイラーなんだよね!ある意味ボブ・テイラーの分身みたいなものなんだよね!
あのT-5のバフ掛けの機械も凄いね!人間よりも丁寧にフッと取り上げて終わったらスーッと繊細に置くんだよね!あれを作っちゃうのは凄いよね!
   
YMT冨岡氏 やっぱりボブ・テイラーはお客さんの事をちゃんと考えているんですよ。当たり外れが有るって事は、悪いギターも混ざっているって事じゃないですか。木材でできている以上多少の”差”は出ると思いますが、高い水準で品質が安定してこそ良いギターって言えるのではないでしょうか。その高い水準の中で、これは少しブライトだ!とかこれは低域が出るねー!なんていう”差”を選んで頂ければと思っています。全てのユーザーにより良いギターを手にして頂く、そう考えるのが製作家としては非常に重要な事ではないですかね。
   
イケベ: はい、ここで石毛さんに聞きたいのですが、テイラーのここはダメだ!って所はありますか?
   
石毛氏: んー、そーだねー、個人的な意見だけどフレットが減り易い。仕事柄よくギターは弾くので個人的にはってなるんですけど、特にローフレットはよく使うんで減りますね。
   
イケベ: へヴィユーザーならではの意見ですね。
   
石毛氏: あとね、ちょっと前まで思ってたんですが、テイラーって真面目なギターなんですよね。だから遊び心が欲しいなって思っていました。僕はねエレガットでリック・ターナーのを使ったり、エレクトリックでパーカーを使ったりもしていたんですよ。昔はオベーションも使ったりしていましたし。だからね、変なギターが有っても良いんじゃないかって思いましたね。変わった色でも良いし、ヨーロピアンデザインの丸みを帯びたようなシェイプでも良いしね。色気をもーチョッと出して欲しいかな。
テイラーはクルマで言うとボルボみたいな感じかな、だからフォルクスワーゲンのビートルみたいなテイストがあっても良いんじゃない?
   
YMT冨岡氏 ちょっと反論しますと、ボルボって高速の途中で止まったりしないですよね!(笑)
   
石毛氏: そーだねー(笑)!
あのね、ギターってよく女性に例える事があるでしょ。凄く綺麗でスーパーモデルみたいだと、良いんだけどチョッと飽きる面もあるけど、我儘で少し変な所があってなんていう人に、はまったりもする訳なんですよ。チョッとてこずるなっ、て所があっても面白いのかな、って思いますよ。テイラーって頑固で、”なんでここを変えないんだろう!”って所が有っても面白い訳ですよ。
ただね、今メインで使うようになったT-5が出てから考えが変わったね!テイラーはこんなギターも造れるんじゃないって思いましたよ。
   
YMT冨岡氏 テイラーも今後は色々と新しい事にチャレンジしていくと思います。石毛さんのおっしゃっていたような事や、個人オーダーのカスタムモデルなど、今後の課題でもあり実現できるように検討されている所もあります。みなさん今後のテイラーの展開に期待してください!
   
イケベ: 石毛さん、富岡さん、本日はお忙しい所、ありがとうございました。
 

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