WSRより愛をこめて第46回

 

リペアマンとは何か」その1

 皆さんこんにちは!近頃めっきり寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
WSRが工房を皆さんの目に見えるところ(笑)に移したこともあって、このコラムの読者の皆さんが、たくさんご来店いただきまして大変うれしく思っています。私を発見したら、ぜひ「コラムを読んでいます。」と声をかけてくださいね!「ありがとうございます。」と答えますから。(笑)
また、「こんな内容のコラムを書いてほしい。」という要望もぜひお寄せ下さい。可能な限り書くつもりですので・・・。

 

さて今月からは、この男はいったいどんなことを考えて仕事をしているのかという精神世界のお話をしていきたいと思います。
なんだか少し偉そうな感じがしますが、こういう事を読んだり聞いたりする機会ってあまりないと思うので、これから数ヶ月我慢して読んでみてください。

単純に「ギターを直す人、直せる人」が「リペアマン」だといってしまえばそれまでなのですが、多分それは大きな間違いだと思います。

まず1つ必要なのは状況を正しく判断できること。ビビルという症状を例にとっていうならば、弦高が低すぎるのか、フレットが浮いているのか、ネックが逆ぞっているのか、弦が折れ曲がっているのかというようになにが原因でそれが生じているのか発見できなくてはなりません。当たり前と思う読者の皆さんも多いかと思いますが、これが意外と大きな経験と知識を問われます。修理という仕事というのは大きく分けて2つのタイプに分かれると思うんです。

1つはプレイヤー自身が状況、原因を認識していて、その作業自体を我々に依頼してくる場合で、各種パーツの取りつけや交換、改造等がこれにあたります。

もう1つは症状だけは分かっているが原因が不明で症状の改善を依頼してくる場合で、ビビル、ノイズが多い、音が出ない等といった症状で持ち込まれるものがこれにあたります。

前者の場合は状況の判断というより、その作業をすることによって生じるメリット、デメリットを想定できる能力が必要になってきます。なぜなら、作業完了後に元の状態より使い勝手が悪くなってはその作業自体が意味の無い物になってしまいますから・・・。
後者の場合は楽器やパーツ構造、機能を正しく理解した上で状況を見ることが出来ないと、実際の作業をすることが出来ないどころか、必要のない作業を強いられることにもなりかねません。また、偶然にも状況の改善が出来たとしてもそれは「技術」ではなく、「まぐれ」だと思うんですよね。
そうならないためにも「リペアマン」にとって状況の判断力を養うのはとても重要なんですね。

来月は「リペアマンとは何か 2」です。


WSRより愛をこめて第47回

 

リペアマンとは何か」その2

 皆さんこんにちは!今回もこのコラムを読んでいただいてありがとうございます。皆さんがこのコラムを読まれている頃には、シンコーミュージックから「音楽の全仕事」という本が発売になっていると思います。この本の中に私のインタビュー記事が掲載されていて、ちょうど先月から始まっている「リペアマンとは何か」をより良く知ることが出来るようになっているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

 さて、前回は「状況の判断」についてのお話でしたが、今月は工具や作業行程のお話をしていきたいと思います。

実際の作業において、正しく状況判断した後に必要となるのは、どのような工具を使ってどのように完成までの行程を進めていくのかという事です。当然、もっともリスクが少なくて、合理的かつ、一つ一つの行程において完全な仕上がりに持っていくことが出来る工具や行程をチョイスしなくてはいけません。
PUカバーを外す際、はんだを取らずにたたきノミでたたき切るというようなハイリスクな工具や作業行程のチョイスは取り返しのつかない失敗を生んでしまうことが少なくありませんし、ナットを削り出す際、ギターにナットを取り付ける前にベルトサンダー等である程度の形だしをするように合理的でないと、必要以上に作業時間をかけてしまうことになってしまいます。リフレットのようないくつかの行程が重なって完成に至るものに関しては、1つの作業をないがしろにすると次の作業に悪影響が残ってしまい、後々までその悪影響に泣くことになってしまいます。
たとえば、5つの行程があって、各行程の満点が10点だとすると、最初の行程において5点しか取れないとするとどんなに完全を試みても次の行程の満点は10点ではなく5点になってしまい、さらに次もその次の行程も満点は5点。よって仕上がった結果は50点満点中25点の仕事になってしまうんですよ。

 ・・・というようにリペアマンは結構頭を働かせて日々作業をしています(笑)。
見た目に簡単そうな仕事でも、いざ作業にはいってみると頭を悩ませてしまうような状況を目の当たりにすることも少なくありませんし、実際の作業よりも、作業方法の試行錯誤に時間を取られてしまうことも少なくありません。こういうリペアマンの日々の見えない努力によって皆さんのギターがいい状態に保たれているわけです。

次回は「リペアマンとは何か 3」です。



WSRより愛をこめて第48回

 

リペアマンとは何か」その3

 皆さんこんにちは!外の陽気はすっかり春らしくなってきた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今月は「リペアマンとは何か」の締めくくりとして「仕事に対する客観的判断」についてのお話をしたいと思います。

どういう事かというと、自分のした仕事に対して、機能的に優れた仕事が出来たのか、美的にはどうなのか?ということを自分で判断しなくてはいけないということです。
例えば、ナット交換で言うならば、ナットの高さはどうなのか、チューニングはキープできるのか、弦落ちはしないのか、聴感上はどうなのか?また仕上がりの形はどうか、傷等はないかどうかということです。
そういう判断力を持ち合わせていないと、いつまでたっても仕事人として技量や本当の意味での経験が身に付かないことになってしまいます。よって、リペアマンではなく作業人の粋を脱することができないということになってしまいます。
日々、仕事をしていく中で、何が機能的に優れていることなのか、美しいことなのか、良い音(当然プレイヤーにとって)なのかまた、それを可能にするためには何をしなくてはいけないのかという事を考えていくことが出来ないと、何が良いことなのかという観念は絶対に生まれてこないですし、技術を向上させることは出来ません。
ギターのリペアをする場合、作業工具や機械が技術的に困難な作業を可能にしてくれる場合も少なくありませんが、それも仕上がりに対する向上心があってのことで、作業の多くは手作業なわけですから・・・。

というような感じで3ヶ月間に渡って「リペアマンとは何か」を書いてきましたが、かなり偉そうなことをかいています。(笑)また、思っていることをうまく文章に出来なかった部分もあります。ただ私としては、日々こんなことを考えて作業人にならないように努力をしているというのを皆さんに分かってもらいたかったわけです。


次回は「良いという観念について」です。


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