あれは今を遡ること7年ちょっと・・・。ローランド・Vアコーディオンのポテンシャルを引き出す次世代アコーディオン・プレイヤーの登竜門、第三回Vアコーディオン・コンテストの日本予選。見事最優秀賞を獲得し、イタリア行きの切符を手に入れたのは、昨年の大ヒットTVドラマ主題歌で現在大ブレイク中の小春さん(チャラン・ポ・ランタン)でした。
第三回Vアコーディオンコンテスト日本予選の様子はこちら>>
そしてその場でVアコを熟知した、印象的な演奏を披露したエントリーNo.6の男性。30の手習いとしてアコーディオンを始めたばかりだったその人は、後にボタンアコーディオン・プレイヤーとして、cobaさん主催のアコーディオンの祭典「Bellows Lovers Night(名古屋・2010年)」でのステージにも立ちました。
今、その方がVアコーディオン最新モデル「FR-4x」の開発者としてこの場にいらっしゃいます。
当時は別部門(電子ピアノ)開発に携わっていたものの、アコーディオン好きが高じて同コンテストに一般枠で応募されたとの事です。当初ローランド・Vアコーディオンはヨーロッパで企画・開発が行われておりましたが、開発拠点が日本国内に移ってからの熱烈なラブコールが実り、今回のモデルより晴れてVアコーディオンの開発担当となったそうです。

今回、そんなアコーディオン愛に溢れたエンジニア、ローランド第3開発部の松本敬介さんに新製品「FR-4x」についてお話をお伺いしました。

開発者インタビュー/Roland V-Accordion FR-4x

鍵盤堂(以下鍵):今日は浜松よりわざわざお越し頂きありがとうございます。早速ですが、FR-4xを開発するにあたって最も重視したことは何でしょうか?

Roland松本さん(以下R):ズバリ扱い易さ、弾き易さです。例えばFR-3xでは、音色の切り替え方法や、7セグメントLED画面での操作が難しいというご指摘をいただくことがありました。今回、文字情報が表示できるディスプレイを採用や、FR-8x同様すべてのパートボタンを右手側レジスター・ボタンの上に整列配置させるなど、ハードウェアの機能向上を図りつつ、ソフトウェア側も使用頻度の高い機能やリアルタイム性の高い機能へのアクセスの行いやすいようユーザー・インターフェースを再構築したことにより、非常に扱いやすくなったかと思います。


充分な情報量を持つ液晶ディスプレイは、
現在の状況が効率的に表示されています。

充分な情報量を持つ液晶ディスプレイは、現在の状況が効率的に表示されています。

鍵:先ほどチラリと試奏させて頂いた際にも実感しました。そして何よりビックリしたのは、全体的なレスポンスの向上です。新しいFR-4xでは、FR-3xと比べてセンサーや鍵盤、音源等が新しくなっているのでしょうか?

R:センサーや鍵盤等のハードウェア面は踏襲していますが、音源やベローズのセンシング技術に調整を加え、より演奏性を向上するようにブラッシュアップしました。今回は主に再生系が大幅に向上しており、それが感覚的な面で影響しているのではないでしょうか。

鍵:再生系というと、具体的には?

R:最上位モデルであるFR-8xのサウンドに、迫力という面で近づけることを重視しました。FR-3xと同じ中型サイズの筐体ですから、内部の空間に余裕が無いため、スピーカーの搭載位置やキャビネットの容量の確保等は試行錯誤でした。基板に穴を開けたりもしましたからね(笑)。出音の改善は、開発中最も苦労しこだわったポイントですので、評価していただけたことは本当に嬉しいです。中でも重要なポイントは、ツィーターを搭載したことです。

鍵:FR-3xに比べて、高域の抜けが格段に良くなっているのはツィーターの恩恵ですね。

R:はい。更に、右手側/左手側それぞれに4バンドのスピーカーEQも搭載しています。工場出荷の時点で、搭載スピーカーの特性に最適化してはいますが、音楽のジャンルや奏法、演奏者の好みに応じてこの部分でも調整する余地を残しています。

鍵:オーディオ的な音質面での向上、ということでしょうか。でも、ベローズの動きへの追従性の良さはそれだけではないですよね。

R:はい。加えてベローズ(蛇腹)を動かす強さを音源に反映させる、ベローズ・カーブも追い込んでいます。また、この要素は演奏感に直結する部分なので、簡単に設定画面を呼び出して(Shift 7)、好みの反応に調節することができます。

鍵:なるほど。では、音源部分についてお伺いしたいのですが。

R:音源はFR-8xを継承したPBM音源を搭載しています。アコーディオン音色に関しては、以前よりVアコーディオン・プレイヤーとして有名なフランスのルドヴィック・ベイヤー氏をはじめ、北米や欧州など、世界各国のプレイヤーからの意見やデータを反映して開発されています。またFR-3xのプレミアム特典として配布された「ダラッペ」のサンプル波形も標準で搭載されているのもポイントですね。

鍵:オーケストラ音色については如何でしょうか。

R:オーケストラ音色については、電子楽器ブランドであるローランドの資産である様々な音色を、バランス良く抽出しています。大半はFR-8xを継承していますが、エスニック系の波形など、今回新たに採用されたものもありますよ。あと、 FR-3xでは出来なかった左手側のレイヤーも可能になっています。左手レジスターボタンの同時押し、これは(以前プロトタイプをチェックした際の)鍵盤堂さんのリクエストを反映した結果です。

鍵:ありがとうございます!エフェクトはリバーブ・コーラスのみとなっていますね。


オーケストラ音色の切替時にも、ちゃんと音色名が表示されます。7セグメントのLEDディスプレイのみだったFR-3xからは大きな変化です。

オーケストラ音色の切替時にも、ちゃんと音色名が表示されます。7セグメントのLEDディスプレイのみだったFR-3xからは大きな変化です。

R:ええ、FR-8xに搭載されているMFX(マルチエフェクト)は搭載されておらず、シンプルなリバーブ( ディレイ)、コーラス( モジュレーション系)エフェクトのみとなっています。ディストーション等も搭載されていないので、こうした部分は予め歪んだ状態で収録した波形等でカバーしています。

鍵:ロータリースピーカーの切替や、その他様々なエフェクトやパラメーターの切替は、基本的にはパネル上のボタンで操作する形ですよね。例えばFR-8xのチン・レジスター(顎で押すレジスタースイッチ)やマスタースイッチ(右手の手のひらで押すスイッチ)に相当するような、両手が演奏で塞がっている状態でもコントロールする方法はあるのでしょうか。

R:FC-300(MIDIフットコントローラー)をMIDI接続することで、そうした各種コントロールが可能です。またバンドで使用する場合、右手しか演奏しない場合も多いのではないでしょうか?そのような方には、FC-300を使わなくても、空いている左手で左ボタン鍵盤の一部に様々な機能を割り当ててお使いしていただくことも可能です。

鍵:なるほど。そして、MIDI端子の横には待望の「INPUT」端子が(ステレオミニジャック)!

R:いよいよVアコーディオンにも付きました!私自身、スマホ等の外部プレイヤーで再生した音源に合わせて練習することが多いのですが、今までは外部ミキサーを使用するか、USBメモリーに音源をコピーして接続するか、禁断のヘッドフォン&イヤフォン二重掛け(笑)をやるか、という状況だったので、これは便利かと思います。

鍵:単純に本体のサウンドにミックスされて出力される訳ですね。インプットボリューム等の設定はあるのでしょうか?

R:ボリュームは固定なので、再生側の機器でコントロールして頂く必要があります。一般的なプレイヤーのヘッドフォン端子からの信号に最適化されているので、困ることは無いかと思います。あと、ヘッドフォンといえば、通常は本体のヘッドフォン端子にヘッドフォンを接続すると、スピーカーからの音がミュートされるのですが、FR-4xはヘッドフォン端子を接続した状態でも、本体のスピーカーから音が出る状態が選択出来るようになっています。

鍵:演奏中にイヤモニっぽく使える訳ですね!

R:はい。モニター状況の良くない会場での演奏等で便利ですよ。

鍵:良く考えられていますね・・・!ではいよいよFR-4xの最大のトピックと言える(?)、エディターについてお伺いします。

R:FR-4xは、FR-8xに匹敵する様々なパラメーターをじっくり設定できるエディターソフトウェアが用意されています。Mac/Win対応で、発売に併せてダウンロード提供される予定です。

鍵:接続はUSBですね。

R:はい。FR-3xから進化した点として、USBメモリー端子に加え、 USB COMPUTER端子が装備されており、ここからPCに接続します。エディターのメイン画面がこちらです。ここから右手、左手それぞれのアコーディオン・セットのレジスターの設定、リード間のミュゼット・デチューン(トレモロの深さ)等、現実のアコーディオンでは困難なカスタマイズが容易に行えます。

鍵:エディット結果は随時反映されるのでしょうか。

R:ええ、シンクボタン等を押す必要は無く、随時本体のパラメーターに反映されるので、音を聴きながらじっくりエディットできます。このとき、本体のベロシティカーブを「FIXED(固定)」に設定しておけば、本体を置いたまま作業ができますね。


エディターと接続するための USB COMPUTER端子。送受信情報はUSB-MIDIのみでUSB-Audioには対応していません。INPUT端子は携帯オーディオプレイヤー等からの信号を気軽にミックス可能です。

エディターと接続するための USB COMPUTER端子。送受信情報はUSB-MIDIのみでUSB-Audioには対応していません。
INPUT端子は携帯オーディオプレイヤー等からの信号を気軽にミックス可能です。

鍵:オーケストラ音色やオルガンもここからエディットできるんですよね。

R:ええ、こちらの画面で一通りのパラメーターが変更できます。オルガンは勿論、ドローバーの抜き差しもできますよ!

鍵:iOSやアンドロイド用のエディターは・・・?

R:残念ながら現時点では用意されておりません。

鍵:判りました。では、FR-4xはどのようなユーザー層を想定していますか?

R: V-Accordion はアコーディオンの新しい楽しみ方、可能性を感じて頂ける製品かと思います。アコースティック・アコーディオン奏者の方が新しいことにチャレンジするための楽器としてもお勧めです。FR-8xほど大型の製品だと重すぎるという方にはFR-4xが最適なモデルかと思います。私もそうでしたが、初めてVアコーディオンを弾かれる方はべローイングなど、アコースティックと異なる挙動に少し違和感があるかもしれません。そんな時は、まずベローズ調整器でベローズの抵抗感を好みの重さに調整して頂いたうえで、ベローズ・カーブの設定(Shift 7)を各種試してみてください。これだけで、どんなスタイルのプレイヤーの方にとっても、きっと好みにあった「気持ち良い」設定が見つかるはずです。 様々な楽器の音が出せる、という「判り易い」デジタル・アコーディオンならではの活用法は皆様もイメージし易いかと思います。更に、様々なタイプのアコーディオンのサウンドを弾き比べたり、エディターで様々な設定を試してみたりすることで、アコーディオンという楽器をより深く理解し、自身の演奏にフィードバックできるのではないでしょうか。


レジスターボタンはA/B切替式にA/Bボタンの選択状況はディスプレイ下のLEDで確認できます。

レジスターボタンはA/B切替式にA/Bボタンの選択状況はディスプレイ下のLEDで確認できます。

鍵:素晴らしいですね!では最後に、今後の展開などあればお聞かせいただけますでしょうか。

R:まだまだ技術的に難しい部分もありますが、「ダイナミック・ベローズ・ビヘイビアー」を普及価格帯のモデルにも搭載したい、という願望はあります。勿論、アコーディオンのより精度の高いモデリング、リアリティを追求していくことも一つの使命として、継続して取り組んでいきます。同時に、より新しいこと、電子楽器としての可能性の探求も忘れてはいけません。Vアコーディオンの進化はまだまだ続きますよ!

鍵:期待しています!松本さん、今日はありがとうございました!!

-FR-4xを鍵盤堂スタッフ・安部が徹底チェック!-

まず抱えて音を出した瞬間、「全然違う!」と思わず声を上げてしまう程、FR-4xは進化していました。先のインタビューでも出てきていましたが、鍵盤やセンサー等のハード面はほぼ同じとの事ですが、この表現力は何なのでしょう。消え入る寸前の繊細なリードの震え、激しく動かした際に「グワッ」と来るピーク、どちらも思い通りに表現できるレスポンスの良さは特筆モノです。

従来モデルでは、もう少し残って欲しいのに音が止まってしまったり、割と早い段階で音量が天井に当たってしまって、「最後の一押し」が出し難い点でストレスを感じることがありました。逆に「FR-8x」は最上位モデルだけあって、ポテンシャルは全ての面で高いのですが、本体自体が大きく重い為、扱う人を選ぶようなところがあります。

FR-4xはその点中型サイズの筐体(FR-3xと同サイズ)の影響か、非常にレスポンスが良く、力の無い方でも繊細な演奏が出来る楽器という印象です。あと、蛇腹の押し引き双方のバランスが向上しており、この部分でも違和感がありません。ベローズシェイクもこれまででいちばんやり易いかも。


勿論、ボタン鍵盤のFR-4xbもラインナップ。ピアノ鍵盤に比べ領域が広いのが魅力。 チャラン・ポ・ランタンの小春さんはこのボタンタイプを弾いていますね。

勿論、ボタン鍵盤のFR-4xbもラインナップ。ピアノ鍵盤に比べ領域が広いのが魅力。
チャラン・ポ・ランタンの小春さんはこのボタンタイプを弾いていますね。

ツィーターが装備され、音抜けの良さが向上したこと、ベロシティカーブの絶妙な設定、その他様々な要素が全て相互に作用した結果、この「弾き易さ」に結実しているのではないでしょうか。
音色面・演奏面以外でも様々な部分に進化が見て取れます。従来のVアコーディオン、様々な部分が色々な意味で「イタリアン」だったんです。独特のメニューからの階層構造や各種ボタンの操作性、イタリア語から直訳した印象の取説等・・・。今回、松本さんがこうした部分に深く関わることで、至る所に細やかな気配りが行き届いているユーザーインターフェイスに刷新されています。勿論、従来モデルの操作に慣れた方にとっては最初は違和感あるかと思いますが、すぐに新しい操作感の良さを感じていただけると思います。 開発拠点が日本に移り、開発スタッフのアコーディオン・プレイヤーとしての情熱が結実した一台。

Vアコーディオンは、遂に「感情を表現できる楽器」になりました。

FR-4X RD

FR-4X BK

FR-4Xb RD

FR-4Xb BK

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