続・徹底解剖 第7回目 MICRO-FRETS 特集


宇佐美
今年も各地で猛暑が続いておりますが、みなさま元気でお過ごしでしょうか。
久しぶりの徹底解剖となりました。


ハートマンヴィンテージギターズ宇佐美です。
今回は夏休みの宿題並みにヴォリューム感あります。
ご自宅で涼しくしてご覧下さい。 笑

←高架下の喧騒に夏を感じる宇佐美。
はい!今回は魅惑のアメリカンビザール、MICRO-FRETSを徹底解剖していきます。
まずはMICRO-FRETSの概要をご覧下さい。

MICRO-FRETSはアメリカ合衆国、メリーランド州フレデリックにある工場にて生産されました。
メリーランド州は大西洋岸に位置しており、陸地面積の小さな州ながらもワシントンDCに隣接していることもあり、人口密度が高く環境豊かな地域として知られています。

人員は社長であるR.S Jonesと副社長のF.M huggins(その後の社長)、秘書のA.R hubbard が主となり、MICRO-FRETS社を経営していきます。
1960代中期頃から生産を開始。ORBITER・PLAINSMAN・HUNTIGNTON等のユニークなモデルをはじめ、約20種類のモデルを展開しました。ギターに内蔵するワイヤレストランスミッターも作っていたそうです。
惜しくも70年代半ばで生産終了となり、小さな工場であったためか生産本数約3000本程しか出荷されていないと言われています。
主なアーティストの使用はカール・バーキンスやグランド・ファンク・レイロールドのマーク・ファーナーが知られています。

マーク・ファーナーに関しては本人のシグネイチャーモデルである”Singnature”というモデルも生産され、MICRO-FRETSの代表的なモデルとして位置づけられています。
MICRO-FRETSは仕様によってスタイル分けすることが出来きます。※混在しているのもある為、おおまかな内容です。
Style1から3に向けて、新しい仕様になっていきます。
また、今回解剖していく個体は全てStyle2以降のモデルになります。
Style 1 ピックガードにコントロールノブが4つ・2ピースボディ・デュアルモンドピックアップ・オールドスタイルアーム
Style 1.5  コントロールノブ3つ・テールピース下にMロゴ・デュアルモンドピックアップ・Calibratoアーム
Style 2 4プライピックガード オリジナルピックアップ(白)・Calibratoアーム
Style 3 クリアピックガード・ソリッドボディモデル有り
そして解剖していくモデルはこちらの4機種。
Signature
Signature ▲
Spacetone
Spacetone ▲
Swinger
Swinger ▲
StageII
StageII ▲
それではヘッドからいってみましょう。
Signature
Signature ▲
Spacetone
Spacetone ▲
Swinger
Swinger ▲
StageII
StageII ▲
ファイヤーバードのヘッドを逆アングルにしたようなルックスですね。シェイプは全機種共通となっております
ロゴは時期によって異なり、60年代後期までは(例:Spacetone)文字内に空白のあるOLDロゴ、
それ以降の年代はつぶしの黒文字のNEWロゴ(例:Swinger)となっております。
細かく見ていきますと、機種によってストリングスガイドにも違いがみられました。

●Signature 独立羽根型 2個
●Spacetone 独立ローラー型 4個
●Swinger   バー式 1個
●StageII  独立羽根型 2個

各ストリングスガイド
独立羽根型
▲ 独立羽根型
独立ローラー型
▲ 独立ローラー型
バー式
▲ バー式
このように4機種ともストリングスガイドに違いがみられます。Signature とStageIIは同じようものではありますが、取り付け位置が異なっております。

共通部分としては全機種とも4~1弦までのテンションは必ず掛けている、ということです。
ナット

ナット

MICRO-FRETSの最大の特徴ともいえるこちら、"Micro Nut"。ナット部分でチューニングの調整が可能な画期的な構造を持っております。

ナットから12フレットまでの長さと、12フレットからブリッジまでの長さを均一にし、全フレットのイントネーションを揃えましょうといった内容。こちらも全機種共通仕様となっており、Micro Nutが付いているギターはMICRO-FRETSのギターである証拠とも言えます。

ナット
ナット
ナット
ナット
ナット
ナット部分をばらしてみました。ナットを支えるベースプレート・装飾ヘッドカバー・ローラーナット・ワッシャー・ストリングスポスト・スクリューと分けることが出来ました。

こうしてみると部品数が多いですね。各ナット部分が独立しているため、それぞれで弦高・オクターブの調整が可能となっております。
ナット外したところ
ナット外したところ
ナット外したところ
良く見ると3弦部分のみスクリュー穴が2つあるのが分かります。稼動幅を広げ、よりチューニングの精度を上げる役目を果たしております。また、3弦部分のみ指板が深くえぐれているのもこの理由からでしょう。3弦の場合は巻き弦とプレーン弦があるため、用途によって調整が効き分けが出来そうですね。
ヘッド裏
ヘッド裏
ヘッド裏
ヘッド裏
Spacetone ▲
ヘッド裏になります。

ネック材はほぼ全機種共通のメイプル材を使用。私なりにですが、今までみてきたMICRO-FRETSはネックのコンディションが良い物が多く感じられます。
仕込みから材の選定もしっかり行われてきたのでしょう。
Spacetoneはカスタムカラーならではの塗装となっており、ヘッド裏からネック全体にかけボディ同様の塗装が施されております。
ペグ
ペグ
ペグ
ペグ
通常のペグは6連タイプのオープンバックペグ。恐らく、日本製のものではないかと判断しております。

60年代半ばのGibson MelodyMakerについていたオープンバックのペグと良く似ています。

Spacetoneは珍しくシャーラーペグが付いており、本来ビス止めがする部分に加工が施されております。
ペグつまみが大きく、各ペグの距離が狭く少し回しにくさを覚えます。ヘッドに当たってしまっている1弦ペグはもはやご愛嬌です。笑

ポジションマーク
ポジションマーク
ポジションマーク
ポジションマークです。
基本仕様はシングルドット、上位機種はダブルドットとなっております。
つまりSpacetoneは上位機種、ということになります。(※例外を除く)
ネックジョイント
ネックジョイント
ネックジョイント
ネックジョイント
ネックジョイント部分です
裏側からみると5本のビスが見られますが、実際にボディとネックをつないでいる部分は4本となり、残りの1本はプレートをとめるためのビスとなっております。
ネックエンドがひし形のように出っ張ってますね。理由はわかりませんが、こちらも全機種共通仕様。トラスロッド調整はネックエンドから行います。
ネック裏には出荷時から仕込まれているであろうシムが見られました。筆記体でj.sのサイン?があり、R.S Jones本人によるものではないかと思われます。
ジョイントプレート
ジョイントプレート
ジョイントプレート
ジョイントプレート
MICRO-FRETSのシリアルの打ち方はモデル別でもなく年式別でもない、順不同であったといわれているため、シリアルでの年式等の判断が付かないところが惜しいです。 シリアルは1000番台から始まっており、3000番台後半まであるといわれております。 ジョイントプレートにも若干の違いが見られました。

●Signature PATENT シリアル小文字
●Spacetone PATENT PENDING シリアル太字
●Swinger 表記なし シリアル太字
●StageII 表記なし シリアル太字
ボディ
Signature
Signature ▲
Spacetone
Spacetone ▲
Swinger
Swinger ▲
StageII
StageII ▲
ボディ部分に移ります。こうしてみると、どのモデルも奇抜なルックスを感じさせます。
特筆すべきはMICRO-FRETSの大きな特徴ともいえるパカッと開くボディ。特に名称がないので、そう呼ばせてください。笑
ネックを外し、表裏のボディを上下にスライドさせるとボディサイドにある留め具が外れ、表裏分かれる仕組みになっております。
どのような理由があってこのような構造ににしたのかは・・すみません不明です。
ボディ
ボディ

ボディサイドに7~8個ほどついた留め具。
表側のメス部分と、裏側のボディに付いたオス側を噛ませることによって、表裏別々のボディを結合することが出来ます。
ボディ
ボディ
ジョイント部分のネジを外し、ボディをずらします・・・・おわかりいただけますでしょうか。
ずれました。
これでボディを開くことが出来ます。
パカッ!!!
ボディ
▲ Signature ボディ表側▲
ボディ
▲ Signatureボディ裏側 ▲
Signature
見えました。ハロウィンに良く出てくるかぼちゃお化けの様なルックスです。
こうしてみるとボディサイドとボディ下部のボディザクリのみで、意外にも空洞部分が少ないことが分かります。
表側にF-80、裏側にB-80のコードがみられます。F(フロント)B(バック)の略で、80はモデルコードでしょうか。
※あくまでも推測です。
ボディ
▲ Spacetone ボディ表側▲
ボディ
▲ Spacetoneボディ裏側 ▲
Spacetone
今度はぶたの鼻のようなルックスです。
こちらはブリッジにあたる部分を除き、大きく円状に削り取られたザクリがみられます。
表裏ほぼ同様のザクリとなっております。Fホール部分には布が張られており、個体によってはそういった仕様が存在するようです。
こちらもボディにコードが見られ、C-21Fと C-21Bという内容になっております。
ボディ
▲ Swingerボディ表側▲
Swinger
SwingerはMICRO-FRETS唯一のソリッドボディということで、残念ながら?割ることはできません。
こうしてみると意外にもザクリの部分が深く広いことがわかります。
ボディ内部にはコードのようなものは見られませんでした。
ボディ
▲ StageIIボディ表側▲
ボディ
▲ StageIIボディ裏側 ▲
StageII
こちらはSpacetoneと同様の大きな円状のザクリになります。
ボディバックはカッタウェイに向けてザクリがみられますね。留め具も追加されてます。
Fホール部分には外から内側の木部が見えないように黒い塗装が施されています。
こちらもボディにコードが見られ、F-34 B-34という内容になっております。
配線
配線
▲ signature ▲
配線
▲ signature ▲
配線内容になります。 POTは4機種とも250Kを使用。
やや珍しいPOTを使用しており、235007のコードからMallory製のポットではないかと判断しております。
内容はいたってシンプル。ピックアップ→セレクタースイッチ→ポット→アウトプットという流れになっております。
コンデンサはセラミックの12V 0.068uf。このタイプが付いている個体が多いようです。スイッチはCARINGが使用されています。
配線
▲ StageIIコントロール▲
配線
▲ StageIIコントロール ▲
配線
▲ Swingerコントロール ▲
Spacetone及びStageIIはトーンシフトスイッチが追加されているため、スイッチの間に抵抗が見られます。
StageIIの回路をみますと、アウトプットとグラウンドに抵抗をかませており、スルー音とのオンオフにより出力に差をつけています
コントロール
表側のコントロール部分です。
基本的な構造は1ボリューム1トーン・3WAYのセレクタースイッチ。
コントロールノブ
コントロールノブ
Style2以降のモデル共通のノブになります。
ピックアップ
ピックアップ
ピックアップです。
こちらもMICRO-FRETSの大きな特徴のひとつともいえるパーツです。
実はこちら、ピックアップ開発者として有名なBill lawrence氏が開発に携わっております。
60年後半までの機種のほとんどはデュアルモンド製のピックアップを使用していましたが、その後オリジナルピックアップとして、こちらの白いタイプへチェンジしていきました。
ピックアップ
ピックアップ
ピックアップ
ピックアップ内部構造です。
ピックアップはシングルピックアップとなっております。
フェンダー系のようにボビン自体には磁力を持っておらず、ベースプレートにマグネットを敷き、ボビンに磁力を持たせています。
フロントはベースプレートの外側に、リアはベースプレートの内側に取り付けられています。
ピックアップ
ピックアップ
ピックアップ
個体によってマグネットの個数が1つのもの、2つのものといった違いが見られました。

抵抗値は比較的高めで1つあたり約10Kあたりとなっております。(※個体差があります)
ピックアップ
ピックアップ載せてる部分
基本的にピックアップはボディに直接マウントされており、ほぼ同様のボディザクリが見られます。
フロント部分は浅めのザクリ、リア部分はピックアップのビスがあたる部分及び配線の部分が削られております。
これは塗装後に施されており、フリーハンドざっくりと削られております。
おそらくビスがボディにあたることに後から気付いたのでしょう。笑
ピックアップ
▲ swinger▲
ピックアップ
▲ swinger▲
唯一のソリッドボディ、Swingerはピックアップマウントとなっております。
ピックガードやコントロール部分からはフェンダーを意識した様な作りが伺えます。
Calibratoアーム
MICRO-FRETS最大の特徴ともいえるこちらはCalibratoアーム。
Style2以降の仕様で、70年代に入るとほぼ全てのモデルに搭載されるようになります。
アーム取っ手部分が木製となっているのがとても可愛らしいですね。
ボディから外してみました。
Calibratoアーム
Calibratoアーム
Calibratoアーム
Calibratoアーム
ばらしてみました。
テール部分に板バネがマイナスビスでひっついた状態になっております。
土台に付いている白いバーが板バネを押える役目を担っており、これによりアーミングを実現しています。
アームの取っ手はビスによって脱着が可能。
Calibratoアーム
Calibratoアーム
Calibratoアーム
Calibratoアーム
両サイドに突き出た2つの突起物は、土台にジョイントする為の支点となっております。
弦を通す部分には、ボールエンドの深さを可変させる6角ビスが仕込まれており、テンションの具合を調整することが可能となっております。レスポールでいうところの、テールピースの深さ調整といったところでしょうか。
板バネ部分は、プラスチックのMICRO-FRETSロゴが付いた装飾板と、その下の金属板バネで分かれています。
板バネにしては意外にもダイナミックな動きで、チューニングも比較的狂いにくい印象を受けました。
ブリッジ
ブリッジ
▲singnature▲
ブリッジ
▲ singnature▲
Signatureについているブリッジになります。
比較的珍しいオルタネイトタイプのブリッジ。シグネイチャーの場合、カリブレイトアームが採用されたものが多くみられますが、初期のタイプのものはこのようなものが存在するようです。 
ブリッジ
▲Signatureブリッジ▲
ブリッジ
▲Signatureブリッジ▲
ブリッジ
▲Signatureブリッジ▲
テールピースから橋渡しするようにブリッジまで伸びたプレート。6個空いた穴から弦を通し木製の部分を介することでテンションをかけています。

ブリッジはプレートにのせた単純構造になっており、Calibratoアーム搭載のものと比較すると柄の部分が短くなっています。

テールピースはプレートの上下の調整が可能となっており、こちらもテンションの具合を調整することが出来ます。
spacetoneブリッジ
▲ spacetoneブリッジ▲
Spacetoneについているブリッジユニット。
こちらはハードテイルタイプのブリッジユニットになります。
カリブレイトアームが付いていない場合はこちらのユニットがついている場合が多いです。
こちらのSpacetoneは上位機種ながらアームユニットが付いていないため、Style2になってからの初期仕様、またはあえてハードテイルタイプにしている可能性もあります。
ブリッジ
ブリッジ
ブリッジ
Style1.5以降のClibratoアームと同時に開発された共通ブリッジになります。アルミの削りだしプレートは厚みがありやや重みを感じます。
こういった重めのブリッジは箱モノの場合、低音が締まってサウンド抜けがよくなったりしますよね。
調整幅も広く、ブリッジ側でのチューニング調整にも気を遣った内容になっております。
ブリッジ
ブリッジ
ブリッジ
Signatureについてるブリッジユニット用のブリッジになります。
ブリッジの高さ調節はベースプレートで行っているため、スタッド穴がカットされ、通常のブリッジより短くなっているのがわかります。
ピックガード
ピックガード
ピックガード
ピックガード
これまた特徴的なピックガードです。
今回取り上げたモデルのピックガードは一部を除いてほぼ共通仕様となっており、ボディに直付けされた1プライのピックガードと、その上部に4プライのピックガードといった2層構造のStyle2仕様となっております。
Swingerは唯一ピックガードが専用仕様となっており、ボディをお覆うような大きなものとなっております。上部のピックガードはクリアのタイプとなっており、Style3仕様であることが伺えます。つまりこのクリアのピックガードはSwingerに限らず、SignatureやStageIIにも存在するということになります。
ストラップピン
ストラップピン
ストラップピン
ストラップピンです。ストラップピンも4機種とも共通でした。
ボディエンドの止め位置はボディ正面から見てやや左上についており、この位置もほぼ全機種共通となっております。
重量バランスを考えた結果でしょうか。
最後に動画を撮ってみましたので、4モデルのサウンドご視聴下さい。

いかがでしたでしょうか。MICRO-FRETS。
基本的な仕様はモデルごとにある程度は決まっているようですが、年式やオーダーの内容によっては様々な仕様が存在するようです。
(例:Signatureのブリッジユニット・Spacetoneのカラーとブリッジユニット等)
独自パーツが豊富で、特許取得済みでもある”Micr Nut”や”Calibrato”等のパーツからはギターに対する入念な解釈が垣間見れます。
おおよそ半世紀前に作られたと思えないような構造が散りばめられた、素晴らしいヴィンテージギターではないでしょうか。

※MICRO-FRETSのギターに関する情報は諸説ありますが、宇佐美が調査した上での内容になり私による解釈も含まれておりますのであらかじめご了承下さいませ。
※参考資料
Price guide
MICRO-FRETSカタログ
BIZARRE GUITARS
American Guitars
▲このページのTOPに戻る