WSRより愛をこめて〜第37回

 

「PUのお話」その1

 みなさんこんにちは!先月までの配線のお話はお分かりいただけたでしょうか?普段あまり目に付かない部分のお話が長々と続いたので、退屈だった読者の皆さんもいらっしゃるかとは思いますが、そんな所にもリペアマンの美学?やこだわりがあるということが言いたかったわけです。さて、今月からはPUのお話が始まりますが、今回は構造や機能のお話をする前にPUと回路についてのお話をしましょう。

  今日ではいろいろなメーカーからリプレイスメント用のPUが発売されています。
皆さんは自分の好きなプレイヤーが使っているからとか楽器屋の店頭で試奏してPUを選んでいると思います。もちろん、そのPU を自分のギターにマウントしてみて気に入れば何の問題もありません。
が、皆さん何か忘れていませんか?...そうです!回路のことです。よくPUについては「このPUはこんな感じだ」とか「あんな音がする」というようにプレイヤーの関心が非常に高いような気がしますが、回路にいたっては「ポットの抵抗値を変えてみたらこうなった。」とか「コンデンサーの種類を変えてみたらああなった。」という話はほとんど聞いたことがありません。
また、雑誌にはいろいろなミュージシャンの楽器が取り上げられていますよね?その中でもPUやエフェクター等の記述はあってもどんな回路(電気パーツも含む)になっているといった記述は皆無です。

私がココで言いたいのはアンプから出力される音はPUだけの個性で成り立っているわけではないということで、本来ならもう少し回路の内容についても注意が払われても良いのではないか?ということです。

 具体的に言うとどういうことかというと例えば、同じギターに同じPUをマウントしていてもポットの抵抗値が違えば音が違います。また、配線材、コンデンサの種類、乗数が違っても音が変わってきます。もっと言うとVoポットにハイパス用のコンデンサーや抵抗を使っている場合も同様です。逆に言うと、アンプから出力される音はPUを変えなくても回路の内容を変えれば変化すると言えるのです。

 ポットだけに話を限定して言うならば、一般的にハムバッカーPUには500K、シングルには250Kのポットが使われていますが、シングルコイルのPUの交換と同時にポットを250Kから1Mに変えてハイパスフィルターを付けてプレイヤーに渡してみても「このPUってトレブリーだねぇ。」という出音全てがPUの交換によるものと認識してしまいがちですが、この場合は回路の影響もとても大きいです。

  「今月からPUのお話」と言いながらほとんどPU自体のお話が出来ませんでしたが、それだけPUと回路の関係は重要で、PUはサウンドメイキングの絶対的要素ではなく、大きな要素ではありますが回路によって大きく変化すると言うことです。



WSRより愛をこめて第38回

 

「PUのお話」その2

みなさん今日は!今月もコラムの時間がやってまいりました。
近頃は皆さんからいろいろなご質問のおはがきを頂いておりますが、私もなかなか多忙なので返信が大変遅れてしまうことが多々ありますが、必ず返信は致しますので少しお待ち下さいね。
では、本編に入りましょう。


 もう既にいろいろな文献で紹介されているとおり、エレキギターのPUは電磁誘導作用によって微電流を発生させています。確か理科の実験ではコイルの中に磁石を通したり、磁石の周りでコイルを動かしたりしていたような気がしますが、エレキギターのPUではコイルや磁石を動かさずにその近くで磁性体(弦)を動かすことによって微電流を発生させています。
 実際のPUでは磁石は弦のピッチに合うようにプラスチックまたはバルカンファイバー製のプレートに固定され、ボビンとなり、その周りに紙やビニールのテープを巻き、コイルを適度なテンションで巻いていくという構造になっていますが、現在、たくさんのリプレイスメントPUがあるとおり、磁石の種類やコイルの材質、巻き方、巻き数の組み合わせによりいろいろなサウンドが作り出されるわけです。
 PUに使われる磁石は一般的に2種類あり、よく耳にする合金系のアルニコマグネットがその1つです。アルニコはアルミニウムとニッケルとコバルトの合金でその含有量の違いによって、アルニコ4とかアルニコ5というように番号付けがなされています。このマグネットはごくまれに、時間が経つと何かしらの原因で磁力がまるっきり落ちてしまう事があります。もう1つが酸化物系のフェライトマグネットで、アルニコよりは高音域が強調された音になると言われています。ポールピースにはそれ自体がマグネットで出来ている物とそうでない物があり、そうでない物にはポールピースの下にマグネットが貼り付いている物がほとんどです。(確か以前にはリプレイスメント用のマグネットが売られていたこともあった。)
 コイルは銅線にエナメルやポリエステルでコーティングされていて、単純に重ね合わせただけでは導通しないようになっているのでボビンにシングルコイルならば6000から8000ターン巻いて6KΩほどの抵抗になるわけです。一般的に同じコイルの巻き数ならば高く細く巻いた物の方が低く太く巻いた物よりもハイ上がりなサウンドになると言われています。
 現在では、従来のPUとは違った構造のPUが多く開発されています。従来のPUの構造を知らないとそう言った物の特殊性も理解できないかも知れません。ですので、来月からはシングルコイルとハムバッカーの構造を説明していきましょう。




WSRより愛をこめて第39回

 

「PUのお話」その3

みなさーん!元気ですかー!今月のコラムの時間の時間がやってまいりました(古い)。
先月にも少し触れていますが今月はより詳しいシングルコイルPUの構造について解説していきましょう。


先月にも触れたとおり、シングルコイルPUのボビンはバルカンファイバー製、またはプラスチック製のプレート2枚とポールピース、コイルとリード線をつなぐ役割をするハトメによって構成されています。
バルカンファイバーは意外と熱に強い材質なので、ハトメ部分のはんだづけの熱で溶けてしまうことはまず無いのですが、経年変化によって反り返ってしまい、コイルと癒着している場合は最悪の場合、コイルを切ってしまう事が極々まれにあります。こういった傾向はPUカバーが付いていないタイプのものの方が多く見られるようです。プラスチックは経年変化はほとんどないようですが、熱には大変弱いです。

ポールピースはアルミニウム、ニッケル、コバルトの合金であるアルニコという金属が使われるのが一般的で、これに磁力を与えてマグネットとしています。そうでないものは鉄製のポールピースを使い、ボビンの下にフェライトのマグネットを貼り付け、ポールピースに磁力を与えています。(余談ですが、昨年Tom Andersonの工房を訪ねた時には「PUはギターのサスティーンをプラス方向に作用させる働きはなく、マイナス方向にしか作用しない。ポールピースを太くすることによって磁界を広げ、弦を引っ張る力を軽減させ、ギターの持つサスティーンを損なわないようにしている。」と語っていましたが、確かにマグネットは弦の振幅を妨げる働きがあり、弦にあまりにも近づけるのは音量は上がりますが、サスティーンは下がってしまいます。)

ハトメはコイルの巻き始めと巻き終わりが巻き付けられ、それぞれ、ホット、コールドのリード線がハンダ付けされています。
コイルはエナメル等の絶縁体によってコーティングされているので、ハンダ付けの際に熱でコーティングが上手く剥がされていないとリード線に導電してくれません。PUの音が出ないというトラブルの多くはこのハトメ部分の接触不良が原因で、もう一度ハンダ付けをやり直して、エナメルコーティングを上手く剥がしてあげることが出来れば導通するというケースがほとんどです。
 ポールピースの周りには紙、ビニール、アセテートといった絶縁テープが巻かれていて、その上からコイルが6000から8000ターン巻かれています。そして、コイルが巻かれたままだとコイルのゆるみ等によってハウリングが起こってしまうことがあるので、パラフィン等の含浸によってコイル全体を固めています。
 というのがシングルコイルPUの構造ですが、このタイプのPUのノイズが、多くのプレイヤーの頭を悩ませている事と思いますが、適切な処理をすることによって気にならない程度までノイズを軽減できるということをお忘れなく。(詳しくは97年5月号「ノイズレス加工のお話」)


WSRより愛をこめて第40回

 

 

「PUのお話」 その4

みなさんこんにちは!このコラムをみなさんが読まれている頃には去年の楽器フェアで発表した"The Ultimate J"がイケベ各店に並んでいる頃だと思います。いつもコラムを読んでいるけどWSRを利用したことがないという皆さん!私の本来の仕事が見れるいい機会だと思いますので、ぜひ、チェックしてみて下さい。
 
さて、今月はハムバッカーPUのお話をしようと思ったのですが、その前に前回の補足を含めてシングルコイルPUの位相のお話をしていきましょう。
位相とは簡単にいうとPUから発生する微電圧がプラス方向から動くかマイナス方向から動くかということで、PUが1つの場合は気にすることはありませんが、2つ以上のPUがマウントされているギターの場合は、すべてのPUの位相を同一方向に合わせてあげる必要があります。そうしないと、ストラトキャスター等で多用されるハーフトーンで、2つのPUを同時に出力した場合、音量が極端にさがり、鼻をつまんだ様なサウンド(フェイズアウト)になってしまいます。
 では、位相を決定する要素は何かということになりますが、それには2つあります。
まずは磁石の向きで、ポールピースの上部にS極が来るのか、N極が来るのかということです。そして、もう1つはコイルの巻かれている方向になります。これは、仮にホットのリード線から見て、コイルがボビンに対して右方向に巻かれているのか左方向に巻かれているのかということです。
ですから、2つのPUの磁石の向きが同じ物ならばコイルの巻きの方向を変えれば逆位相になり、コイルの巻きの方向が同じ物ならば磁石の向きを変えれば逆位相になります。
 
実際のPUでは磁石の向きを変えるのはほぼ不可能(2芯ハムバッカーの場合は行う)なので、コイルの巻きの方向を変えるという方法がとられます。巻きの方向を変えるといっても、コイルを巻き直すのではなく、PUのリード線のホットをコールドへ配線し、コールドをホットに配線してあげればいいわけです。
そうすればホットのリード線から見た巻きの方向が変わりますよね?
 ただし、コールドがアースを兼ねている場合、アース線をホット側に入れ替えてあげないとノイズの嵐になってしまいます。具体的にはテレキャスターのリアPUのようにPUの下に金属のプレートが付いていて、弦アースがPUのコールドを通してポットに配線されている場合や、金属製のPUカバーのアースがPUのコールドに配線されている場合、金属製のベースプレートがPUのコールドに配線されている場合がそれに当たります。

 ・・・というのが位相に関してのお話ですが、実際に位相をチェックするためには目で見て「巻きの方向が・・」とか、磁石を当ててみて「うーん、くっ付くなぁ」というような非合理的な方法は行いません。詳しくは来月のお話にしましょう。
 ということで・・・

 



WSRより愛をこめて第41回

 

「PUのお話」その5

みなさーん!元気ですかー!(A.猪木風に)今月もコラムの時間がやってまいりました。
さて、今回は先月の予告通り、PUの位相をチェックする方法を説明していきましょう。


ショップで購入したPUを自分で取り付ける場合、ギターにマウントされたすべてのPUを同一メーカーの物に交換するのであれば付属の説明書通りに配線すれば良いのですが、1個だけ交換するとか、3シングルの2個を交換するといった場合、ちゃんと位相のチェックをしたほうがいいですよ。
せっかく配線をしてサウンドチェックをしてみたところフェイズだったなんて悲しすぎるものなぁー。こういう悲劇(^_^) を防ぐためにテスターを用意しましょう。
テスターはPU交換の時だけではなく、配線系のトラブルには必要不可欠なので、いままでこのコラムを読んで配線にチャレンジしたいという皆さんは購入した方が良いでしょう。
 テスターがあればチェックの方法は簡単で、ハムバッカーPUのお話はまだしていないので、シングルコイルに限定して言うと、まずテスターのレンジをΩ(オーム)の×1Kに合わせてテスターの赤いリード線を2本出ているPUのリード線の片方(A)、黒いリード線をPUのリード線のもう片方(B)につなぎます。
そうすると一般的なシングルコイルだと6から8Kぐらいを針が指すと思いますがちなみにこれがそのPUの直流抵抗値になります。
そして、少し大きめの磁性体(磁石にくっ付く物質・・・ドライバーやニッパ、ペンチなど。弦は不可)でポールピースを軽くたたいてみます。そうすると針が右か左に振れるのですが仮に右に振れたとします。

では今度は同じPUのリード線Aをテスターの黒、リード線Bをテスターの赤につないでポールピースをたたいてみて下さい。すると今度は針が左に振れるはずです。・・・そうです、この針の振れる方向が位相の向きを表しているわけです。よって、1本のギターにマウントされるすべてのPUはこの針の振れる方向を合わせてあげればいいわけで、テスターの赤いリード線につないだ方をホットとして、黒いリード線につないだ方をコールドにしてあげれば良いんです。
 
・・・というのがPUの位相のチェック法ですが、これだけだとあまりに読みごたえがないので補足を加えると、仮に2つのPUがあったとして位相が同じだったとします。(または上記の方法であわせる)
その時に、2つのPUの上面を近づけてみて下さい。もしもPU同士が反撥するようでしたら磁石の向きが同じで、コイルの巻きの方向が同じということになりますが、PU同士がくっ付くようでしたら逆着磁、逆巻の同位相ということになり、これがいわゆるリバースのPUということになります。
ストラトキャスターで言えばセンターPUだけがリバースのPUの場合、ハーフトーン時にハムキャンセルすることができます。この特性はハムバッカーPUの構造に大いに関係があり、来月のコラムのハムバッカーPUのお話につながって行くわけです。(うまいなぁー。)

 


WSRより愛をこめて第42回

 

「PUのお話」その6

みなさんこんにちは!月日が経つのは早いもので、このコラムが始まってはや5年目に突入しております。これからも内容を充実させ、より分かりやすいコラムを続けていきますので、これからもよろしくお願いします。
 
さて、今月はハムバッカーのお話です。
先月の後半でも少し触れたのですが、ハムバッカーPUは逆巻、逆着磁、同位相の2つのシングルコイルPUをくっ付け、一般的には直列に配線されているものです。
ではなぜこのような2つのコイルの組み合わせになっているのか・・・。
前々回の復習として考えると、同巻・逆着磁、逆巻・同着磁の組み合わせは当然の如くフェイズになってしまいます。位相を合わせるためには同巻・同着磁か逆巻・逆着磁しかありません。しかし、同巻、同着磁の組み合わせだと、直流抵抗が2倍になり、出力が増えるのと同時にノイズが増えてしまい、実用性に乏しくなってしまいます。逆巻・逆着磁の場合は磁直流抵抗が2倍になっても、ノイズの成分は磁極の影響を受けないので、打ち消し合うことになるからです。

  シングルコイルPUはポールピース自体に磁力があったのに対し、一般的なハムバッカーPUでは2つのボビンの下に板状のマグネットが一枚敷かれていて、その両端が極になります。
よって、単身シールドのハムバッカーPUの位相を変える場合、このマグネットをひっくり返すというやり方が一番手っ取り早い方法になります。また、シングルコイルPUにはあったコイルの巻き始めと巻き終わりを巻き付けておくためのハトメが存在しません。それぞれは直接配線材にハンダ付けされ、コイルを保護のために巻かれるアセテート等のテープで一緒に巻かれています。
このとき、単身シールドの出力線を持つPUならば、コイル1の巻始めが出力線の芯線につながれ、巻き終わりがコイル2の巻き始めにつながれ、コイル2の巻き終わりはPUのシャーシにハンダ付け(PUのアースとコールドが共用)されます。

4芯シールドの出力線を持つPUなら、それぞれの巻き始め、巻き終わりは別々にカラーコードに配線され、裸線がPUのシャーシにハンダ付け(PUのアースとコールドが別々)されています。
よって、単身シールドのPUも4芯シールドをもつPUも出力線つなぐ方法の違いだけで構造的には同じの物なので、分解可能なPUならば単芯シールドの出力線を4芯シールドに変更する事も可能です。
 また、コイルが2つあるということは実用性の問題は別として、配線によって6種類のサウンドバリエーションが作れるということになります。

1.2つのコイルを同位相で直列につなぐ 
2.2つのコイルを同位相で並列につなぐ
3.片方のコイルだけを出力する 
4.もう片方のコイルだけを出力する。
5.2つのコイルを逆位相で直列につなぐ
6.2つのコイルを逆位相で並列につなぐ・・・
というのがそのバリエーションですが、

1.
は普通のハムバッカーの配線です。
2.はいわゆるパラレル配線で、ストラトでいえばセンターがリバースのPUで
ハーフトーンを出力した時と同じ配線。
3.,4.はいわゆるタップ配線。
5.,6.はフェイズなので出力が下がってしまうが、ノイズは多くなってしまう
のでいただけないかも知れません。

次回は「メンテナンスしよう!・」です。

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