『PowerRec的録音機材ファイル』

80年代、数々のアーティスト達の名テイクが1台のインラインミキシングコンソールを通して生まれました。

新進メーカーSolid State Logic社の作り上げた、そのエポックメイキングなコンソールの名前は『SL4000E』。

世に言う“Eシリーズ”コンソールです。

当時の多くのエンジニア達は、機能的かつダイナミックなサウンドの『SL4000E』で多くの作品を手がけていきました。

そして現代、『SL4000E』の血筋を受け継いだ1台のアウトボードがあります。

『Solid State Logic / X Logic E Signature Channel』



『SL4000E』の高性能な回路をそのまま継承した『X Logic E Signature Channel 』には、ダイナミックかつ豊かな音色を持つ「JENSEN社カスタムトランス」内蔵マイクプリアンプ、伝説の「Listen Mic Compressor」、積極的な音作りが可能な「4000Eダイナミックスセクション」、Eシリーズ初期型に搭載された効きの良い「Brown Knobイコライザー」が装備されています。
この歴史的サウンドセクションを自在に組み合わせることにより、“Eシリーズ”独特の芯のある、そしてフレキシブルなサウンドが生み出されます。





『X Logic E Signature Channel』を語る上で、それを生み出したSolid State Logic社と『SL4000Eシリーズ』の歴史に触れなければなりません。

Solid State Logic社(以下SSL)は、1969年イギリス、オックスフォード州サイエンスパークにパイプオルガンの電子制御装置の職人であったコリン・サンダース氏を中心に創設されました。
その後、数々の名作コンソールを世に輩出し、現在は名実共に世界第一級のレコーディング・コンソールメーカーとして、世界中の第一線のレコーディングスタジオ、ブロードキャスト、ポストプロダクションスタジオ等にプロフェッショナル・アナログ/デジタル・オーディオコンソールを提供し続けています。

SSLの名前がコンソールメーカーとして世界的に有名なったきっかけは、1980年に発売された『SL4000E』シリーズがロンドンの『タウンハウススタジオ』等の有名なスタジオに導入されたことに端を発します。
その後、画期的な先進性能とモダンコンソールの礎を築いたその先見性、そして驚異的なサウンドクオリティにより、『SL4000E』は、瞬く間に世界各国の商業スタジオやブロードキャスト・スタジオ等へ広まっていきました。

Eシリーズの特長としては、当時まだ製品化されていなかった“1本のチャンネルモジュールに録音とモニターの2本のラインを設けた”「インラインコンソール」を採用した事が挙げられます(写真右)。これは1chという細いチャンネルに2ch分の回路を組み込んでいく為、卓越した高い技術が必要であり、SSL社の技術力の高さを世の中に証明することとなりました。

また、各チャンネルに「ダイナミクス・セクション」を設け、入力時やミックス時にコンソール上だけで各チャンネルの積極的な音作りを可能にしました。
このコンソールのチャンネルストリップへのダイナミクス機能搭載も『SL4000E』が初めて実現した製品であり、非常に画期的な事だったのです(写真左)。

しかしながら“Eシリーズコンソール”最大の魅力は「芯のしっかりとした骨太のサウンド」にありました。
その後の“Gシリーズコンソール”とは趣を異にする、“Eシリーズ”独特な太いサウンドの秘密は、それぞれのチャンネルアンプ部に備え付けられた「JENSENカスタムトランス」にあります。SSL社はJENSEN社に“高い品質を保ちながらも、各チャンネルセクションに備えられるような小型のトランス”をカスタムオーダーしました。
もちろんこの「JENSEN カスタムトランス」は、『X Logic E Signature Channel』にも搭載されています。

結果、世界中のレコーディングスタジオに“Eシリーズコンソール”のサウンドが広がり、80年代当時のロック、ポップスを中心に、数々の歴史的レコーディングを第一線で担いました。
そして、研鑽が重ねられた“Eシリーズ”は、続く後継機コンソール『SL4000G』や『SL9000』、『XL9000』シリーズや、その他全ての現代的コンソールの基礎を作り上げ、以降のレコーディング史に多大な影響を及ぼす革命をもたらしたのです。


SSLは、80年代後半の“Eシリーズ”生産完了の後、1993年、日本のスタジオにも広く普及し人気を博した『SL4000G+』や、『SL9000』、『XL9000K』などの商業向けコンソールを発表しました。

その一方で、時代はDAW主流の世の中に移ろい、PC内でのミックスのみで作品を完成させてしまう人々が増え、“コンソールでミックスする”という人々が除々に減っていった時代でもあります。

ミュージシャン、エンジニアの多くがレコーディング時に求めるものは、“Inputの音が良質”のアウトボードでした。レコーディング時に“Inputのサウンドが良ければ”、パソコン内部のミックスのみでも良質の作品が出来上がるというパーソナルサイズ化の風潮が広がっていました。

そうした中、SSL社は2003年にエンジニアやミュージシャン向けのパーソナルアウトボードとして、コンソール『XL9000K』の高品質回路を贅沢に使用した「X Logicシリーズ」を発表。
チャンネルストリップ『X Logic Channel』等の登場により、それまではスタジオでしか使えなかったSSLのサウンドがより身近となりました。

『X Logic Channel』等によりパーソナルスタジオに導入が図られた“Gシリーズ”、“Kシリーズ”コンソールの「Super Analogue」サウンドは、ある面で確かなSSLのサウンドであったのですが、一方でエンジニアやミュージシャンの中には、コンソールでしか聞いた事のない『SL4000E』の「芯のしっかりとした骨太のサウンド」を求める人々も多く現れて来ました。

そして、2005年に『SL4000E』コンソールのダイナミックで骨太なサウンドを生む回路を贅沢に採り入れられた「X Logicシリーズ」、『X Logic E Signature Channel』が発売されました。
『X Logic E Signature Channel』は、『SL4000E』同様に1chにマイクプリアンプとダイナミクスを装備した、1台完結型のチャンネルストリップです。


持ち運び可能となった“Eシリーズ”のサウンドはエンジニアやアーティストを中心に絶大な支持を得ました。

ロックギタリストにとって、『X Logic E Signature Channel』の「JENSENカスタムトランス」を使用した「骨太のサウンド」と「効きの良いイコライザー」が生み出すサウンドは、現代の音楽シーンにおいて音楽的に非常に相性が良く、彼らのプライベートスタジオで数多くの『X Logic E Signature Channel』が導入される事となり、再び“Eシリーズ”のサウンドは、世界中で高い評価を獲得したのです。

写真はE Signature Channelの内部。高効率のトロイダルトランスを電源部に採用、電源の清流基板と本体基板を完全に分離(写真1)。更に、信号処理部を電源部より可能な限り離した基板レイアウトにより、電源ノイズの干渉をシャットアウトしています。複雑なアナログ回路は表面実装コンポーネンツを使用することで、驚くほどコンパクト&高密度にまとめられているのはチャンネルストリップ出自の所以。シグナルパスの切替には、高品質なオムロン製ソリッドステートリレーを採用(写真2)。ボリュームノブは日本が誇るALPS製、JENSENの入力トランスの横にはオーディオ愛好家の間でも人気の高い仏SOLEN製コンデンサが確認できます(写真3-4)。基本に忠実、高音質&高信頼性のために妥協を惜しまない設計思想が見て取れます。



X Logic E Signature Channelの各部を徹底解説!




『X Logic E Signature Channel』は入力時にクラシックな「JENSENカスタムトランス」を使用したプリアンプと、倍音の歪み成分を加え、サウンドに質感を与える「VHD(Variable Harmonic Drive)タイプ」のプリアンプを切り替えて選ぶことが可能です。

そして、Eシリーズから継承された『X Logic E Signature Channel』の一番の特徴とも言える、圧倒的なダイナミックサウンドを生み出すのが、「JENSENカスタムトランス」です。

「JENSENカスタムトランス」がもたらす、芯のしっかりとしたオーガニックなサウンドは、レコーディング時、ミュージシャンのダイナミックなサウンドを100パーセント引き出し、GAINを無理に持ち上げる事なく適切なサウンドレベルを保持してくれます。

JENSEN社は、SSL社の為に、トランスクオリティーはそのままに、コンソールや1Uラックに収められるような小さなサイズのトランスを特別に作りました。
この「JENSENカスタムトランス」は、『SL4000E』と『X Logic E Signature Channel』にしか搭載されておらず、残念ながら、先頃、生産が完了しました。
今後、他の製品に搭載されることも無いとのことです。


LESSとMORE(スレショルド)のシンプルなコントロールから生み出されるコンプレッションの強い“4000E”伝統のサウンド。

特にドラムのアンビエントマイク等に掛ける事により独特の空気感を生み出す事が出来ます。

元来、この「ListenMicコンプレッサー」は、その名の通り『SL4000E』の「TalkBackマイク用コンプレッサー」です。
当時ロンドンのタウンハウススタジオでレコーディング中の有名なロックバンドのドラムの上に吊るされていたTalkBackマイクに、たまたま飛び込んでしまったドラムサウンドが発端と言われています。
その“パンチ感のあるコンプレッションの強い”ドラムサウンドは、当時求められていたサウンドと相性が良かった事から、即レコーディングに採用され、「時代の音」がここに生まれました。
その後、タウンハウススタジオは、その『SL4000E』 のプリアンプの後段に「ListenMicコンプレッサー」の回線を取り付けた改造を施し、一躍話題になりました。
そしてその改造は、後期『SL4000E』の標準カスタム装備となったのです。
「L-COMP」は、70年代から活躍してきたロック系バンドが好んで使用し、そして現在もレコーディング時のスパイスとして使われ続けています。

『X Logic E Signature Channel』でしか成し得ない「JENSENトランス」と「L-COMP」を組み合わせた極太サウンド。
必聴です。


SSLコンソールには年代、モデルにより4種類のEQがあります。それぞれは「低域ノブのキャップの色」で区別されており、かかり具合やQカーブが異なります。
1970年代に発売された初期型の『SL4000E』と『X Logic E Signature Channel』のみに搭載されている『BROWN KNOB EQ』も低域ノブキャップの“茶色”が呼称の由来となっています。

※『X Logic E Signature Channel』は初期:02型「BROWN KNOB」と後期:242型「BLACK KNOB」と切り替えが可能です。

この「BROWN KNOB EQ」は「BLACK KNOB EQ」よりも“Q幅が狭い為、効きが良く”、「BROWN KNOB:15dB」に対し「BLACKKNOB:18dB」とGAINは低いもののQ幅が狭い分、積極的な音作りが可能です。
入力時、この「BROWN KNOB EQ」で音が作り込めることにより、レコーディングの幅、効率は飛躍的に向上し、より音楽的なミキシングが可能となりました。

余談ですが、『SL4000G』の発売初期には、「BROWN KNOB EQ」をどうしても使いたいが為に、半分のチャンネルをGタイプ(292型YELLOW KNOB)EQ、もう半分を「BROWN KNOB EQ」というカスタムオーダーされるケースも多かったとの事です。
そして、現在ではメンテナンスの行き届いた『SL4000E』コンソールも少なくなり、こちらの「BROWN KNOB EQ」のサウンドを得ることも難しくなってきました。
そしてこの「BROWN KNOB EQ」を唯一搭載しているアウトボードが、『XLogic E Signature Channel』なのです。


忠実な復刻を受け、再来したあの時代の伝説的サウンド。

そして、今、また、再び伝説となる。

SSL社、不滅の“Eサウンド”を内包する名品、

『Solid State Logic / XLogic E Signature Channel』。





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