フェンダー・カスタムショップ マスタービルダー競演!60(61)ストラトキャスター徹底比較!!

はじめに
フェンダー・カスタムショップの最高峰、マスタービルダーシリーズの魅力は、厳選された木材、造り込みの良さなどからの完成度の高さもありますが、各ビルダーの個性が製品に反映されるあたりも、好きな方には堪らないのではないかと思います。

マスタービルダー達は自分の思い描くサウンドを具体化する為に、その方向性に沿ってベストな材を選び、組上げやセッティングに気を使う事で、理想の響きを持ったギターを完成させます。そこで同じような仕様のギターを各ビルダーにオーダーすると、どのような「違い」が出るのだろう?という思いからこの企画がスタートしました。

まず基本となるモデルは、ストラトの中では定番中の定番であるスラブボードのサンバーストを選び、ある意味では作り手によって個性の出易いスペックのギターではないかと思い、何名かのビルダーに同様なスペックでのオーダーを依頼しました。ギター製作に精通したビルダー達ですので、好みやクセなどによって、見た目は同様でも出力されるサウンドは様々なトーンを奏でてくれるのではないかと思います。

スペックはオーソドックスなスラブボードのサンバースト・ストラトとし、仕上げもルックス的な差は出辛いようにNOSとしました。ピックアップにはビルダーの理想とするサウンドを出力し易いように、Abbyのハンドワイアードのピックアップをセレクトしております。
ウッドマテリアルは、ボディー材にはビルダーセレクトのアルダー材を、ネック材には木目の通りの良いメイプル材にスラブのローズウッド指板とし、あえて細かな指定は入れずにビルダーの意思を反映させ易いようにしております。

最後に、これらのギターがプレイヤーの方の手に渡り、弾き込んで頂きたいと思い、演奏性等を考慮し指板Rを9.5Rでミッドジャンボのフレットという、ヴィンテージタイプよりも弾き易いスペックになっております。


※共通仕様

■Body : Selected Alder 2pc
■Neck : Straight Grain Maple、Oval C-Shape
■Fingerboad : Rosewood / 9.5R Mid-Jumbo Frets
■Pickups : Abby’s Special Single-Coil Pickups
■Controls : 5Way
■Bridge : Vintage Synchronized Tremolo
■Hardware : Nickel/Chrome
■Finish : Thin Lacquer (3Color Sunburst)


弾き比べ
今回、このストラトを製作して頂いたのは、Yuriy ShishkovTodd KrauseChris FlemingGreg Fessler、この4人です。
いずれもギター製作には定評のある、日本でもお馴染のビルダーたちです。

まずこのギターたちを弾いて思うのは、どのギターを弾いても上質なタッチ感を持ち、しっかりとボディーが鳴る感覚を持っている事です。ただ、その響きの傾向やアンプを通した時のサウンド傾向にそれぞれのギターに個性が有り、一本として同じ物は無い!と言える個性を発揮している事がビルダー物の凄みではないかと思います。
サウンドの感覚を言葉で表すのは非常に難しいのですが、大まかに検証すると、スラブネック、アルダーボディーのストラトでは、ヴィンテージ風の枯れた感じと野太く力強さのバランス、そして立ち上がりの良い切れ味と豊かで大振りなヴァイブレーションのバランス、それぞれをどのあたりにポイントを持っていくかでサウンド傾向が決まってくるのではないかと思います。弾き比べる時に使う試奏用のアンプにはアンプの癖が出過ぎないよう、あえて高価なものは選ばず、比較的にスタジオなどでも見かける事の多い物、そしてフェンダーギターの試奏にはフェンダーアンプのリクエストも多い事から、Twin AMP を選びました。
それぞれのストラトを弾き比べるのに、まず分かり易いところでパワー感を比べてみると、やや抑え目で枯れた傾向の造りに持って行ったのがユーリです。特にユーリのストラトは柔らかくしなやかなヴィンテージ風の響きを持っており、ヴィンテージテイストのギターを造らせると「上手い!」と思わせますが、パワー感はやや抑え目です。

これに対しパワフル目なサウンドに持って行ったのがトッドとクリスです。まずはトッドのストラトですが、野太く締まったサウンド傾向から、深めのドライブでも芯の残るコシの強さを持ち、伸びやかなトーンが気持ちの良いギターです。グレッグのストラトは、低域からグッとくる力強さを持っているのですが、ハイの抜けや立ち上がりの良さをも併せ持ち、存在感が際立つサウンドではないかと思います。
また、クリスのストラトは中庸なパワー感ですが、音の響きが大振りでヴァイブレーションを感じさせるワイルドな響きですので、出力の割にはパワフルに聞こえる元気なヴィンテージ風のサウンドです。

クリアーで澄んだ感触ではトッドで、グレッグはクリアーな傾向ですが、澄んだというよりも少し暖かめな感じです。ユーリやクリスは、広がりのあるヴァイブレーションの大振りな響きにこなれた感触が有り、ワイルドに暴れる傾向ではないかと思います。
 
かなり個人的な独断と偏見での意見となりますが、それぞれのストラトにドライブ系のエフェクターを合わせるとしたら、ユーリのはオーバードライブ系でクランチサウンドが似合うような気がします。ユーリには軽めな歪でピッキングのタッチでクリアーからドライブまで表現できるような音色をセッティングしてやり、グレッグやトッドにはディストーション系で深めのドライブサウンドを鳴らしてみたくなります。深めのドライブでも音の粒立ちが残るシンの強さが有りますので、グレッグにはグイグイと押し出すかのような豪快なサウンドに、トッドではシルキーな目の細かさと煌びやかな明るさを持たせたドライブサウンドが心地良いかと思います。

クリスには目の粗いファズ系でワイルドなサウンドに持っていき、豪快にガンガンと弾きまくるのが良いのではないでしょうか。
 
また、ルックス的なところで、サンバーストの感じも微妙に違う所も面白いです。このあたりは意図したものかタマタマこうなったのかは解りませんが、ユーリは黒い部分が太く赤味も濃い感じで、クリスは黒い部分は普通ぐらいですが赤味が強く中心の黄色味もややダークな感じです。トッドとグレッグはクリスよりもほんの少し鮮やかな感じです。
まじまじと見比べるとこのあたりも面白いですね。
   
Built by Yuriy Shishkov Built by Todd Krause
   
Built by Chris Fleming Built by Greg Fessler
 
パッと見た目は同じ様なルックスで、基本的なサウンド傾向はローズ指板、アルダーボディーのストラトではありますが、同じアンプで弾き比べていると違いがマジマジとわかります。全てにそれぞれの個性が有り魅力的なので、どれが良いとはなかなか決められませんが、弾き手の個性や演奏する音楽の方向性などで、「好き」や「嫌い」というのが出てくると思います。
もちろん同じビルダーが同じ様な仕様で製作したギターが全て同じ音がする訳では無く、ギターを製作する時のビルダーの考えやオーダーの方向性などでサウンド傾向も変わってきますが、今回仕上がったストラトでは、各ビルダーの個性が良く出ていたのではないかと思います。近年では日本でも目にする事の多くなったビルダー物ですが、それでも製作本数は少なく、一本物の個性的なギターも数多く有りますので、ビルダー物選びの参考になれば幸いです。
   
Built by Yuriy Shishkov Built by Todd Krause
   
Built by Chris Fleming Built by Greg Fessler
いずれも甲乙つけ難い、グッと目の詰まった9.5ラジアス、スラブ貼りのローズウッドフィンガーボード。
   
Built by Yuriy Shishkov Built by Todd Krause
   
Built by Chris Fleming Built by Greg Fessler
 
   
Built by Yuriy Shishkov Built by Todd Krause
   
Built by Chris Fleming Built by Greg Fessler
 
「Neck: Straight Grain Maple」という指定通りの木目の真っ直ぐなメイプルネック。グレッグのモデルにいたってはドンズバクオーターソーンで裁断されております。塗装はクリス製作の1本のみ艶の有る仕上げで、他3本は艶が僅かに抑えてあります。
 


モデル紹介
●60Stratocaster NOS (3CS) Built by Yuriy Shishkov
 
Serial : CZ506618
Weight : 3.5Kg
さすがにユーリはヴィンテージタイプを造らせると上手いですね!あたかも使い込まれたギターのような枯れた響きは絶品です。柔らかくしなやかなタッチ感なのですが、ガツンと力強くストロークしてもシッカリと受け止めてくれるような芯の強さをも持ったこの感触は、新品のギターらしからぬ凄みを感じさせます。
 
 
●61Stratocaster NOS (3CS) Built by Todd Krause
 
Serial : R37035
Weight : 3.5Kg
有名ミュージシャンのギターを多数手がけたトッドらしく、タフな剛性感を持ったストラトです。一本ビシッと芯の通った力強さがありながらも、グッと体に伝わる響きを持った鳴りをしており、ステージでガンガンと弾き込むには最適な実戦的なサウンドのギターです。
 
 
●61Stratocaster NOS (3CS) Built by Chris Fleming
 
Serial : CF971
Weight : 3.5Kg
この人が現在ではギター製作をしていないのが本当に勿体無い!と思わせる出来の良いストラトです。物静かで職人らしい風貌とは裏腹に、製作するギターは豪快でワイルドな響きとサウンドを持っております。ヴァイブレーションの大きい独特なトーンはハマると他では満足できない魔性を秘めております。
 
 
●61Stratocaster NOS (3CS) Built by Greg Fessler
 
Serial : GF611
Weight : 3.5Kg
日本での知名度はまだ高いとはいえませんが、このストラトを手にしてみると、ウッドマテリアルの良さや質感の高さなど、もっと名が通ってもおかしくない極上の逸品を製作しております。太く伸びやかなトーンと繊細なタッチ感を併せ持ったサウンドは最高です。サウンド、ルックス、プレイヤビリティー共に申し分の無いストラトです。
 
 






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