数多くのハンドメイド・ギターブランドが存在し群雄割拠の相を成す今日、音楽シーンやギタリストの要求も多様化し様々なデザインや機能、そしてサウンドが求められております。当店で取り扱う商品のなかでも一際シンプルで高品位、何よりも「道具」としての完成度をストイックに追求し続ける現場主義のブランドがあります。その名はSadowsky。たくさんのミュージシャンが訪れ、ライブハウスでのギグやナイトクラブでのディナーショウ、そしてレコーディングが夜毎行われる大都会ニューヨークの地でクライアントである多くのトップアーティストに指名を受け、信頼される工房としてオーダーモデルの製作やリペアなどのクラフトワークを続けております。

Sadowskyブランドを生み育てたのはRoger Sadowsky氏。氏のクラフト経験はアコースティックギターの製作に始まり、エレクトリックギターやベースといったソリッドボディ楽器のみならずチェロやヴァイオリンといった弦楽器を含めたさまざまな楽器のリペアや改造を経て1979年、ブロードウェイに自身のショップをオープンするに至ります。現場に最も近い位置でアーティスト達の意見を聞き、形にすることを生業としてきた氏の「例えエレクトリックギター/ベースであっても生音がすべて。」という言葉に込められた情熱の一端をご紹介させていただきます。


Roger Sadowsky氏プロフィール
カスタムギター/ベースブランドとして高い評価を得、すでに高名な一流ブランドであるSadowsky。その熟練の腕前とトップアーティスト達からの厚い信頼によりSadowskyブランドを生み育てたRoger Sadowsky氏の楽器製作に対する熱い思いをより深く知っていただけるように、氏のプロフィールをご紹介したいと思います
1949年ニューヨーク州ブロンクスにて会計士の父と秘書の母の間に生まれた彼は当時ニューヨークのいたるところで開催されていたフォークフェスティバルに足繁く通いつめ、楽器に触れる機会を持つこととなりました。音楽を愛しながらも学業の道に進んだ彼はニューヨーク州立大学にて動物行動学の研究者を目指したのですが、やはりギター製作への夢が捨てきれずに中退。一年の時間を費やして世界各地のギター製作者達に向け弟子入りを志願する旨の手紙を送り続けたのですが、残念ながら良い返事は一通として来る事がありませんでした。

23歳となった彼はニュージャージー州のミュージックストアでセールスマンとしての職を得ることとなりました。(そのショップはメインサイドでは「床屋」を営みながら裏手で「楽器店」として営業していたそうです。日本では考えられない営業スタイルですね。もしくは「時代」だったのでしょうか・・・。)そのストアでは LoPrinzi と銘打たれた手工ギターの製作を行っており、ギター製作者を目指す彼はセールスマンとして入社したにもかかわらずその情熱を打ち明け、 LoPrinzi において5番目の弟子として修行を積むこととなりました。

僅か二年間という短期間でしたが、様々な木素材の見極め方やその組み合わせ、接着や塗装、細部の仕上げ等総合的な技術から完成時のサウンドの相関関係まで、アコースティックギター製作者としての基本を習得することとなります。
リペア技術の向上を目指し、壊れた部分を直すだけではなく楽器本来の良さを自分の手で甦らせる仕事をしたいとの思いから、1974年にフィラデルフィア界隈において高度なリペア技術により高い評判を得ていた Medley Music に移りました。
そこで彼はエレクトリックギターやベースのみならずバイオリンやチェロといった弦楽器全般とも言える様々な楽器のリペアや再生、そしてモディファイなど、後に彼が「貴重な財産」と語る数多くの経験を5年に渡って積み上げ、彼の技術をより確かなものへと導きました。

やがて彼のクライアントのあるミュージシャンが成功を収めニューヨークの地で活動することとなるのですが、頼れるリペアショップが見つからないと二週間に一度、100km以上も遠く離れたフィラデルフィアの彼の元へメンテナンスに訪れ、またそのミュージシャンのニューヨークでの活躍において彼がメンテナンスを施した楽器が話題になり徐々に彼の名が評判になりました。遠いニューヨークからの持込があまりに多かったため、彼は毎週末ニューヨークに出掛けては友人のアパートで出張リペアをこなすといった生活を半年に渡って続け、1979年9月ついにニューヨークはマンハッタン、ブロードウェイに自らのリペアワークショップである Sadowsky NYC を立ち上げました。

非常に高い評価を受けていたリペアやカスタマイジングを続けていた彼が手掛けた仕事の中で最も有名なものは、M.Miller が愛用し、その後のアクティブベースの指標となった70's JBと言えるでしょう。極限まで精密にセッティングされたフレットワークによる低い弦高、よりパーカッシブなアタックを実現するバダスブリッジ、そしてその生音を生かし出力する開発されたばかりのプリアンプを搭載し、ナチュラルフィニッシュボディにオーバーサイズピックガードを廃したメイプル指板のJB・・・現在では定番の仕様とも言えるこのタイプは彼の「仕事道具へのこだわり」から生まれたといっても過言ではないでしょう。

数多くの楽器を手掛けながら、同仕様のカスタマイジングを施しても量産品ゆえのばらつきにより彼の納得するクオリティを出せないケースがあり、やはり生音のクオリティこそが楽器のクオリティであると感じた彼は、極上の木材と経験に培われたスキルをもって、 Sadowsky NYC のロゴを冠したオリジナルモデルを遂に製作することとなりました。 多くのクライアントが彼の作品を絶賛し、そのそして現在に至るまで小規模工房のスタイルで製作を続けており、J.Hall 、W.Lee を含む多数のトップアーティストから高い評価を受け、数多くの Sadowsky が第一線で愛用され続けております。







後記。
「徒弟制度の中に自分を置いたけど、一番の師匠は誰かと聞かれたら、クライアントやミュージシャンであると答える。」と語るRoger Sadowsky氏。手にとって弾いてみるとあくまでも楽器はプレイヤーのためにあるとの氏の哲学が感じられる完成度であり、木材の声とも言えそうな生鳴りに胸打たれることでしょう。
現場主義という言葉が最も似合う Sadowsky。ぜひ一度、手にとってお試し下さい。






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