■ジョン・イングリッシュ氏は6月28日に逝去されました。心より故人のご冥福をお祈りいたします。

 


Fender Custom Shop
Senior Master Builder John T. English
来日インタビュー

2005年8月21日(日)池袋店 OMスタジオにて



イケベ
(以下IKB)
1998年以来久々の来日ですが、日本の印象はいかがですか?
John English:
(以下 J.E.)
今回で2度目の来日となりますが、日本はすばらしい国で、とても気に入っています。
お店のディスプレイなども非常に魅力的で、スタッフの楽器に対する理解度も高く、また、ユーザーの方々も楽器に対する関心が高く、そういう意味では、アメリカ国内よりも非常に質が高いと思います。
非常に有り難く感謝しています。
IKB それではまず、フェンダー社に入社した経緯を教えてください。また、ギターの製作に携わるようになったのはいつからですか?その際にどなたかに師事されたのでしょうか?
J.E. 1970年に入社しました。その後1978年に一度退社し、バレーアーツ〜リッケンバッカーを経て、1987年にジョン・ペイジ(当時のカスタムショップ・マネージャー)に誘われ、新しく創設されたカスタムショップのマスタービルダーとして招かれたわけです。
フェンダー社に入社する以前は、ミュージック・ストアで働いていました。
そこでは、おもにリペアなどをやっていました。フェンダー社入社後は、ボディ・サンディングやペイント他、ユーザーから戻ってきたギターなどのリペアなど様々なセクションを経験したことで、自然とギター製作のノウハウを学びました。
IKB ギター製作を始めて現在まで、一番苦労されたことは何でしょうか?
J.E. リペアをやっていた頃が一番大変でしたね。
一からギターを製作するのとは違い、既に完成されたギターをユーザーの要望通りに調整・修理をするわけですから、これほど難しいものはありませんでした。
IKB 今までに様々なミュージシャンにギターを製作してきたと思いますが、どんなミュージシャンに製作しましたか?何人がご紹介ください。
J.E. ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ビリー・ギボンズ、ダニー・ガットンなど、他にも数え切れないほどのミュージシャンに製作してきたと思いますが、そのほとんどが記憶にないのです(笑)
私はプロのミュージシャンも一般のユーザーも関係なく、いつもベストを尽くしています。
私は、オーダーが来た時にギターそのものに対するイメージが先行するのです。
オーダーシートのスペックを見ながら、「この人はどんなサウンドを求めているのだろう?」と、頭の中でイメージを創り上げてから製作に取り掛かるのです。
ですから、完成して初めて、「このギターはクラプトンのオーダーだったんだ」、なんてことに気付くことが多いです。

とにかく、オーダーした人の要望を踏まえ、「このユーザーのイメージしているベストなギター(サウンド)は何だろう?」といつも製作前に考えます。
あくまでもイメージを大事にしているため、有名ミュージシャンも一般ユーザーも関係ないのです。
それは、私がすべてのプレイヤーに満足していただけるギターを製作することが一番だと考えているからです。

IKB ギターに使用する木材の入手方法は?
J.E. 基本的には、ファクトリーにあるドライルーム(入荷したすべての木材はこの乾燥室に入れられる)からセレクトします。
入荷した木材はすべてチェックして、良質なものだけをキープします。セレクトした木材はラフにカット(ボディ・ネック・指板)して、5〜10年ほどこのドライルームで保管します。
そして、この中から年代の古い順に使用していき、常にローテーションするようにしています。
今製作に使用している木材は1995〜96年ぐらいのものがほとんどです。
現在カスタムショップでは、ギター製作に適した木材を調達できる業者から仕入れていますので、良質な木材が入手しやすくなりました。そうした中から、チームビルト・シリーズやマスタービルト・シリーズなどは、特に厳選した木材を使用していますので、とても良いものを提供できていると思います。
IKB ギターを製作する際の木材選びのポイントは?ボディ、ネック、フィンガーボードそれぞれについて教えてください。
J.E. これはモデルによって違ってきます。
先ほどもお話しましたが、まずサウンドのイメージをしてから木材をセレクトします。アルダーボディにローズのフィンガーボード、メイプルネックにアッシュボディなど様々な選択がありますが、例えばスティーヴィ・レイ・ヴォーンのようなダークな(暗いサウンドという意味ではなく、太いサウンドと解釈)サウンドなら、アルダーボディにインディアン・ローズウッドのフィンガーボード、そしてプレーン・スワン・カット(板目)のメイプルネックとか、よりブライトなサウンドを好むなら、アッシュボディにリフ・カット(追柾目)のメイプルネック、クラプトンのブラッキーならアルダーボディにクオーター・スワン・カット(柾目)のメイプルネックなど、ネックのカットによってもサウンドがさまざまなのです(ボディ材のカットにも同じことが言えます)。
ですから、まずサウンドをイメージして、木材を一つ一つセレクトしていきます。ボディ材の話になりますが、私が使用するアッシュ材などは、ラフカット前の状態で3.5〜4.0Kgのものをセレクトしてからラフカットして、ドライルームで調整した3Kg前半の非常に軽量で良質なものしか使用しません。
フィンガーボードにしても、実際に指で叩きながら響きの良いものだけをセレクトしています。
IKB ベースについて今後製作を予定しているモデルがあれば教えてください。
J.E. Vintage Hybrid Bassです。
ルックスはヴィンテージなのですが、ハイブリッド(パッシブ・アクティブ)・エレクトロニクスを搭載したモデルです。
ジャズ・ベースとプレシジョン・ベース両方で製作を予定しています。カスタム・カラーを採用し、弾きやすさを重視したネックでジャンボ・フレット、ヴィンテージ・トーンはもちろん、最近の様々なミュージック・シーンにも対応できるサウンドも得ることができる新しいベースです。
「ヴィンテージのルックスで、+αのサウンドがほしい」という方などには是非おすすめしたいですね。
IKB 日本のアーチスト初であるTUBE春畑道哉氏のシグネチャ・モデルを製作されたわけですが、その時のエピソードなどを聞かせてください。
J.E. 最初のモデルに関しては、コンセプトがヴィンテージ・トーンでした。
しかし、彼は自分でもヴィンテージを所有しており、サウンドも含めたアイデアなどもイメージがハッキリしていたので、非常に製作しやすかったです。
今回のモデルに関しても彼と色々とやり取りをする中で、やはり彼のイメージがはっきりとしていたので、私もサウンドのイメージがすぐに描けたので、すぐに製作にかかることができました。
とにかく私は、サウンドをイメージする時間をかなり要します。しかし、イメージさえハッキリしてしまえば、私にとって製作することは容易なことです。
IKB 春畑氏のモデルでも目にすることができますが、最近レザー・アーチストであるビル・ウォール氏とコラボレイトしたモデルを色々と製作しているようですが、今後、具体的に製作を予定しているアーチストとのコラボレイト・モデルがあれば教えてください。
J.E. ビル・ウォール氏とコラボレイトしたようなギターを、他にも何人かのアーチストと計画中です。
インレイ・ワークやペイントなどは自分でもできるのですが、その道の専門アーチストに依頼することにより、芸術性も上がり、より良い作品が創り出せると思います。
IKB 普段どんな音楽を好んで聴かれていますか?
J.E. クラシック、ビーバップ、ソウル、R&B、カントリー・ブルースをはじめ、R&Rも大好きです。
エルビス・プレスリー、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトンなど・・・・・
とにかく、普段からあらゆるジャンル音楽に接しています。
IKB 最後に日本のフェンダー・ファンに一言お願いします。
J.E. 日本の皆さんのサポートに感謝しています。
今後も良い楽器を市場に提供して、より良いマーケットを築いていこうと思います。ユーザーの皆さんも共に、楽器の楽しさを後世に受け継いでいきましょう。とにかく、皆さん楽器演奏を楽しみましょう。
 
 
インタビュー&日本訳協力:且R野楽器 大畑篤史氏


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