前回は「ナットソース」という製品について取り上げましたが、今月から数回に渡ってそのナットについてのお話をしていきたいと思います。これは、楽器にとって非常に重要なパーツなんですけど、残念ながら加工や調整がほとんどすべてリペアマンの手に任せられてしまうので、プレイヤーの関心が薄い物の1つだと思うんですよね。
まあ、過去の私のコラムでもあまり詳しく取り上げてませんでしたからね...。
まず、今回は「ナットの役割」についてお話をしていきたいと思います。普段、あまり考えたことがないかもしれませんが、ナットが果たす役割は大きく分けて以下の3つが考えられると思います。
(1)弦間のピッチを決定する。
(2)始点からストリングポストまでの角度、傾斜を決定する。
(3)始点の高さを決定する。
...とどれも当たり前のことなのですが、とても重要です。具体的に説明すると、
(1)は文字通り各弦の間隔を決めるということです。
各弦の間隔というのには2通りあって、1つは弦の中心を等間隔にする方法で、もう1つは弦と弦の内側同士を等間隔にするという方法です。どちらがいいとはいえませんが、一般的にギターや4弦ベースなどは弦の中心同士が等間隔になるようにNUTSPACINGTEMPLATE」などのスケール(写真1)を使って正確な罫書きを行なってから削っていきます。
まず最初に決めなくてはいけないのが6弦と1弦の指板サイドまでの距離で、コレが短すぎると弦落ちの激しい楽器になってしまいますし、長すぎると当然の事ながら弦間のピッチが狭くなってしまって弾きにくい楽器になってしまいます。
一般的な42mmのナット幅を持つギターなら指板サイドまでの距離は3mm〜3.5mmは欲しいですね。よって、3.5mmの距離を取ったとすると、42mm-(3.5+3.5)=35,35÷5=7という様に7mmのピッチで溝を削ればいいということになります。もちろん、フレット大きさやエッジの処理の仕方によって変わってくるのですが、ブリッジの弦間ピッチが広い物は指板サイドまでの距離を長く取ったほうがハイフレット部での弦落ちをある程度防ぐことが出来ます。
例えば、Gibson Les PaulとFender Stratocasterを比較した場合、ナット幅が42mmで指板エンドが56mmと同じサイズですが、ブリッジのピッチLesPaul=10.4x5=52mm,Stratocaster=11.3x5=56.5mmと4.5mmほど違ってくるので、LesPaulは指板サイドまでの距離が3mmとか2.5mmでも弦落ちは気になりませんが、Stratocasterの方はそれぐらいの距離だとかなり厳しいです。また、プレイヤーや楽器の状態によっては6弦側と1弦側の距離を変えたほうがいいという場合もあります。
まあ、要するに弦間のピッチはその楽器が持っているコンディションに大きく影響を受けるということです。
12弦ギターや多弦ベースなどの場合では弦と弦の内側同士の間隔が同じになるように削っていきます。そうでないと、低音弦から高音弦まで弦の太さの変化が著しい場合、1弦から弦が太くなっていくにしたがって、弦の内側同士の間隔が極端に狭くなっていくので、ローフレットを押さえた時に低音弦側と高音弦側の弦間に違和感を覚えると思います。
この場合は、厳密に言うと弦の太さによって間隔が変わってくるので、「TEMPLATE」のように便利な道具はありません。よって、弦の太さを測りつつ、罫書いて計算して、罫書いて、計算して...という作業を繰り返します。(涙)
人間の手は鈍感なようでいて、意外にも敏感な物でちょっとしたピッチの狂いはなんとも気持ちが悪い物なんですよね。0.1mmぐらいのずれは分からないかもしれないですが、それ以上は結構気になってしまうので、神経質にならざるを得ないですね。
(2)からの内容は次回をおたのしみに...。
(写真1)

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