WSRより"もっと"愛をこめて〜第6回


「ナット考察その3」

 さて、今回はストリングポストまでの傾斜の話です。

 ギブソン系のギターのようにヘッドに角度が付いているギターはナットがシタールのように「ミョーン」と鳴いてしまうことが少ないと思うのですが、Fender系のギターのように角度がついていないギターでは良くある現象だと思います。
  これはそもそも弦のゲージや弦長が同じならヘッド角度無しのギターの物の方が弦によってナットにかかる圧力が小さいからで、ナット溝全体に均等なテンションを掛けるためにはよりシビアな溝切りが必要になります。理想をいえば、弦との摩擦を減らすためにナット部では弦を点で支えたいのですが、鳴きやサウンドのことを考えると線(面)で支えざるを得ません。
 図1を見てください。
「1のライン」はブリッジから伸びてきた弦をそのままナット部でもまっすぐに切るやり方で、「2のライン」はストリングポストの弦の巻き終わりに向かって切るやり方です。
「3のライン」はポストよりも深く、始点であるB点のみで弦を支えるというやり方です。

 では、いったいどのラインで溝を切っていったら良いのでしょうか? 各ラインごとに解説をしていきましょう。
「1のライン」では弦がA部を支点に弦が折れ曲がってポストに入っていきます。しかし、張力の関係上、B部ではラインの上へたわんでブリッジへ伸びていきます。つまり、弦とナット溝の間に隙間が出来てしまい、これが「鳴き」の原因になるわけです。
もし、鳴かなかったとしても張りの無いサウンドになってしまうんですよね。

「2のライン」は理想的なラインに見えますが、これもあまり良くありません。というのも、この場合は支点となるのがB部のため、分圧によって圧力が指板方向に逃げていってしまい、弦の圧力がナット自体にほとんどかかりません。よって、これもまた張りの無いサウンドになってしまいます。
  また、ポストからA部の間で弦が振動してしまう可能性があり(手で触ってみると分かる)、ヘッド側で弦が鳴いてしまいます。

「3のライン」
では弦との摩擦が最も少ないのですが、点でしか接していないのでナットが磨耗しやすいです(笑)。また、「2のライン」同様にヘッド側で弦が鳴いてしまうことはまず間違い無いでしょう。同じように弦を点で支えているLSRのベアリングナットのようにA部の前にウレタンを弦に触れるように敷いて共振を止めてしまえば問題がないのかも知れませんが・・・。

 私は、いろいろな削り方を試した結果、ナット自体に均等な圧力がかかるように「1のライン」と「2のライン」の中間のラインを少しRを付けて削っていきます。分圧の問題からいってもこれが一番良いとおもいます。サウンドの方もナット自体に均等な圧力がかかっているので余分な共振がなくなり、立ちあがりの良い「カキーン」というアタック感があると思います。

 ・・・と書いてきましたが、実際に傾斜を合わせるというのは相当難しいんですよね。楽器によってポストまでの角度は結構違うし、弦高によっても鳴きの感じが変わってくるんですよ。また、最近のコンポーネントギターのように1,2弦のストリングガイドが無いものなどはナットからポストまでの角度がほとんど無いんですよ。そうするとうまく圧力がかからないんですよね。しかも、細い弦を張ったりするとなおさらなんです。トホホホホ・・・。


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