毎年春にドイツ・フランクフルトで開催される、世界最大級の楽器・音響機材のトレードショウ「Musikmesse(ムジークメッセ)」。
毎年様々な新製品が期間中に発表されるため、私達にとっても非常に楽しみなイベントです。

今年のムジークメッセでは、
「英国のハイエンド・レコーディング機器メーカーの「SSL(Solid State Logic)」が何やら衝撃的な製品を出展するらしい」

そんな噂が流れていました。



そして迎えた初日。そんな私達の期待を超える、驚愕の新製品が発表されました。

「超」パーソナルなサイズのラックマウント・ラインミキサー「X-Desk」。
新世代SSLの象徴とも言うべき「SuperAnalogue」回路を搭載しながら、誰もが目を疑う低価格。


そんな衝撃の新製品についての情報をいち早くキャッチすべく、当店スタッフが現地に急行、
開発スタッフのJames Motley氏に直撃インタビューを敢行致しました!
自分達が自宅スタジオに欲しいもの

■まず、『X-Desk』開発の経緯をお聞かせ下さい。

SSL製品の開発が常にそうである様に、まずは様々なアイディアから始まります。私達自身から出るアイディアもあれば、多くのユーザーの方から寄せられるアイディアもあります。こうしたアイディアを一つ一つ、良いアイディアなのか否かを議論します。その結果、新しい製品の特徴や機能、そして想定されるユーザーや販売価格を決定した上で、製品の開発が始まります。

今回は主に、プロダクトマネージャーのSam Wetmoreと私(James Motley)の二人で、「自分達が自宅スタジオに欲しいもの」というコンセプトからスタートしました。その際重視したものは、「拡張性」、異なる様々なユーザーにとっても使いやすい「柔軟性」、そしてもちろん「SSLクオリティ」でした。

■今回の製品開発において参考になったユーザーからのフィードバックにはどんな意見があったのでしょうか?

私達は、『X-Rack』を使う多くのユーザーに、何が不足しているのか、要望を訊ねました。その結果、非常に多くのユーザーから「フェーダーが欲しい」「EFFセンドが欲しい」という意見が寄せられました。『X-Rack』用のフェーダーユニットを作る、という選択肢も考えましたが、どうせならよりフレキシブルで、『X-Rack』との連携、拡張性を持ち、更に良いものを造りたい。そうして『X-Desk』の基本コンセプトがより明確になっていったのです。

私達は、こうした意見を元に、本格的なプロジェクトスタジオでの使用も想定して、「拡張性に優れた小型SSLミキサー」に必要なものを挙げてみました。
フェーダー、AUXセンド、シンガー/プレイヤーへのトークバックシステム、キューミックスをヘッドフォンに、そしてダイレクトアウト等々・・・。
そう、このキューミックスやトークバックの信号をヘッドフォンに送れる機能は、きちんとしたボーカルブースを持たない「ベッドルーム・スタジオ」にとって非常に重要な機能ですね。

■住宅事情の厳しい方にとっては嬉しい配慮ですね。

ええ。『X-Desk』は、「1台のPC」と「8in/8outのオーディオインターフェイス」から成る小規模なシステムで使える「Mini SSL」が基本コンセプトです。もちろん、16ch、24chの入出力を持つ環境のユーザーも多く存在しますが、そうしたユーザーのために規模の異なる3種類の『X-Desk』を作るのではなく、相互にリンク(カスケード接続)することでチャンネル数を拡張できる、1種類の8chミキサーを作ることに決定しました。


X-Rack(上)と同じモジュール幅に設計されたX-Desk

また、マイクプリやダイナミクス、EQが必要なユーザーも考えられますが、SSLには、先にも述べた通り『X-Rack』というシステムが存在します。『X-Desk』の各chの幅は『X-Rack』の幅と同じサイズで設計しました。こうしたモジュールを使えば、用途に合った構成のSSL・アナログインラインコンソールを構築することが可能なのです。また、『X-Rack』をサミングシステムとして使用しているユーザーにとっては、『X-Desk』とリンクすることで入力チャンネル数を拡張することが可能です。柔軟な構成により、この場合『X-Rack』のマスターモジュールは必要ありません。『X-Desk』のセンターモジュールがその役割を果たすのです。

クリス・ジェンキンス氏
(2008年・ムジークメッセにて)

こうした仕様を確定した上で、私達は「SSLの父」クリス・ジェンキンスに『X-Desk』の企画を相談しました。彼は「Matrix」や「AWS900」「Duality」「SL4000Gシリーズ」等、SSLを代表する製品の設計者でもあります。
私達はクリスに、「私達は、こんな製品が欲しいと思うんです」とプロトタイプを見せました。
クリスは「これは良いアイディアだ。でも、私が使うならこの機能が必要だ。それさえあれば完璧だね」とアドバイスをくれました。

■それはどんな機能だったのですか?

全chに用意されたダイレクトアウトに対するプリ/ポスト切替スイッチでした。プリフェーダーの状態でコンプやリミッター等をインサートして、レコーダーに送るのが一般的な使い方ですが、彼はボーカルをPro Toolsにレコーディングする時、ダイナミクス系のインサートを使わないで、リアルタイムでフェーダーを使ってレベルをコントロールするのです。だから彼にとっては、ダイレクトアウトにポストフェーダーの信号を送ることが必要だったのですね。

■熟練エンジニアだからこそ為せる技、いわゆる「手コンプ」!正に「クリスさん専用」スイッチですね(笑)


「Channel Option」、別名
“Chris Function”スイッチ

そうですね。『Chris Function』スイッチと呼びましょうか(笑)

SSLは「Made in England」、英国製でなくてはいけません。

こうして、基本仕様が決まったところで、設計部門と製造に関する打ち合わせに入りました。
しかしまず、「この仕様で、30万円以下で実現したい」と言ったら、ビックリして「何だって!?」と聞き返されました(笑)。
当初のデザインでは、あまりに高価すぎたのです。しかし、『X-Desk』の想定価格は重要ですから、良い方法を皆で考えました。
品質面のこだわりから、、コストダウンの為に他国で製造するという選択肢は許されません。SSLは完全に「Made in England」、英国製でなくてはいけません。安いパーツを使って、音のクオリティを下げることも絶対に許されません。

ある時、メイン基板のサイズを18mm小さくすれば、これまで1枚のシートから1枚しか製造できなかったものが、一度に2枚製造できることを発見し、これによりメイン基板の製造コストはほぼ半分になりました。入出力基板もサイズを8mm縮小して、1枚のシートから3枚だったものが4枚に。これで30%の節約。SSL製品の美しいシルバーパネルも非常に手間とコストの掛かる特注の製法だったため、『X-Desk』では標準的なグレーのペイントとシルクスクリーン印刷によるパネルデザインとし、更に節約に成功しました。こうした細かな努力の積み重ねにより、英国製で、ALPS製のフェーダーを使い、サイファム製のスイッチを使いながら、この魔法の様な価格を実現することに成功したのです。

■なるほど。驚異的な価格の秘密はそうしたところにあったのですね。音質的、回路的には『Matrix』との違いはあるのでしょうか?

もちろん、DCサーボ、完全バランスの「SuperAnalogue」回路はMatrix譲り。私達はSSLです。音質面でのコストダウンはあり得ません。とはいえ『X-Desk』は『Matrix』とは完全に同じ回路ではありません。『Matrix』は『AWS900』と完全に同じサミングバスを持っており、『X-Rack』も『AWS900』と同じ回路。しかし、サイズの制約により、『X-Desk』は同じ基本原理に基づいたものながら、新しいデザインとなっています。どちらの回路も同じデザイナーによる設計ですからご安心下さい。

■ちょっと持ち上げてみてもいいですか?(X-Deskを持ち上げてみる)・・・軽い!しかも、電源内蔵ですよね?

ええ、電源は本体底部に内蔵されています。全世界対応のユニバーサル・スイッチング電源で、アナログ回路用の15Vとデジタル回路用の5Vを生成しています。底部のマウントされた電源ユニットの近くには換気用の孔が設けられており、上部に設けられた孔へ空気が抜けることで、ファンを使わない放熱を実現しています。

音楽制作を行う全てのミュージシャンに「所有して」欲しいSSL

■『X-Desk』は、どんなユーザーを想定しているのでしょうか?

音楽制作を行う全てのミュージシャンに使って欲しいSSL、それがこの『X-Desk』です。
具体的には、様々なユーザーを想定しています。digi 002/003等のPro Toolsシステムの入出力、サミングアンプ、小規模レコーディングスタジオのコンソール、いわゆる「ベッドルーム・スタジオ」のコンソール、等々。APOGEEやLynx Aurora 8等のハイエンドなAD/DAとの組み合わせや、DAWシステムでアナログ・アウトボードを使用する場合。また、「Matrixの様なDAWコントロール機能は必要ないから、シンプルで小さなアナログ・SSLミキサーが欲しい」・・・そんなユーザーも少なくないことを願っています。そんなユーザーなら、『Matrix』より低い予算で2台の『X-Desk』と2台の『X-Rack』、そして『X-Rack』にはマイクプリやEQ、ダイナミクスを満載して、本格的なミキサーを構築できるでしょう。
また、ポストプロダクションやブロードキャスト分野でも、小型のアナログラインミキサーの需要があります。そうした用途にも対応できる様、本体のレベルメーターのユニティゲイン表示は、音楽制作/ブロードキャストそれぞれの分野での使用に合わせて切替か可能になっています。

つまり、ありとあらゆるユーザーにとって使いやすい、フレキシブルなミキサーなのです。私達は多くのカスタマーが、この小さな「SSL」ミキサーを「所有」してくれることを望んでいます。『X-Desk』は、多くのユーザーにとって手が届く価格なのですから。

■『X-Desk』にマイクプリやEQを搭載する予定は無かったのですか?

音楽制作の形態も、『X-Desk』の用途も様々です。パーソナルレベルで大規模なマルチトラックレコーディングを行うことは滅多に無いでしょう。1本のヴォーカル録り用の標準的なDAWシステムで、8基ものマイクプリが必要でしょうか。また、ユーザーによってはAPIのマイクプリや、TUBE-TECHのコンプを使いたい人も居るでしょう。『X-Desk』ならば、こうした外部のアウトボードを組み合わせた「ハイブリッド・アナログミキサー」を構築することが出来るのです。
私たちは、様々なミュージシャン、エンジニアと話をする機会がありますが、彼等は皆、「自分だけのサウンド」を欲しています。私達の仕事は、そうした人が自分の音を見つけるための手助けをすることなのです。

■モニター出力を除き、入出力を全てD-Sub端子にした理由は?

おっしゃる通り、全ての入出力は、TASCAM規格の完全バランス仕様となっています。この端子はプロフェッショナルなレコーディング分野では一般的なものであり、多くのハイエンドAD/DAやオーディオインターフェイスがこの端子を採用しています。センターセクションの入出力も、入力/出力はそれぞれ別のD-Sub端子に分けられていますから、一般的なXLRのFまたはMのD-Subマルチケーブルをそのまま使用できます。これは非常に重要ですね。
『X-Desk』に用意された無数の入出力端子を全てXLRコネクターにすることは、そのままサイズの巨大化と価格の高騰を招きます。また、結線の煩雑化という意味でもD-Sub接続のメリットは大きいと判断し、こうした仕様となりました。

■なるほど。とはいえ、例えば主要な入出力をTRSフォンのバランス端子とした2Uサイズ程度のブレイクアウト・ボックスを作ったら、ステージ上でのキーボードミキサーなど、更により「パーソナル」な、気軽に使えるSSLミキサーになると思います。

了解です。今後の参考にさせて頂きますね。

■そういえば、インサート端子には『Matrix』の様なルーティング機能はありませんよね?

ええ、『X-Desk』のインサート回路は各chに一つ。マトリクスコントロールは出来ないシンプルな固定式です。

■では最後に、『X-Desk』の開発で最も苦労した点、『X-Desk』の魅力をお願いします。

SSLクオリティを保ったままで価格を下げることは、私達にとって本当に大きなチャレンジでした。
ご存知のように、私達は安価な製品を作っている会社ではありません。クオリティの高い製品を作る事により評価されている会社であり、こうした評価を失うことは全く以って望んでいません。ですから、SSLブランドでリリースされる時点で、品質、サウンドについては何の心配も要りません。驚異的なロープライスで、SSLの「SuperAnalogue」サウンドのコンソールを「所有」できる。これこそが『X-Desk』の最大の魅力です。

6月の発売開始、ご期待下さい!!

心躍る事件。SSLミキサーがラックに納まる時。

SSL / X-Desk "Super Analogue Line Mixer"
税込販売価格\315,000


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担当:アオキ

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