T's Guitars 高橋謙次氏インタビュー
T's Guitarsの工場内の一角にあるミーティングルームは、真夏だというのにクーラーの必要がないぐらい、涼しい風が吹き抜ける気持ちの良い場所です。

その日も気温は30度を超える暑さだったのですが、日陰に入るとスッと乾いた風が涼を呼ぶ心地良さです。そんなのんびりとした中で高橋氏にインタビューを敢行しました!

当店スタッフ : 本日は宜しくお願い致します。最初に、T's Guitarsをご存知でない方も多いかと思いますので、T's Guitarsとはどのような所かお聞かせ頂けますか?
高橋氏 : T's Guitarsは、最初の頃は兄(信治氏)と一緒にリペアやオリジナルギターの製作から開始したんですよ。
実家の片隅の物置小屋のような所でほんのチョコッとだけ工作機械を入れて始めました。

最初は楽器店から依頼される修理や、交換用のボディやネックの製作だったりしたのですが、「ネックが造れるんならボディまで造って完成品を造ってよ」みたいな感じでオーダーも徐々に増えてきたんです。

現在では製作するギターも増えてきましたが、その中の多くはOEM生産でして、ギターブランドからの製作依頼や、楽器店のショップオリジナルのようなギターやベースを主力にしています。もちろんそれと平行して自社ブランドのカスタムオーダーも製作しています。
当店スタッフ : ちなみに、どのようなブランドのギターを造っていましたか?
高橋氏 : どのブランドのOEM生産と聞かれると微妙なところで言えない事も多いのですが、最近ですとスリークエリートさんから依頼のあったケンスミス・デザインなど、古くからですと荒井貿易さんのARIAやAPブランドでのギターやベースの一部の機種、P-Projectのオーダーギターなどを依頼された時期もありましたね。

比較的ハイエンドな機種(20〜30万円以上)を製作する事が多いものですから、何十本も同じ機種を造るのではなく、数本単位での製作が多かったですね。多くても一機種で十数本ですよ。
当店スタッフ : 変わった所では何かあります?
高橋氏 : ハコ物も造りますよ。

フルアコでは、Jazz Guitar Designs というブランドで、Californiaで活躍しているギター製作家 Taku Sakashta (タク・サカシタ)さんがデザインし、T's Guitarsが製作しているジャズギターがありました。同じくTaku Sakashta (タク・サカシタ)さんがデザインしたアコースティックギターは、AGSというブランドで、これもT's Guitarsで製作していました。
(*1)Jazz Guitar Designes、AGSは現在、販売代理店の都合で生産を終了しております。
当店スタッフ : デタッチャブルの物だけではなく、セットネックやハコ物まで製作してるんですね!
高橋氏 : 言われればなんでも造りますよ!(笑)好きですからね。
ただ、ボルトオンのフェンダースタイルが得意といえば得意ですかね。一番多く造ってますし。
当店スタッフ : 少し話が戻ってしまいますが、T's Guitarsは何年ぐらいから始まっているんですか?
高橋氏 : 1985年に創業なんです。
その時は別の工房名で兄が立ち上げたんですが、自分はまだ働いてなく、とある楽器店で仕事をしていました。
一緒に仕事をし始めたのは2年後の87年からで、その時からティーズギターという社名になりましたね。
当店スタッフ : 完成品のギターを造り始めたのはその頃からですか?
高橋氏 : 自分が仕事を始めた87年頃に、この場所に工場を建てて、その頃には完成品のギターを造っていますね。
ただその頃は今のようにNCルーターなどはなくて、本当に手加工みたいなかたちでピンルーターとかを駆使して製作していました。その頃に主に製作していたのがAria Pro II ですね。バブルの後半だったので造れるだけ造るって感じで頑張っていましたね。その頃は工場も5〜6人ぐらいで仕事をしていたんですが、毎日早朝から夜遅くまで仕事して、時には日曜日も休まずに仕事をして本当に忙しかったですね。まだ比較的低価格のギターを主に製作していたので、工場を運営していくのは大変なんだな!と思いながらも働いていましたよ。それが5年ぐらい続いた後、だんだんバブルもはじけて量産のギターの製作もしぼんでくる時期だったので、そのあたりから技術を上げて、もう少し付加価値をつけてハイエンドなモデルに移行して行ったのです。
当店スタッフ : アコギとかウクレレを現在は製作をしていますね?
高橋氏 : ちょうど10年位前からですか、それまではエレキギターやベースばかりだったのですが、いずれアコースティックも造りたいという気持ちはありましたから、少しずつ始めていきましたね。

一時、ウクレレブームがあってものすごく引き合いがあったり、そうかと思えば次の年にはパッタリと注文が来なくなったりで浮き沈みはありましたが、徐々に注文は増え、特にここ2年ほどはハワイのコンテストでの優勝なども影響してか、安定してきた感じはありますね。

アコースティックギターも、かの吉川忠英さんや住出勝則さんに気に入っていただきまして、レコーディングなどでも使用していただいておりますので、徐々にオーダーが増えてきている状態です。
当店スタッフ : 現在はお兄さんの信治さんがウクレレを製作しているのですか?
高橋氏 : そうですね、最近は兄が中心になってウクレレやアコースティックを、自分が中心になってエレキ系を製作しています。
当店スタッフ : 工場の現在どれぐらいのスタッフがいるのですか?
高橋氏 : エレキ系の製作で8人、アコースティック系で7人です。合計で15人ですかね。
当店スタッフ : そんなに大規模ではないですよね。
高橋氏 : そうですね、昔の5〜6人の頃を考えると大所帯になった感じもするのですが、工場と言うには非常に少なく、工房としてはやや多いという人数ですね。

ただ、生産本数が昔に比べてメチャメチャ増えたのかと言うと、そんな訳ではなくて、どちらかと言うと手を掛かる仕事が増えてきたのですかね。現在では生産本数がエレキ系で70本前後、100本も造れば多いほうです。ウクレレなども今の夏場は旬な時ですから、100本ぐらい造る事もありますよ。
当店スタッフ : 製作は、木材のストックから組上げまで、全てT's Guitarsで製作しているのですか?
高橋氏 : そうですね、塗装の一部は社外にお願いする事もありますが、基本的には全ての作業を社内で行っています。
当店スタッフ : 精度の高さと製作本数のバランスは難しくないですか?
高橋氏 : そうですね、OEM製品でも定価で20〜30万円ぐらいの物を多く造っていますので、当然品質的なリクエストも増えてきますね。さらに音を良くしたい、弾き易くしたいなど、だんだんと難しくなってきます。そう考えると昔に比べて各工程で時間を掛ける事が多くなってきましたね。フレットワーク1つとっても、昔に比べると格段に時間を掛けるようになっていますしね。生産本数が数十本、数百本に増えても、実際には1本ずつを造る積み重ねだと思っています。

意外と精度を上げること自体は楽なんですよ。ジックリと時間を掛けて1本ずつしっかり取り組んでゆけば良いのですから。難しいのはセンス的な事ですよね。相手がいる仕事ですし。

メーカーからのオーダーでも、個人のお客様のオリジナルギターの依頼でも、キッチリとスペックを決めてオーダーが来るよりも、「こんな感じのギターが造りたいのですが」と言う様に、最初は曖昧な感じで来ることが多いのですよ。それを一緒になって考えて、「これをこうしましょうか。」などと話しながら決めていくには、そのセンス的なことが必要となってきますね。だからきっちりとした図面がなくてもある程度はギターを形にする事が出来ます。そこが大手の工場と違うところですね。

またオーダーの中でいろんなリクエストが来ると、中には無理難題もあるんですが、取り組んでいる中で「ここをこういう風にするとこうなるんだな。」とか「こういう材を使うとこんな音になるんだな。」っていうノウハウは段々増えてきますね。
当店スタッフ : さきほど工場でNCルーターを見ましたが、NCって言うと大量生産みたいなイメージもありますが。
高橋氏 : T's GuitarsにあるNCルーターは、大手にある4軸とか8軸とかの多軸の物ではなく、単純な1軸の物なんです。 ですから何本も一気に加工できる訳ではなく、どちらかと言えば加工精度を上げる為に導入したものなんです。
元々はネックの精度を上げたかったんですよ。

ギターのリペアをしているとわかるのですが、ネック周りのトラブルで悩んでいるお客様がとても多いのですよ。それを考えると自分たちの造るギターでは、最低限ネックだけは問題の出ないものにしたい思って、トラスロッドの仕込みなど重要な部分では手加工よりも精度を上げられるNCルーターで作業しています。やはり安心して長く使えるギターを造りたいですね。
当店スタッフ : ネックポケットとかもNCルーターですか?
高橋氏 : そうですね、ボディもネックもピッタリと造らなくてはいけない所はNCルーターですね。ただ木材の加工ですので、製作していくとどうしても多少は動きますので、2回に分けて加工するなど工夫しています。手加工でも対応は出来るのですが5/100mm以下の精度で加工できるメリットは大きいですね。
当店スタッフ : 高橋さんの経歴等をお聞かせ下さい。
高橋氏 : 若い頃は東京に出てバンドをしたりしていてミュージシャン志望だったんですよ(笑)。

その頃の仲間で有名になった人もいるのですが、自分は田舎に戻ってきて後に某工房でアルバイトとして働き始めたのが、楽器関連の仕事の最初ですかね。その工房では兄が正社員で働いていましたが、自分はバンドをやりながら、今で言ういわゆるフリーターみたいなことをしていましたね。

元々楽器店のお兄さんってのに憧れていたので、その後地元の楽器店の店員を3年ほどしていたのですが、ある時、とあるメーカーがアメリカに輸出をしたギターの検品をするスタッフを探している、との話を聞いて応募しました。数ヶ月間の間でしたが、アメリカに行ってギターの検品をしたり調整をしたりしていました。この時の経験はとても大きくその後の仕事に影響しています。そしてその仕事が終わり帰国した後に、先に独立して工房を始めていた兄と共にT's Guitarsを始めました。

現在T's Guitarsの中では、製作、リペアなどの作業と平行して、ユーザーや顧客との打ち合わせなどの対外的な仕事をしています。
当店スタッフ : B.F.T.S.を始めたきっかけは?
高橋氏 : だいたい4年ぐらい前からBFTSのインストールを始めています。

チューニングに関しては昔からギターってキッチリと音は合わないのかな?と漠然と思っていましたね。
ギターは中学生ぐらいにアコースティックギターを弾き始めたのが最初でしたが、段々弾いてゆくうちになんだかチューニングがピッタリ合わないなぁと思い、先輩や楽器に詳しい人に色々と聞いたこともあったのですが、「ギターなんて、そんなものだよ」と言われてきたんですよね。

ギターの製作を始めた後、構造や理屈が解る様になって、指板のフレットに弦を押し付けるというギターの構造上、ある程度ピッチが安定しないのはしょうがないということは解ってきました。実際自分でスケールとフレット数からフレット位置をキッチリと割り出し、ナット位置も正確にし、ネックの調整やオクターブの調整も正確にして造ったギターでも、やっぱりキッチリとピッチが合わないんですね。やはりギターってそんな物かなーと思っていた時にBFTSのホームページを見て、メールを送ったのが始まりです。
当店スタッフ : 初めから、「やりたいです!」とメールを送ったのですか?
高橋氏 : 最初、BFTSのホームページを見た時は、システムの説明やチューニングの仕方などが載っていたのですが、ある時に気付いたら、向こうでは「レトロフィッター」と言うのですがインストールする技術者を募集する、というのを見つけたんですよ。それで問い合わせをしてみることにしました。
当店スタッフ : それまでに、BFTSのギターを弾いた事はあったのですか?
高橋氏 : 確かその頃にはWashburnにインストールされていたモデルが有ったと思うのですが、自分で弾いた事はなかったですね。SuhrやTom Andersonもある時期からBFTSになっていて、もちろん弾いた事は何度もありますが、正直言って自分がレトロフィッターになる前にはどこがどういうように普通のギターと違うのか、わからなかったんだと思います。さすがにSuhrは良いなぁと感じていても、チューニングの影響がどの程度なのか判断は出来なかったんでしょうね。

実際にBFTSを意識したのはBuzz Feiten社とコンタクトを取り始めてからですね。ホームページを見て始めは構造や仕組みに興味があり、どうしてそうなるんだろう?と色々考えていまして、どうしても教えて欲しい!日本人でも大丈夫かっていうメールを送ったら意外にあっさりと返事が来て、やる気があるならOKって事で始まったんですね。その後アメリカに行って正式にライセンスをいただきました。
当店スタッフ : その時、日本人では初めてだったのですか?
高橋氏 : その頃にはBFTSがインストールされたギターが日本に入ってきていましたので、それを調整できる技術者はおりましたが、実際にアメリカに行ってバジー・フェイトン自身から講習を受けて、あるメーカー特定ではなく全てのギターにインストールする認定を受けたのは自分が最初です。

実際にアメリカに行った時には、バジー・フェイトン自身の他に技術的な指導をおこなうスタッフがいて、テクニカルな面は彼からレクチャーを受けていましたが、最終的な調整段階ではバジー・フェイトンから音楽的な部分、微妙なニュアンスなど細かく話を聞きました。この様な時はこの音に注意しなくちゃいけないとか、チューナーの見方とか、さすがは超一流のミュージシャンだけあってアドバイスも実践的な事が多かったですね。

約一週間アメリカにいて、レクチャーは4日間ほどだったのですが、毎日バジー・フェイトンとは何かと話をし、アドバイスをもらっていました。感覚的な部分で教えてもらった事は非常に大きかったと思いますね。
当店スタッフ : 実際にインストールした時の感想はいかがでした?
高橋氏 : 一流のミュージシャンが現場で考え出したシステムだけあって、ポイントをおさえているなっと思いました。今までギターのチューニングやピッチ感で違和感を感じていた所が解消されていましたので、さすがはプロの耳で考えられたシステムだなと。
当店スタッフ : インストールする際の注意点などありますか?
高橋氏 : 各部を計測し、0レットの位置を計算したりオクターブを規定の設定にしたりしますが、ギターによっては音程が安定せず、針の振れにクセがあったりもして、微妙な差が出ることもあります。数値だけにとらわれず、実際に音を聞いて細かな感覚を微調整していく事が必要ですね。意外と弦にもばらつきがありまして、今ひとつ安定しないような時に弦を張り替えたらピッタリ合ったなんて事もありますので、そのあたりの見極めも大事ですね。
当店スタッフ : BFTSのインストールでは、コンマ数ミリまで追求しているのですか?
高橋氏 : そうですね。BFTSの規定では0フレット(ナットの位置)は3/1000インチまで合わせるようになっています。

ミリで言うと0.1mm以下ですね。サドルの位置も1セント単位(半音=100セント)で合わせますが、オクターブをピッタリに合わせるというのではなく、独自の補正を加えて調整をしています。この補正が特許になっているんですね。

ギターという楽器は構造的にアバウトな要素のある物ですから、通常のチューニングでオクターブを調整し、開放弦で音程を合わせても、どこかのフレットを押さえるとズレて感じる部分がでてきます。ピアノなどですと調律が少しでもズレていると気になる方も多いと思うのですが、今までギタリストの方は案外気にしない方が多かったと思います。というか、もうそれでしょうがない、こんなものだと思っていたでしょうけれど、BFTSはこの音程のズレを通常のギターよりも格段に解消してくれますので、ピッタリと合った気持ち良さを感じて頂けると思いますよ。
当店スタッフ : BFTSは聴感上で良く聞こえる事に重きを置いているのですか?
高橋氏 : その言い方が的を得ているかもしれません。
実際にBFTSをインストールしたギターを通常のやり方でオクターブをチェックすると、チューナー上ではズレているのですよ。このあたりが難しい所ですが、特許を取得している独自のイントネーションの補正で、元々ギターが持っている構造的なズレを解消し、様々なポジションでの調和をとれるようにしているのです。
ナット位置やオクターブを調整し、どのポジションでも違和感なく聞こえるようにしているのです。これは、やはりBFTSをインストールしてあるギターを弾いて頂くのが解り易いかもしれませんね。
当店スタッフ : BFTSのインストールをする前と後で、どのあたりを弾くと違いが解り易いですか?
高橋氏 : もちろん指板上全体に渡ってですが、特に10フレット以上のハイフレットでのコードですかね。
もしかしたらパワーコード中心の演奏スタイルの方ですと、BFTSはあまり必要ないかもしれませんが、ローポジションでコードワークをする場合でもBFTSの効果は十分にわかりますよ。それにこのインストールを希望される方の中には、ジャズやフュージョン系のギタリストの方も多いですよ。ハイポジションを多用する為に普通のチューニングのギターだと音程の狂いが気になる、と言う方が多いですね。

もちろんBFTSがインストールされていると全てが良くて、インストールされていないと全てが悪いという訳ではないのです。例えばの話、人によってはチューンアップされてネックがピシッと真っ直ぐで弦高もベタベタじゃないとダメという方もいらっしゃれば、ネックは多少順ゾリで弦高は高めの方が良い、という方もいらっしゃいます。これは優劣を付けられる物ではないですよね。今までのギターの音に慣れていて、この音の響きじゃないとギターっぽくない!という方も、もちろんいらっしゃいますからね。BFTSは弾く人が少しでも弾き易くなる為の手段の一つとして浸透していってくれれば幸いです!
当店スタッフ : カスタムオーダーギターはいつ頃から造っておりますか?
高橋氏 : 工場の創業当初から、カスタムメイドのギターは造っていましたのでもう20年にもなりますね。
ある時期は有名なショップさんのカスタムオーダーの製作をしている時期がありまして、そのようなオーダーを受けている事で信頼度も上がってきて、他のショップからのリクエストも増えてきました。
昔はインターネットとかない時代ですから、一般のお客様と言うよりも、そのようなショップからカスタムオーダーの一本物でオーダーをもらう事が多かったですね。近年ではホームページをみて頂いた方や、リペア等で繋がりのできた方など、個人のお客様のオーダーも増えてきました。
当店スタッフ : ホームページにも掲載されているDSTやARCなどの機種はいつ頃から造られているのですか?
高橋氏 : DSTは少し小振りなストラトシェイプですが、これは10年以上前から造っていますね。
定番的なスタイルのギターですが、自分が海外のカスタムコンポーネントギター、トムアンダーソンやサー、サドウスキーなどが好きで、そのようなスタイルのギターが造りたくてこうなった機種ですね。負けないつもりで造っています。
ARCに関しては、会社を始めた頃はオリジナルギターよりもOEMなどの下請け仕事に専念して技術を磨こうと思っており、積極的にオリジナルの事は考えていなかったのですが、ある程度会社が軌道に乗ってきた時に考えたのがARCです。これも10数年前ですかね。その頃はP.R.Sが日本でも浸透して来ており、カッコいいなーと思っていた時期ですので、そんな要素も入っていますかね(笑)。セットネック物を造る時に避けては通れないモデルがレスポールなのだと思いますが、自分はレスポールが苦手なんですよ。それは重さだったりハイポジションの演奏性だったりするんですが、だからそういった箇所を解消しながらデザインしたギターがARCです。
当店スタッフ : ARCシリーズでセットネックを選んだのは?
高橋氏 : オリジナルオーダーをしている工房もその頃では増えてきていましたので、他ではできない物を造りたいと思っていまして。セットネックでアーチトップでホロー構造ですと手間も掛かりますし、造るのは大変ですけど、他ではなかなかないスタイルでと思ってデザインしました。

DSTなどもストラト系のコンポーネントは多くあったのですが、当時ではドロップトップを造れる所はまだ少なかったですから、そのような技術的な面とか珍しい素材だとか、やはりオリジナリティーを出していきたいですね。BFTSを始めたのもそのような理由も多少ありますね。
当店スタッフ : ARC Hollowも面白いコンセプトのギターだと思いますが。
高橋氏 : 最終的には自分が欲しいギターを造っているのでしょうかね。このホロー構造は、自分が家でポロポロとギターを弾いた時に、生音が出たほうが良いな!と思いながら構造を考えていきました。フルアコだと大きいですし、ソリッドギターだと生音が小さいですから、このようなスタイルのギターになりました。しかもこんなスタイルでトレモロアームが付いているのも自分の好みですよね。普通に考えたらこのスタイルにアームは付けないでしょ(笑)!でも、このようなホローのギターに安定して使えるアームを付けてみたかったんですよね。それでウィルキンソンのアームを搭載したホロー構造のセットネックというギターを造ってしまいました。もちろんARCシリーズはトレモロなしも有りますし、一番最初に造った時はTOMとストップテールピースの標準的な仕様でしたけどね。
ARCはオリジナルデザインで、基本的にはレスポール系より取り回し易いセットネックのギターを目指して造っています。314スケールでセットネック、ハムバッカーPUのパワフルな感じを出しつつもナチュラルなトーンで軽い!そんな方向性です。そこでホロー構造を採用したり、バックのアーチやコンター、ネックジョイントのヒール部などにこだわった造りを持っています。ピックアップもオリジナルで造っているんですよ。クリアでナチュラルなトーンを出す為に、パワーはあえて控えめにして、マグネットはヴィンテージタイプのアルニコ3と、それよりも若干パワーのあるアルニコ5の2種類を使っています。パワーが強すぎると音が潰れちゃうんですよ。このギターでハードなロックという感じでもないかと思いますので、
ARCではナチュラルなトーンを重視してパワーは控えめな傾向ですね。
当店スタッフ : T's Guitars オリジナルギターのオススメのポイントは?
高橋氏 : まずは手にとって弾いて頂きたいですね。

ネック周りの仕上げには気を使っておりますので、弾き心地やネックの安定度は良いのではないかと思っています。安定度などは単純に他と比較できないと思いますが、ネック材の目の通りなどから素直な特性の物を選んでおりますし、製作工程でも削って寝かしてを繰り返して、完成する前までに出来るだけ木材の動きを出し切るようにしていますので、かなり安定している方ではないかと思います。また、指板サイドやフレットのエッジなどの処理も手に馴染むように仕上げるようにしていますので、ぜひ店頭でT's Guitarsを弾いてみてください!
やっぱりネックがピシッとしていると弾き心地にも影響してきますし、音の響きもシッカリと伝わりますからね。ネックの精度や強度、トラスロッドの仕込み具合など普通は見え辛い所ですが、手を抜かないようにしています。
当店スタッフ : 柾目のネック材を使うのも、そのような事からですか?
高橋氏 : 柾目の材は強度的にも安定していますからね。弦振動をロスなく受け止めてくれますから、サスティンも出ますし、音も前に出てきます。もちろん板目の材でもシッカリとしたギターは出来ますが、良い素材を使う事で少しでも音色や機能に貢献できればと言う事で、年々入手は難しくなっていますが好んで使っています。
当店スタッフ : ネックポケットの精度も、コンポーネントギターですとよく言われる点だと思いますが?
高橋氏 : T's Guitarsではギターの製作をする時に、このネックをこのボディにセットすると予め決めて製作しています。
木材は時期によって多少動きますから、このあたりは毎日のように計っていますね。雨が降ったからどうだとか、今日は気温が高いからどうだとか言いながらチェックしています。造りながら寝かせながら、最終的にセットする時に誤差のないように仕上げていきます。
これも難しい所ですが、ピッタリだから音が良いかというのも、色々と考えてしまいますね。
ヴィンテージのストラトとかは、けっこうポケットが緩かったり、シムが入っていたりしても凄く良い音で鳴るギターも多いですからね。ただ、ピッタリと造る事で色々なトラブルを回避できると思うのですよ。ネックが左右に動いてセンターズレをおこしたり、チューニングが不安定になったりなどのトラブルは防げますし、やはりピッタリとセットされていると、弦振動の伝達も違ってきます。細かい事ですが、ボディ側のネックポケットの塗装は全部はがすようにしているんですよ。ここに塗料が残っていると、ほんのわずかですがキコキコ音がするですよ。ラッカーだと塗膜が柔らかいので大丈夫なのですが、その分ラッカーですと時間が経つと塗装が癒着してネックがくっついてしまう時も有りますから、やはりネックポケット部の塗装は剥がすようにしますね。
当店スタッフ : 最終セットアップで、セッティングや音色で方向性があったりしますか?
高橋氏 : そうですね。もちろんありますが、いつも一貫したものではなく、その一台ごとに変わる場合があります。
弦高などは低めにセッティングできるようにしていますが、低ければ全て良いという訳ではないですからね。音質なども考えるとある程度の弦高は確保した方が良いと思いますので、あえて低くし過ぎないようにし、ベストなフィーリングが得られるようにしています。ネックの反り方や弦高で音って変わってくるじゃないですか。フレットの高さや幅などによっても変わってきますし、そのギターの性格によっても変わってくると思うんですよね。たとえばストラトのセッティングとテレキャスのベストなセッティングはやはり同じではないと思うんですよ。ですので、高くしたり低くしたりして、そのギターのベストだと思う位置を探しますね。
また、音に関しては、ギターの構造や材のセレクトなどのスペックで、ある程度は音のイメージはできていますので、そのイメージを崩さないようにしています。オーダーで造ったネックやボディ、パーツの個性や性能を120%生かすというつもりでやっています。
そういう意味で、お客様のイメージを聞いて、話し合いながらスペックを決めていくカスタムオーダーは、完成時に元々のイメージと大きく食い違う事は、ほとんどないですね。
またオーダー品には、T's Guitarsの中でも厳選した木材を使って製作します。OEM生産もする中でそれなりに月産の本数が有り、材料のストックも豊富にありますので、その中からイメージに最適な材料を選んでおります。
当店スタッフ : 何かこれを読んでいる皆さんにメッセージなどがございますか?
高橋氏 : 自身の趣向がそちら向きなこともありますが、今までに数百本に上るオーダーをお受けしてエンドユーザーに喜んでいただいており、コンポーネントタイプのギターでは他には引けを取らないと自負しております。豊富な経験、材料、製作環境からベストなものを作らせていただきます。よろしくお願いいたします。
当店スタッフ : ありがとうございました!

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