日本で最も有名な某アコーディオンプレイヤーをして「世界は広い」と言わしめた、フランスのボタンアコーディオンプレイヤー「ルドヴィック・ベイヤー」氏に直撃インタビューを敢行!ハービー・ハンコックやジェームスカーター等の一流ミュージシャンとも競演する世界的プレイヤーが語り出した「ボタンアコーディオン」の魅力とは?Vアコーディオンの生みの親「ルイージ・ブルーティ」氏も交えてお話しを伺いました。
●鍵盤堂:
 アコーディオンを始められたきっかけは?


■Ludovic Beier:

 私の父親がアコーディオンプレイヤーだったこともあり、幼いころから小さなキーボードを弾いて遊んでいました。そして学校に入る時に、何か習う楽器を選ぶことになったため、父も演奏しているアコーディオンを始めることにしたのです。


●鍵盤堂:
なるほど。その後は専門の学校に進まれたのでしょうか?


■Ludovic Beier:
 非常に長い話になります。まずは先生に付いて、クラシック音楽を習い始めました。また、アコーディオン・オーケストラにも入り、大勢のアコーディオンでの合奏を経験しました。そして10歳の頃、オランダで開催されたアコーディオン・オーケストラの大会で、私は2位で表彰されました。10歳という年齢での受賞は極めて稀なケースだったと思います。その後、アコーディオン・オーケストラと並行して、フレンチ・フォークミュージックのバンドでの活動も始めました。クラシック音楽は楽譜の通りに演奏しなくてはならず、窮屈に感じる様になったからです。ですから、その後ジャズを始めたのは自然な流れでした。ジャズならば自由にインプロビゼイションを行うことが出来るため、非常に楽しいものでした。更に、ジャズの先生からの「よりジャンルに捉われない幅広い音楽を経験した方が良い」、というアドバイスに従い、ジプシーミュージック、ジャンゴの世界に身を投じたのです。様々なキャラバンに入って演奏し、様々なスタイルを培ってきました。これはまだ序の口です(笑)



インタビューの間も、時折愛器「FR-7b」のボタンを凄いスピードで無意識(?)に演奏するベイヤーさん。
●鍵盤堂:
 確かに長い話になりそうですね(笑)。


■Ludovic Beier:
 既に15歳の時に最初のCDを録音していましたが、20歳の頃、演奏のプロとしての活動を始め、2001年にはプロとして初のCDをリリースしました。また、セッションミュージシャンとして、様々なレコーディングに参加し、様々なアーティストとの仕事をこなしていきました。こうしたセッションは特にアメリカからの依頼が多く、ハービー・ハンコックやジェームス・カーターといった大物アーティストのレコーディングにも参加して経験を積んでいきました。そして2006年には、様々なジャズ界の大物ミュージシャンと共に、カーネギーホールでのコンサートを成功させることができたのです。その後はアメリカを拠点にジャズミュージシャンとして活動する傍ら、ローランドのVアコーディオンの開発やプロモーションに携わっています。


●鍵盤堂:
 なるほど。では、今はアメリカにお住まいなのですか?


■Ludovic Beier:
 いえ、フランスに住んでいます。ですからアメリカとは何度も往復していますね。


●鍵盤堂:
 話は少し戻りますが、アコーディオンにはボタンタイプと鍵盤タイプがありますよね。ベイヤーさんがアコーディオンを始めるときに選択肢は用意されていたのでしょうか?そうだとしたら、ボタンタイプを選ばれた理由は何なのでしょうか?


■Ludovic Beier:
 (笑)その答えはシンプルですよ。私の母国フランスでアコーディオンを習おうと思ったら、ボタンの他に選択の余地が無かったからなのです。こうした地域では、恐らく95%がボタンタイプのアコーディオンを使っていますし、楽器店に行ってもボタンタイプしか並んでいないのです。ですから、一般的にはアコーディオンといえばボタンを演奏する楽器、という認識なんですよね。


●鍵盤堂:
 95%も!日本ではピアノ鍵盤タイプが一般的であり、ボタンタイプは少数派な、非常に変った楽器であるという認識なのですが、本場では全く異なるのですね。


■Ludovic Beier:
 うーん(苦笑)


●鍵盤堂:
 ベイヤーさんにとってボタンタイプのアコーディオンは非常に自然なものであり、何故ボタンを選んだのか、という疑問すらこれまで感じたことが無いのかもしれませんね。



1977年のアコーディオン・ワールドチャンピオンにしてVアコーディオン開発責任者ルイジ・ブルーティさん(右)とベイヤーさん(左)
■Ludovic Beier:
 そうかもしれませんね。私にとってはピアノ鍵盤タイプの方が普通じゃない楽器に見えますよ(笑)。アコーディオンの歴史を辿ると、黎明期のダイアトニックアコーディオン(同じキーでも蛇腹の押し引きで音程が異なる)の頃から、ボタンタイプのキーが使われていました。その後ダイアトニックアコーディオンは、蛇腹の押し引きに関わらず同じ音程で演奏できる、より簡単なクロマチックアコーディオンに進化していったのです。その過程から見ても、ボタンタイプのアコーディオンの方が本来の姿なのです。その後、何処かの誰かがこちらの方が弾き易いだろうとピアノタイプの鍵盤を取り付けてしまったのですね(笑)。とにかく、スィングやミュゼットを初めとする、フランスの伝統的な楽曲は、ボタンアコーディオンを演奏する作曲家によって、ボタンアコーディオンでの演奏を前提に作られています。ですから、私達にとってはボタンタイプのアコーディオンは非常に自然なものなのです。


●鍵盤堂:
 なるほど。ボタンタイプこそが本来のアコーディオンであると。ルイジさん、その点については如何でしょう?(と、インタビューに同席していたローランド・Vアコーディオン開発責任者のルイジ・ブルーティ氏に尋ねてみます。彼はピアノ鍵盤タイプのアコーディオンプレイヤーなのです)


◆Luigi Bruti:
 (笑)確かに彼の言うとおり、歴史的にもボタンタイプの方が古く、その後ピアノ鍵盤にアレンジされたというのは事実です。実際、ボタンタイプの方がピアノ鍵盤タイプより優れている点が多く存在します。一番大きなアドバンテージは音域です。同じ横幅ならば、ピアノ鍵盤タイプよりもボタンタイプの方がキーが密集しているため、より幅広い音域を組み込むことが可能なのです。また、幅広い音域に渡って早いパッセージを演奏する場合など、演奏する音楽によっては、ボタンタイプの方が適している場合があります。また、歌の伴奏などなら、ギターと同じくキーによって運指が変わらないため、移調が容易なのです。


●鍵盤堂:

 ルイジさん、ありがとうございました。それではベイヤーさんに戻ります。先ほどの演奏を拝見して、ただただその指使いの正確さとスピードに圧倒されました。率直な感想として、これまでに見たどんなプレイヤーの指使いよりも速かった様に思います。こうした演奏のために、何か特別な練習などを行っていらっしゃるのですか?


■Ludovic Beier:
 他の楽器と同様に、基本的な演奏テクニックというものは存在します。ボタンのポジションを覚えたり、スケールを理解したり、そのフレーズを演奏するためにどういう指使いで演奏するかを考えるなど、こうした基礎と言える演奏テクニックはまず習得しなくてはなりません。その上で、自分自身のスタイルを見出し、確立していくことが重要です。ピアノは単純に横方向の動きで音の高低を移動しますが、ボタンアコーディオンは縦方向の並びでも音の高低が変化します。また、ピアノ鍵盤に比べて各音は非常に隣接しており、少ない手の動きでダイナミックなパッセージを演奏することができます。また、キーのストロークが短いため連打性にも優れています。こうしたボタンアコーディオンならではの表現力の可能性を活かしながら、自分だけのスタイル、テクニックを確立していかなくてはなりません。


●鍵盤堂:

 他の楽器にも通じることですね。基礎をしっかり身に付け、その楽器の表現力を最大限に引き出す努力。こうした結果が先ほどの超絶テクニックに繋がっていくのですね。
さて、そろそろVアコーディオンについてお聞きしたいと思います。アコースティック楽器と変わらぬ滑らかな演奏、そしてVアコーディオンならではの音色など、完璧にVアコーディオンを使いこなしていらっしゃいますが、最初にこの「デジタル・アコーディオン」に触れたとき、アコースティック・アコーディオンと比較して感じたことはありましたか?


■Ludovic Beier:
 まず、Vアコーディオンとアコースティック・アコーディオンを厳密に比較しない方が良いと思います。私にとっては、この2つは異なる楽器だと捉えています。アコースティック・アコーディオンはバイオリン等と同じく伝統的な楽器であり、トラディショナルな音楽を演奏するときに無くてはならない存在です。逆に、Vアコーディオンはデジタルならではのメリットが沢山存在します。様々な音色で演奏できるだけでなく、自分自身のサウンドを作り出すこともできる、ということはどんなジャンルの音楽でも演奏できることを意味しています。つまり、非常に限られた音楽にしか対応できなかったアコースティックアコーディオンの制約を、全て取り払って自由に演奏できる楽器である、というのが私にとってのVアコーディオンなのです。更に、Vアコーディオンはプラグを挿すだけでマイクを立てる必要もハウリングの心配も無く、大音量で他の楽器と一緒にステージで演奏することが出来るのも大きなメリットです。
 ですから、アコースティックアコーディオンとVアコーディオンのそれぞれを独立した楽器として使い分ける様なスタイルを、これからのアコーディオンプレイヤーにオススメしたいですね。


「ステージ仕様」の軽量モデル「FR-2」は、初心者の方にも嬉しいレッスン機能を搭載!Vアコーディオンがますます身近な存在に。
■FR-2(ピアノ鍵盤タイプ)
■FR-2b(ボタンタイプ)
●鍵盤堂:
 では、Vアコーディオンの最新モデルであるFR-2についてお伺いします。演奏家としての視点で、こちらのモデルのオススメなポイントなどを教えていただけますか?


■Ludovic Beier:
 FR-2はステージ用の楽器です。まず重量が軽く、ボタンには暗いステージでも便利なイルミネーションが付いています。サウンドクオリティはFR-7譲りの非常に高品質なものが内蔵されていますから、決して劣るものではありません。更に、ドラム音源が内蔵されており、ベースパートとリンクして鳴らしたり、パッドを叩いて演奏したりループを組むことも可能です。更に、新しくストリングス系のサウンドも追加されており、非常に使い勝手が良いですね。また、透明な板を外せば中のグラフィックを自由に自分で作ったものに交換できるのも面白いです。


●鍵盤堂:
 従来でも、ソロバイオリンの音は収録されていましたが、新しく収録されたストリングスセクションが良い、という事ですね?


■Ludovic Beier:
 ええ、このオーケストラ系のストリングスセクションのことです。これは、私達からのリクエストによって追加されたのです。


●鍵盤堂:
 FR-2にはスピーカーが内蔵されておりませんが、この点については如何でしょう?


◆Luigi Bruti:
 代わって私がお答えします。私達は、FR-2をより小さく、軽くハンドリングし易い楽器にするためにスピーカーとアンプを内蔵しないことにしました。小さくて軽い再生装置を内蔵することも技術的には不可能ではありませんが、こうした小さなスピーカーではベースパートの豊かな低音まで再生することは出来ません。音響面で妥協して、折角の楽器がオモチャの様な音質となってしまうことは、FR-7と直系の音源を持つFR-2にとって許容できるものではありませんでした。このため、Vアコーディオンの高品質なイメージとクオリティを損ねないためにも、スピーカーの内蔵を見送ったのです。その代わり、FR-2の音質を最大限に活かしつつ、家庭や学校で演奏するために、私達はCM-30(キーボード用アンプ内蔵スピーカー)とのコンビネーションを初心者の方に推奨しています。更にステージで大きな音量を必要とする方には、SAシリーズやKCシリーズ等のキーボードアンプもお使い頂けますし、更にプロフェッショナルなステージではワイヤレスシステムの使用やPAシステムにDIボックスを介して送り出すことに関しても全く問題ありません。こうしたステージでの用途に内蔵スピーカーは必要ありませんから、クオリティを維持しつつ価格と重量を低く抑えるために、FR-2の仕様が決定されました。
 もちろん、ストリートミュージシャンにとっては共に電池駆動が可能な点で、CUBE StreetMOBILE CUBEとの組み合わせが最適でしょう。


●鍵盤堂:

 では、FR-2のオススメのレジストレーション(音色のセッティング)を紹介して頂けますか?


■Ludovic Beier:
 例えば、左手ベースでウッドベースの音とパーカッションサウンドをリンクさせてみると・・・


●鍵盤堂:
 おぉ!ウッドベースとライドシンバルが同時に鳴って、スタンダード・ジャズっぽいですね!
 では、ボタンアコーディオンをまず始めるとき、どんな所から始めると良いでしょうか?


■Ludovic Beier:
 OK。まず、ミッキーマウスは知ってますよね?ボタンの3つをあの有名なネズミのキャラクターの顔と耳に見立ててください。この3つを繰り返して・・・ファ(休符)レミ(休符)レ・・・これを繰り返して・・・


●鍵盤堂:
 (たどたどしく、ネズミ型の3音を繰り返し演奏)


■Ludovic Beier:
 これで、さっきの左手ベース(ウッドベース&ライドシンバル)のこことここを交互に・・・ソ(休符)、レ(休符)・・・重ねていけば・・・


●鍵盤堂:
 おぉぉ!


■Ludovic Beier:
 Yes!ボタンアコーディオンを演奏できますね!更に、こうすればドラムを演奏できます(左手ボタン奥のパッドにドラムをアサイン)。そしてループを組んで・・・(リズムループが流れる)
そして、怒涛のデモ演奏が開始。


●鍵盤堂:
 素晴らしい表現力ですね!では、最後の質問です。これからボタンアコーディオンを始めてみたいと思っている方にメッセージを頂けますか?


■Ludovic Beier:
 Play!Play!Play!(笑)・・・とにかく練習することですね!
 ボタンタイプは日本の方にとってもとても面白く、挑戦しがいのある楽器だと思います。もし、これからアコーディオンを新たに始めるのであれば、ボタンタイプを是非オススメします。ボタンタイプを習得した方が、アコーディオン本来の演奏表現を含め、幅広い世界が広がるのではないでしょうか。もし、既にピアノ鍵盤に慣れ親しんだ方であれば、ピアノ鍵盤タイプのアコーディオンでも良いでしょう。こちらならば、今までの演奏テクニックがそのまま使えて、アコーディオンならではの音色や表現力を手軽に取り入れることができますから。


●鍵盤堂:
 ありがとうございました!


ルドヴィック・ベイヤー

パリ在住、アコーディオニストとして高い評価を受け、同時に作曲・アレンジまたプロデューサーとしても活躍。1978年に生まれ、8歳でステージデビューを果たす。15歳にはアコーディオン界有数の合奏団に参加、スタジオ収録アルバムもリリース。同時にパリ郊外のポントワーズ地方を中心に様々なダンスショーで演奏を始める。その後も様々なコンクールで受賞し、独自のオーケストラを結成、フランスのみならず海外でも演奏活動を行う。また、彼名義のフレンチジャズ・ユニット”Ludovic Beier Quartet”で活動する傍ら、ヨーロッパ各地の著名なフェスティバルやクラブ・パフォーマンスに加え、米国で開催されたジャンゴ・ラインハルト・フェスティバル、最近ではモントリオール国際ジャズフェスティバルへも出演。そして、かのカーネギーホールにおいて、巨匠トゥーツ・シールマンス、ハービー・ハンコック、イヴァン・リンスやイリアーヌらトップ・ミュージシャンとの競演など、精力的に活動中。




2008年3月、ドイツ・フランクフルトで開催された「Musikmesse 08」期間中、近隣のオフェンバック市内で行われたローランド主催のイベント「Night of the Keys II」会場に当店スタッフが潜入!
ベイヤーさんは「ゴダイゴ」のドラマー、トミー・スナイダー氏の「ハンドソニック」とのデュオで、愛機「FR-7b」を手に登場。たった2人から生み出されるとは思えない、緩急自在の流麗なスタンダードJAZZナンバーで、満員の観客の耳は釘付け。
司会者や客席から次々に寄せられる「ムチャ振り」なリクエストにも涼しい顔でサラリと応える芸達者ぶりでも、会場を沸かせていました。
続いては、有名アコーディオン奏者「セルジオ・スカッピーニ」氏の愛弟子「マリウス・コンスタンチン」君がピアノ鍵盤タイプのVアコーディオン「FR-2」を演奏。
年齢わずか12歳、まだまだ粗削りながら確かなテクニックと大人達の中でも全く物怖じしないキャラクター。将来が楽しみなプレイヤーです。
そして、17歳のボタン・アコーディオン奏者「マリオ・ダマリオ」君。端正な顔立ちで女性ファンからの人気も期待できそうな彼は、新製品「FR-2b」のパーカッション音源+ループ機能をも駆使した素晴らしいソロ・パフォーマンスを披露。

そして最後には、曲の途中でVアコーディオンの左右の向きを入れ替えて(!)、何事も無かったかの様に演奏を続けます。



そして、Prof. Burkard Schliessmann氏による電子チェンバロ「C-30」のデモ演奏。繊細なチェンバロの音色が大音量でホールに響き渡る姿は非常に新鮮でした。
当日の司会は、自身もピアノの新製品「RG-1」のデモンストレーターも兼任していたドイツで人気の超絶技巧ピアニストJoja Wendt氏。

その軽妙な語り口は口を開く度に会場に爆笑の渦を起こしていました。
ドイツ語が判らない観客のために、英語で話し始めるのですが、途中でいつの間にかドイツ語になっていたり・・・といった細かなネタも沢山。
「クラシック音楽のコンサート」のちょっと「お堅い」イメージとは正反対(?)の、非常に充実したエンターテインメント性溢れる一夜でした!



フランクフルト市内で開催された「Musikmesse」会場でも、ベイヤーさん&Vアコーディオンは注目の的!


終演後にベイヤーさんと再会。お疲れさまでした!

Rolandブースにて、FR-7bでのデモ演奏中のベイヤーさん。V-DrumsとステージピアノRD-700GXとのアンサンブル「V-Accordion Trio」!



ブース内に展示されていた、FR-2bのスペシャルモデル!残念ながら非売品です。
少し離れたアコースティック楽器中心の「ホール3」にも、様々なアコーディオンブランドのブースに混じって「V-Accordion」ブースが。脅威の少年ボタン・アコーディオニスト「マリオ・ダマリオ」君のデモもご覧の人だかり!


■予告編■

レポートを公開しました!
詳しくはコチラ



ルイージブルーティさんインタビューはコチラ
マルカートさんインタビューはコチラ



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