WSRより"もっと"愛をこめて〜第5回


「ナット考察その2」

  最近、超多忙な毎日を過ごしているので、なかなかコラムの更新が出来なくて申し訳ありませんが、今回はAの始点からストリングポストまでの角度、傾斜を決定するという内容です。
 
 前回の内容では、主にプレイヤビリティーに関係する内容だったのに対して、今回はチューニングの精度とサウンドに大きな影響を与える話になります。まず、ナットからストリングポストまでの角度。Fender系のギターのようにナットからストリングポストまで比較的まっすぐに入っていくものはあまり問題がありませんが、Gibson系ギターのようにポストまで結構な角度を持つものには大きな問題です。これをまちがえて削るとペグを回していく際に「ピキッ」と鳴いてしまうどころか必要の無い抵抗が生じてしまい、チューニングが安定しません。

 図1の「1のライン」は各弦のストリングポストの位置に関係なく、全ての弦がナット上ではすべて水平になるというナットの切り方ですが、この場合、ポストまでの角度がつけばつくほどナットのA部に抵抗が生まれ、弦は「2のライン」に近づこうとします。よって、時間とともにナット溝のヘッド側が削れて広がっていく傾向にあり、これが鳴きやチューニングの狂いの原因となるわけです。仮にA部からポストまでの距離がブリッジと同じくらい長いものであればそんなに問題は無いかもしれませんが、何せ距離が近いですからA部にかかる抵抗は相当大きなものと考えられます。

 柔らかいナイロン弦を張るクラシックギターならまだともかく、硬いニッケル弦等を張ってチョーキングやアーミングを多用するエレキギターでもこのような切られ方をしているのが意外にも多いのが現状です。
 「2のライン」はナットのB部から各弦のストリングポストまでまっすぐ切るというやり方です。このやり方だとナット上で不必要な抵抗が生まれません。というのもこの場合、弦が曲がるB部に関して「1のライン」のA部よりは角度が浅くなるのと、ブリッジまでの距離が長いので弦は急激に折れ曲がらずに微妙にたわんでブリッジまで伸びていくからです。実際に溝を削る際にはジャストに「2のライン」を削るよりもB部を支点にほんの少しだけ「1のライン」よりに削っていきます。弦はペグに巻きつけることによって多少はたわむものなので、ジャストに削るよりはストレスの無いナット溝が削れると思います。


 次回はポストまでの傾斜についてです。


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