・・・とある日、ふと思ったのです。
うちの店、ハードテイル多くね!?


ハードテイルとは

ストラトキャスターの通常仕様であるシンクロナイズトレモロ(以降トレモロ)が無い、トレモロレスのストラトキャスターのことを指します。トレモロの変わりにベースプレートを直接ボディに取り付け、弦はボディ裏通しといった構造を持ちます。
雰囲気としてはストラトキャスターの形をしたテレキャスターの構造といったところでしょうか。
さて、ストラトキャスターといえばアームが使用できることが大きな売りですね。 しかしながら発売当時の1954年からオプションとしてハードテイルを選ぶことも出来ました。実際に1954年のフェンダーカタログに”Available with or Without tremolo”とトレモロ無し(ハードテイル)も選択出来ることが記載されています。
ただ実際には、1955年の3月29日までは一度もオーダーがなかったといわれています。当時はトレモロ付きより20ドル程安価となっていました。 フェンダー社初のトレモロユニット付きのギターということで、ストラトキャスターは大いに話題を集めましたが、それまでのFenderスタイル(トレモロ無し)も同時に評価を得たかったのでしょうか。
また、以降もその仕様が残っているというのはハードテイルという存在が市場に認められた証拠であるとも言えます。


こんにちはハートマンヴィンテージギターズ、宇佐美です。
ということで、今回はストラトキャスター、ハードテイルに焦点を当て徹底解剖していきます!
なんと偶然にも、同じ年代のストラトキャスターとハードテイルの両方ありましたので、その違いを踏まえみてきましょう。

“60年代ハードテイルを徹底解剖!”
Head_1

こちらは63年製のストラトキャスター。ハードテイル仕様。
定番のサンバーストカラーの風格ある1本。一見ではトレモロ有りとの違いが言われないと判断できなそうですね。


Rodcover_01 Head_2

ブリッジ部分です。トレモロ有りと比較するとボディにネジを止めている部分が異なります。
トレモロユニットのイナーシャブロックが取り付けてある部分の穴を利用し、ボディに取り付けされています。
また、ナイフエッジ加工はされておらずボディに対して、ブリッジが全面接地され弦振動をボディにより多く与えています。

サイズはブリッジの長さ390mm 横幅733mm 厚み28mmとなっております。
金型は恐らく通常のトレモロと同様のものが使われており、アームが刺さる部分をカットして形成されています。

サドルはストラトキャスターと共通の仕様。スティールプレートをプレス成型されており、明瞭なトーンを生み出します。
弦間ピッチは約10.8mmとなっております。


rod_01

ブリッジを外してみました。
通常であればアームユニット用に穴を開けているはずですが、ご覧の通りノーカットです。
キャビティ内から弦アースをとってあります。通常のトレモロ付きのタイプであればスプリングを引っ掛ける部分にハンダ付けされていますね。


headback_01 Head_2

ボディバックの部分。
従来であればこちらもアームスプリング用に穴あけが施されていたり、バックパネルが付いていますがまっさらな状態。
変わりに弦止め用のフェラルが付いております。こちらはテレキャスターと同様のものとなっております。フェラルはまだボディに埋まっている、ボディに対して平行なタイプです。

さて、トレモロの有無以外の違いは他の部分にあるのでしょうか。


headback_01 Head_2

ありました!!!ヘッドデカールです。
ハードテイル仕様のものにはwith synchronized tremolo及びパテントナンバーののデカールがなく、フェンダーロゴのみとなっています。
実際に、フェンダー製品はボディとネックを別工程で作成しているため、ハードテイル仕様でもwith synchronized tremoloのデカールがある物も見受けられます。
その他レフティー等も同様で、特殊仕様のものは製造工程からそのまま流用するパターンが多く存在します。(デカールに限らず)
今回の63年の個体は、元々デカールを貼り付ける段階でその部分を切り取られていることが伺えます。

その他は大きく見られる箇所はとくにみられませんでした。


“気になるサウンドの違いは・・・?”

やはり気になるところはそのサウンド。
今回、動画を数点用意しましたのでチェックして見ましょう。
全てフロント→センター→リアの順にコード、カッティング、単音と順に弾いております。
まずは同じ年式の63年の個体で比較していきます。

Stratocaster '63 Hardtail SB/R

Stratocaster '63 Hardtail SB/R


Stratocaster '63 CAR/R

Stratocaster '63 Hardtail SB/R

もちろん個体差はあるもののハードテイルは少し固めで芯が太く、トレモロ有りはスプリングの影響もあり広がりのあるサウンド。 倍音の出方の違いが顕著に現れているように感じます。


“モダーンでモダンな70年代ハードテイル”

次に70年代後半、ヘッドシリアル期のストラトキャスター!
こちらは79年製、ナチュラルカラーにブラックパーツのモダンなストラトキャスターです。

rod_01

きれいなアッシュボディの木目を生かしたナチュラルカラーの1本。たしかに良く見るとハードテイル・・。


neckdate_01 Bodydate_01

ブリッジ部分です。こちらも63年同様にボディの取り付けビス位置が異なります。

71年頃にアームユニットが一体型になったのをきっかけに、ブリッジサドルは、下のプレートと同じクロムメッキのダイキャスト製に変更されます。
またハードテイル用のブリッジ、テレキャスターデラックスやシンラインも共通のブリッジを採用しております。
スティール製のプレスサドルと比べ、質量の増えたブリッジサドルはサスティーンの増加、ややダークな印象を持ちます。

下のプレートサイズは長さ390mm 横732mm 厚み29mmとなっており63年とほぼ同様です。

サドルねじが入るコの字に湾曲している部分の厚みが、この時期のトレモロユニット比較すると若干厚みを帯びています。
63年のブリッジと比較してもほんの気持ち厚みがあるように感じますね。
弦間ピッチは約10.8mmとなっております。


fingerboad_01

もちろんブリッジ下はノーカットです。
弦アースの穴位置が63年とは異なっており、リード線がやや長い傾向にあります。


fingerboad_01

ボディバックです。
こちらも同様に同年のテレキャスターと同タイプのフェラルが付いております。この時期はボディから少し飛び出したサイズの大きめのフェラルが採用されております。

その他、特に違いがみられる箇所はありませんでした。


“気になるサウンドの違いは・・・?”

それでは、サウンドをチェックしてみましょう。
ホワイトアッシュ材を用いたヘビィウエイトな個体のサウンドに及ぼす影響はいかがなものでしょうか。

Stratocaster '79 Hardtail NAT/M

Stratocaster '79 Hardtail NAT/M


Stratocaster '79 Walnut/M

Stratocaster '79 Walnut/M


先ほどより顕著に違いが出ているように感じます。アッシュメイプルという高音域に特性が強い材の影響で聞こえ方が良いせいでしょうか。
トレモロ有りのほうがプレゼンスがやや出る傾向にあり、ハードテイルはその反面ミドルも出る力強いサウンド。

トレモロの有無がサウンドに大きく影響を及ぼしていることがわかりすね。


“まだまだあります!ハードテイル!”
まとめ!!!!!!!!
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①テレキャスターに似ている!?
総じて言えることはハードテイルは全体的にやや硬質な傾向にあり、音の立ち上がりが早いテレキャスを彷彿とさせるサウンドが垣間見れます。
テレキャスターとは弦裏通しのフェラルを有する共通の仕組みということもあり、とくにリアの出音はそれに近いものがあります。全体的にはトレモロ有りより、音の太さとコシを感じさせるサウンドになっているのではないでしょうか。
その分トレモロ有りに比べレンジは比較的狭く、コード弾きよりは単音弾きに向いている傾向にあります。パワーコードなんかもミドルが効いているので、厚みのあるサウンドが期待できるでしょう。
ただテレキャスターとはボディシェイプの違い等もあるので、楽器自体の鳴りかたは変わってくるでしょう。

②ハードテイルって軽い!?
また、ハードテイルはどの個体も軽量に感じることがあります。
今回登場した計5本の重量
Stratocaster '63 Hardtail SB/R 3.1kg
Stratocaster '79 Hardtail NAT/M 4.1kg
Stratocaster '72 Hardtail NAT/M 3.5kg
Stratocaster '74 Hardtail NAT/M 3.9kg
Stratocaster '79 SB/R Hardtail 4.4kg

70年代後半及びナチュラルカラーのアッシュ材は比較的重いものが多い中、やや軽量(そもそも重いので数字的な見栄えは微妙なところですが・・・)。そして63年のハードテイル(アルダーボディ)は3.1kgと超軽量。これはトレモロユニットの重量が無い故、実現しているウエイトかと考えられます。
余談ですが、当初レオフェンダーがストラト(トレモロ有り)を開発中、最終段階でサスティーンの足りなさに悩んだという話は有名な話であります。そこでイナーシャブロックを採用することで現在のストラト特有のサスティーンが実現されていますね。 実際にそのイナーシャブロック自体は200~300グラム程ですが、ボディバランスから、その体感重量は比較的軽く感じるといえるでしょう。重量のあるものが下部にあると、重く感じますよね。

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③チューニングが安定している!?
またトレモロを持たないなために大きな弦の動きが無く、チューニングの安定感はハードテイルの恩恵と言えるでしょう。トレモロ有りの場合はスプリングの関係でチューニングにも時間と手間がかかりますよね。
またストラトキャスターとは違った弦のテンション感もハードテイルならではのもの。
ただしストラトキャスターでアームを使わないから、ハードテイルにしよう!
・・・とはまた違ってきますね。

以上のことからハードテイルの利点として、弦振動が豊かで生鳴りが良い、単音の音が太め、軽量(推測)、チューニングの安定等が大きなポイントであるといえます。
結局のところハードテイルってどうなんだ!?とお声が飛んできそうですが、どちらが優れているということではなく、実際の使用環境においてどちらが適正であるかという判断になってくるでしょう。

ではトレモロを使いたからストラトキャスターを選ぶ、
・・・とも違ってきますよね。

いかがでしょうか。意外と気になる存在、ハードテイル。
みなさんの楽器選びの手助けになれば光栄でございます。

それではまた次回もお楽しみNEEEEEE!!
(ハートマンヴィンテージギターズ 宇佐美)

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